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新 光と闇の継承者~初代最高神誕生~  作者: 加藤 すみれ


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二つの力、ひとつの命

女神族と魔神族は命石に魂が宿る。

死ねば、霧となり消えてゆく。

その場には、命石めいせきしか残らない。

挿絵(By みてみん)

女神族と魔神族の争いが絶えない時代。

争いの最前線と言える村に一人の少女がいた。

彼女の名はスミレ、まだ12歳だった。


スミレは魔力が多すぎた。

熱や頭痛で済むはずのものが、彼女から視界と足を奪い、車いすに縛りつけた。

だから、彼女にとっての世界は暗く、遠い。

届くのは、剣と魔法がぶつかり合う音と魔力の気配のみ。


「役立たず」

「守られるだけの存在」


そんな言葉を何度も聞いた。

否定はしない。彼女は、剣を握ることも走ることさえもできないからだ。


そんなスミレにも大切な人がいる。

双子の弟のシュン。

異父姉妹で一つ年下のリリナ。

厳しい母、メイサ。

そして、親友のクリスタ。


「今日はね、空がすごく高いよ。

雲一つなくて、きれいな青空だよ!」

クリスタは、そう言っていつものように景色をスミレの手のひらに乗っけてくれた。

「ありがとう。いつも景色を教えてくれて」

そう言えば

「当たり前じゃん。だって大事な親友だもん」

と答えて、小さくつぶやくように歌い始めた。


『閉じた瞼の 裏側で

小さな光が 揺れている

消えそうで

でも まだ

確かに 生きてる

届かなかった 言葉たち』


それを聞いていた村の誰かが、遠くでつぶやく。

「...最後のペルージュ」

ペルージュ、精霊の歌を引き継ぐ一族。

クリスタは一瞬だけ黙り、胸元の石を触る。

「ねぇ、スミレ。この歌はさ、なくしちゃいけないと思うんだ」

その声は優しいが、どこか悲しみを含んでいた。


クリスタは、スミレの初めての親友だった。

だからこそ、彼女は恐れていた。

いつか、この幸せな日々は壊れてしまうのではないかと。


その日は、無情にもやってきてしまった。

西側から魔神族が襲撃してきたのだ。

その日はちょうど、村の強者たちが会議で東側にある会議棟へ行っており、不在だった。

スミレたち4人は西側におり、逃げ遅れてしまった。

「おい!子供が4人いるぞ!!」

その声とともに魔神族の視線が一斉に集まる。


狙われたのは、動けないスミレだった。

「アイスウォール!」

シュンの声と同時に、冷たい空気がスミレたちを覆う。

空気が凍り、スミレの前に氷壁が立つ。

一息ついたのもつかの間、一つの声が壁の向こうから聞こえた。

「シャドウバレット」

次の瞬間、壁の向こうで低い声がした。影の弾が突き刺さり、氷が割れた。


その時起こった風により、スミレは左へ、シュンとリリナは後ろへ、クリスタは右に飛ばされた。

スミレは、その様子を魔力の流れではっきりと見た。

破片が雨のように降り注ぎ、頬をかすめ冷たさがはしる。

「守れるとでも思ったか!シャドウスピア」

影が槍の形を取る。魔力が一本の針みたいに伸び、胸元を射抜こうとした。

狙いは、スミレの胸元。


終わる。

そう思った、そのとき。


「スミレ!!」

クリスタの叫びと同時に、横から強い衝撃。

震える手が、スミレを突き飛ばした。

身体が浮き、車いすごと弾かれるように倒れた。

痛みの次に届いたのは、血の匂い。

そして、人が崩れ落ちる音。


「クリスタァァ!!」

リリナの叫びと魔力から、理解してしまった。

スミレが元居た場所からは、かすれた声が届く。

「ごめんね...無理、しちゃった」

信じられないほどやさしい声。

「どうして...私なんかを...」

声が震える。息がうまくできない。


「だって...親友だもん」

その一言が、深く、深くスミレの心に刺さる。

ー私が、弱いから?私が、動けないから?ー

その瞬間、スミレの内側で何かが崩れた。

悲しみでも、恐怖でもない。

奪ったものへの怒り。

そして、守れなかった自分への怒り。


魔神族が、もう一度魔力を凝縮し始める。

殺意は、またもスミレを狙う。

スミレの前に、今度はシュンとリリナが立ちふさがる。

「やめて...」

震える声は、誰の耳にも届かない。

「もう、だれも...」

次の瞬間、一つの叫びが地を揺らす。

「やめてぇぇ!!」

その声は何倍にも増幅される。

地面からは冷たい冷気が走り、突き刺す。

スミレの指先は驚くほど体温がない。


「ひっ...!」

「あ゛あっ!」


叫びが聞こえ、魔力が散っていくのが分かる。

スミレは、一気に魔力を放出した代償に大量の血を吐いた。

身体の輪郭が遠のき、暗闇がさらに深くなる。


その場には、魔神族はもう残っていなかった。

スミレは意識がなくなりそうな中、必死のクリスタの元へ這っていった。

「クリ、スタ...」

ようやくクリスタのもとにたどり着くと、その体は淡い霧になり始めている。

風の音だけが残った。

触れているはずの指先から、温度だけがほどけていく。

「ねぇ、スミレ」

最後の力で声を振り絞る。

「私の、歌...あなたに、あげる」

額にある命石が優しく、暖かく包まれる。

「お願い...私の、一族の歌声を...生かして」

それが最期の言葉だった。


魔力の名残が天へと昇ってゆく。

手にはもう、何の感覚もない。


残ったのは、冷たい風と胸の奥に灯った、暖かな何か。


しばらく何もせず、ただ天を眺めていた。

村の強者たちが近づいてくる。

「これは、いったい...」

スミレは、一つの声に反応する。

「母さん...」

そう言ったスミレは、意識が遠のき倒れた。


暗闇の中で、スミレは誓う。

力を与えられたからではない。失ったからこそ。

『もう、誰も奪わせない!!』


その心は、静かに燃えていた。

少女は守られる存在から、守る存在になることを決めた。

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