第89話 護衛騎士、魔王の眷属に心当たりがある
すみません!
89話の内容を88話に入れてしまいました!
まるっと入れ替えてます……!
こちらの内容をすでに読まれた方、大変申し訳ございませんでした!
前話をお読みいただければと思います……!
森が途切れ、木々どころか草一つ生えていないような場所まで来た。
この不毛地帯は魔王のせいだろうな。
「姫さま、あの奥のほうの岩場が恐らく魔王のいる辺りではないかと。いけるところまで行きますね」
「わかった。いったん降りたら魔王の封印を調べ――」
姫さまが、言いかけた言葉を途中で止めて、前方を注視した。
続いて俺も、何かがいるのがわかり、馬車を止めて、降りた。
つい、愚痴を漏らしてしまう。
「……あの役人、出ないって言ってなかったか?」
「言ってたな」
姫さまが俺の言葉を肯定した。
――魔王種と、そこから現れた魔王の眷属がいた。
魔物は、動物を襲わない。
魔王の眷属も、恐らく馬を襲わないだろう。
だが、そうは言っても流れ弾に当たったり、またそうじゃなくても馬が脅えると思うので馬車をすぐ止めて、俺と姫さまが魔王の眷属に向かって歩くことにした。
「……嫌な予感がします。姫さま、ありったけの身代わり人形を出してください」
強敵の予感がする。
姫さまは、マジックバッグから籠いっぱいの人形を出した。
「馬車にも積んであるから、足りると思う」
「人形の破壊具合を見て、追加で出せるようにもしていてください」
姫さまがうなずく。
俺は、姫さまに認識阻害の護符を貼り陰から攻撃するよう伝え、俺自身はわざとわかるように足音を立てて進んだ。
魔王の眷属は、ボウッと立っていたが、俺を見る。
……その、魔王の眷属の顔を見た俺は、一瞬自失した。
「…………は?」
それは、アニキのパーティにいた、魔術師二人の顔とソックリだった。
「…………嘘だろ?」
魔王の眷属、魔王種に取り込んだ人間を眷属にするってか!?
ならヤバい。
アイツらの魔術はとんでもないんだ。
俺は、姫さまから離れるように思いきり反対側に走った。
怒り顔のロランス、泣き顔のサロメ。もう一人はわからんが、たぶんその前後に連れ去られた人間だろう。
それが合体し、俺に向かって魔術を放つ。
「うわーっ!」
必死で避けた!
後ろで大爆発。マジかよ、生前と威力が変わってないんですけど!
いや死んでるのかどうかわからんが……。
「ロランス! サロメ! 俺だ、アルジャンだ!」
一応名乗りをあげてみた。
だが答えない。表情は変わらない。
「……アニキと合流できなくて、ある意味正解だったな」
アニキは「どうやってでも助ける」と言うだろう。
だけど俺は、姫さまの護衛として、勇者の生存を第一に考え、コイツらを殺す。
……それに……。あの内臓じゃ、恐らく長生きできない。魔王の眷属とは、攫ってきた人間を使い捨ての駒にしているだけだ。
俺は姫さまに聴こえるように叫ぶ。
「姫さま! 怒り顔と泣き顔は、魔術を混ぜて攻撃してきます! どちらかを落とさないと、かなりヤバいです! ただ、どちらも魔術師なので、スピードはなく、耐久性もないはずです!」
言い終わると魔王の眷属に向かって走った。
どっちでもいいが、サロメがいいだろうな。どっちももやしっ子だったが、サロメはロランスよりもやしっ子だ。
……と、もう一人の知らない奴に向き直った。
「お前が防御担当か!」
勇者の剣を叩きつける。
俺は、最初に戦った魔王の眷属をイメージして、ちょっと削れる程度の防御力だと思っていたのだが……。
「あれ?」
サクッと切れました! やったね!
「■■■■■■■!」
「耳もとで叫ぶなうるせぇぞ!」
怒鳴りながら、再度剣を叩き込もうとしたとき。
ズン、と重くなる。
「な……に?」
マジか。重力の魔術をかけてきやがった!
……得意だったのは……たぶんロランスだな。クソ、油断した!
「アルジャン!」
姫さまが悲鳴のように声を上げ、魔法銃を撃ち込んだ。
ロランスを狙った弾だったが、ぐりん、と回転し、サロメに当たってサロメの頭が吹き飛ぶ。
それを間近で見て、悟った。
本当にコイツらは魔物になったんだな、って。
ロランスとサロメは恋人同士だった。それはもう、二人は愛し合っていた。
だから、いくら敵を倒すためとはいえ、自分が今敵に魔術をかけているからとはいえ、サロメを犠牲にするなんて、俺の知っているロランスでは考えられないのだ。
「く……そ」
姫さまが慌てたようにこちらに向かってくる。
いや姫さま、俺の身代わり人形あるんだからそう慌てなくても……。
「…………は?」
笑い顔が、俺に抱きついた。
そして、腕の怪我なんてなんのその、俺を持ち上げやがった!
「はい!?」
そのまま逃走に移る。
「おい、離せこの野郎!」
キモいからやめて!
「アルジャン! アルジャン! どうにか抜け出せ!」
姫さまが悲鳴のように俺に訴える。
「……ヒュドラ!」
「シャー!」
ヒュドラが荷運び担当の腕に嚙みつき、食いちぎり始めた。
魔王種の近くまで来てようやく食いちぎり、俺を落とす。
あっぶねー……。怖いわ!
「姫さま! 浄化の玉を!」
「わ、わかった!」
姫さまがマジックバッグから浄化の玉を取り出そうとすると、魔王の眷属は姫さまにロックオンし、そちらに走り出そうとした。
「待てコラァ!」
慌ててタックルをかまして捕まえる。そのまま抱え上げ後ろに放り投げようとし……。
「「あ」」
バランスを崩した俺は、魔王の眷属ともども、魔王種の中に呑み込まれていった。
「アルジャンーーーーッ!」
姫さまの悲鳴が、微かに聴こえてきた……。
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