1話 追放は解放?
ーー水のダンジョン、5層にて
『ガシャン』
「え、母様?」
「ごめんねシオン、こうするしかないの」
スメイル王国の王妃ラルメルダ・トリポカは、悲しそうに自身を見つめる実の息子シオン・トリポカを見てそう呟き檻の鍵を閉めた。
「母様……どうしてこんなことをするの?」
シオンはそう訊ねる。
「この際だからはっきり言うのもいいのかもね……シオン、貴方は私にとってずっと汚点だったの、スキルも使えないし剣術もダメ、そんな子を我がトリポカ家には置いておけない、だからねシオン、ここでさよならよ」
ラメルダはそう言うと、シオンを檻に入れたまま去っていってしまう。
「母様!」
去っていく母に、シオンはそう呼びかける。
「気安く呼ばないでくれるかしら、今日から貴方は私の息子ではないのよ」
ラメルダは冷たくそう言い放つと、シオンを置いてダンジョンの出口へと歩いていった。
ーー20分後
「うん、そろそろいいかな」
シオンはそう呟くと、檻に右手をかざした。
「スキル発動【ウインドカッター】」
『スパッ』
放たれた風の刃は鉄格子を真っ二つに両断した。
『ガコッ』
「よし外れた」
両断された鉄格子を外すと、シオンはそのまま外へと出た。
「ふぅ、やっと行ったかあの毒親、これで俺も自由になったかな」
シオンはそう話すと、身体をうーん伸ばして軽いストレッチをした。
シオン・トリポカ。
彼の中身は異世界転生してきた日本人、前橋悠介、24歳である。
「にしても追放という名の見殺しか、まったく血の繋がった実の親のする事じゃないよ、ほんとに」
シオンはそう呟くと近くにあった小石を拾った。
「スキル発動【石職人】、ナイフ生成」
『キーン』
スキル【石職人】により手に持っていた小石はあっという間に小さいナイフに変わった。
「うん、いい感じだね」
シオンはそのナイフを手に、ダンジョンの奥へと進んでいくのだった。




