第86話 護衛騎士、姫さまへの不敬に腹を立てる
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理解した俺は、自嘲するように笑った。
「……あぁ、そういうことか。なんでやたら魔王の眷属を倒してくれって言われるのかと思ったら……。アンタ等ギルマスは、勇者と勇者の供に、ただ働きさせるために押しつけてたのか。依頼金はいっさいもらってないもんな。勇者だから、姫さまはEランクだから、依頼にはできない。でも、勇者に頼れば、無料で戦ってもらえる、ってか」
ギルドマスターは、ギクリ、と体を揺らした後、自棄になったように吐き捨てた。
「あぁ、そうだよ!俺たちのいいカモが、ガキのお守りで〝勇者の供〟とか言いだして、依頼金が安く済むどころか無料でいいんだから使わなきゃ損だってのが、各ギルドマスターの回覧でまわってきた! 勇者だとかいう奴も、冒険者に憧れる典型的なガキだから、Aランクの魔物討伐にも怖じけず簡単に食いつく! 特に、魔王の眷属なんざ特Aの依頼だ。そんなんがバンバン出て、毎度Aランクに頼んだらギルドが潰れちまうわ! だから、無料でホイホイ受けるお前らに頼んでたんだよ! アニキとも、合流しないように細工してたさ! 合流して、『魔王の眷属の討伐依頼をAランクの金額で提示しろ』ってアニキが言いだしたら困るからな!」
姫さまが硬直したのがわかった。
離宮のメイドたちで慣れているかと思ったが……こうもあからさまに悪意と嘲笑をぶつけられたのは初めてだからだろうな。
俺は剣を抜いた。
「よくもまぁ、王族に対して、そして勇者に対してそこまで言えたな。……不敬罪だ」
ギルドマスターはハッと気づき、青ざめた。
「……いや、待て。落ち着けよ。ちょっと言い過ぎただけだろ?」
「王族に対し、『ちょっと言い過ぎただけ』が通用すると思うのか? しかも姫さまは勇者だ。近隣諸国の王族ですら、勇者である姫さまに対しては強く出れない。その御方に対して、貴様はなんと言った?」
ギルドマスターは真っ青だ。
「……待ってくれ……俺だけじゃない! そう言ってたのは俺だけじゃない!」
「どうでもいい。貴様が姫さまに対してそう言ったのを私は聞いた。王族に対して、勇者に対しての不敬、騎士団の名にかけてただちに処罰する!」
俺が振りかぶったとき、
「待てアルジャン!」
姫さまが止めた。
「……姫さま? まさか許すとは言いませんよね? 他のギルドマスターも処罰モノですが、コイツはひどい。姫さまに面と向かって暴言を吐きました。公爵子息ですら平民に落とされたのですよ? ましてや平民であるソイツが許されるわけがありません!」
姫さまが首を横に振る。
「考えがある。捕まえておけ。……時間がない」
「…………。御意」
俺は姫さまに一礼すると、剣の柄でギルドマスターを殴りつけ昏倒させた。
頭から血を流しているけど、ま、いいか。
ギルドに戻ると受付嬢に言い、そしてそこにいた冒険者に手伝ってもらってギルドマスターを縛り上げた。
「騎士団に連絡して、コイツを捕まえるように言ってくれ。それまでは牢屋に放り込んでおいてくれ」
戸惑う周囲に、俺は姫さまにアレを出してもらう。
「この紋章が目に入らぬか」
姫さまの突き出しためっちゃ高そうな紋章を見て、全員が固まる。
「ギルドマスターは、彼女の地位を知っていながら暴言を吐き、不敬を働いた。また、アニキたち勇者の供との合流を阻止していたのが発覚した。本来なら即座に斬り殺すところだったのを、姫さまが温情をかけ、捕縛に留めた。……いいか、もし逃がしたら、このギルド全体が捕縛対象になる。それだけ地位のある御方だ。絶対に逃がすなよ!」
ギルドマスターがその地位にものを言わせて逃げおおせないように釘を刺しておく。
そして、騎士団長に手紙を書いた。
これは恐らく陛下にも知らせたほうがいい案件だよな、と考えて詳細に書いておく。
各ギルドマスターは結託して魔王封印を阻止してきた。
ギルドは信用出来ない。
そして、俺を『いいカモ』と言っていた。……つまり、冒険者時代の俺の報酬は正当じゃない。
それを考えると腸が煮えくりかえりそうだが、今は魔王封印が第一だ。
――魔王種を浄化する道具が尽きかけている。
――作る技術は失われている。
知らなかったとは言え、各ギルドマスターは処罰か私財をなげうってでも対処に当たってもらわないとだ。
そのことをキッチリ書いていたら、姫さまも手紙を書くと言う。
「パパに伝える。……ごめんなさい、って」
姫さまがショボンとしているので、頭を撫でた。
「姫さまが悪いんじゃありません。気づくのが遅かった私も悪いですし、いくらギルド運営にかかわるとはいえ勇者を利用したギルドマスターが最も悪いです。魔王封印は世界各国の願いでもあります。事情を知っているのに『金がかかるから』というつまらない理由で魔王封印を遅れさせ、世界を危機に追いやったのは、ギルドマスターです。本部に連絡すればいいのに……」
確かに広めるなとは言ったが、本部に連絡するなとは言ってないし、運営にかかわるならむしろ相談しろよ。
手紙を書き終え、陛下と騎士団長に送るように頼んだ。
「必ず渡すように伝えます」
と、青い顔をした受付嬢がハッキリと言う。
「……勇者様、魔王の封印をどうぞよろしくお願いいたします……!」
と、最後に言われた。
「……うん。行ってくる」
姫さまは元気なくうなずいた。




