旅立ちの日
「......母さん。
私、下界へ行ってきます」
その言葉に、俯いていたその場の誰もがスミレを見た。
「何を言っているのですか!?
残りの時間が少ないのに......」
リリナが驚いたような声で言う。
スミレは起き上がり、リリナの手を握る。
「だからこそよ」
スミレの瞳に炎が灯る。
「私の時間は残り少ない。
そして、世界の時間も......」
スミレは窓の外を見る。
「グレイルは、力が戻ればすぐにでもやってくるでしょう。
今のままでは、適わない」
スミレは、グレイルの強さ、怖さを思い出す。
「だから、下界に降りて仲間を集めてきます」
スミレは真剣だった。
「でも......ようやく分かり合えたのに......」
メイサの声は震えていた。
「最後の時を楽しく過ごして世界ごと一緒に消えるよりも、
戦って、みんなに生きていてほしいんです」
スミレは、涙を流しながらも精一杯笑った。
「なら、私も一緒に行く」
スイレンが一歩前に出て言う。
それと同時にリリナとシュンも頷き合い、スミレの手を取る。
「私たちも行きます」
スミレは驚きながらも、首を振った。
「危険な旅に、あなたたちは連れていけない」
スイレンはスミレの前まで来る。
「その危険な旅に、たった一人で行くつもり?
人数は多ければ多いほど、旅が楽になると思うけど」
スイレンが真剣な眼差しを向けて言う。
「でも......」
スミレの顔色は暗い。
そこへ、アイビスが口をはさむ。
「行くなら、こいつも連れてけ」
そう言ってルイの背中をバシッと叩く。
「いたっ!!」
ルイが小さく呻き、アイビスの顔をギロッとにらむ。
「一人で行くのは許可できねぇが、こいつら全員連れていくならいいぜ」
「アイビス!?」
メイサが驚いたようにアイビスを見る。
「スミレにはもう、時間が無いのよ!?」
アイビスは、真剣な眼差しで答える。
「だが、あいつに勝てる可能性はこいつしかねぇ。
俺が死ぬのは構わないが、家族が死ぬのは嫌だ」
その言葉を聞き、メイサの頭に血が上る。
「スミレは家族じゃないっていうの!?
確かに、私だって家族を失いたくない」
そう言うとメイサは、俯きながら顔を手で覆う。
「でも......
スミレだって家族なのよ?」
その言葉に答えたのは、アイビスではなくスミレだった。
「わかっています。
残り少ない時間を、共に過ごしたい気持ちは......」
そう言ったスミレは、メイサの手を取る。
「でも、もう私は誰も失いたくないんです」
その瞳は、何を言われても揺るがないようだった。
その瞳にメイサも決意した。
「わかったわ。でも、一年以内に戻ってきて」
「はい!」




