第85話 姫さま、いまさら気づく
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「アルジャン、どうしたんだ?」
姫さまが俺の裾を引っぱった。
「アニキたちと合流したいんですよ。もっと言うなら、早く魔王のもとへ行き、封印したいんです。事態の収束にはそれが一番でしょう? なのに、あっちこっちに行かされて、アニキたちとも合流できない。……おかしくないですか? 彼らだって俺たちを追っかけているはずで、合流して戦った方が勝率が上がるのに、なぜまだ合流できないんでしょう?」
話を聞くかぎり、バジルはアニキたちと合流し、さらにリノールのところまで行って、ジローの怪我を治し、安心したリノールはアニキたちと一緒に旅立ったという。
話を聞いて、これでやっと安定した戦いができると喜んだのだが……いっこうに出会わないのだ。
見事なまでにすれ違っている。
それは、各ギルドのギルドマスターが、俺と姫さまに魔王の眷属を倒してほしいと依頼してくるからだ。
姫さまは依頼があると喜んで受けてしまう。
そのため、あっちこっちに行かされるので、俺たちのあとを追うアニキたちは、着いたと思ったら俺たちは別の場所に移動し、そこへ行ったらまた違う場所に行かされ……となってしまっている。
「……別に、二人でもいいだろ?」
姫さまがボソボソ言うので、大きなため息をついた。
「……姫さま。被害がどんどん広がっています。私たちだけでは食い止められません。ギルドマスターは、来た俺たちが倒せばいい、みたいに考えていますが、魔王の眷属はどんどん現れ、死傷者も出ています。今後、増えることはあっても減ることは考えられないのです。早急に魔王の封印をしなければならないと私は考えます。……なのに、二人で出たところ勝負のようにあっちこっちに現れる魔王の眷属を倒していても、無意味でしょう? それに、勇者の道具である浄化の玉を作れる錬金術師はもういません。つまり、今ある浄化の玉が尽きたら、それ以上浄化できないのです」
姫さまに伝えたら、姫さまがショックを受けたように立ちすくんだ。
……え、気づいてなかったの?
「姫さま? ……もしや、気づいてませんでしたか?」
姫さまは、小さくうなずいた。
……俺はため息をつく。しかたない、まだ幼いんだから。
「姫さま。浄化の玉はあとどのくらいあるんですか?」
姫さまは黙って俯いてしまった。
しばらく二人で黙っていると、姫さまがようやく答えた。
「…………あと、十個くらい。おにいたちも持ってるけど…………」
俺は再びため息をついた。
「姫さま。早急に魔王の封印へ向かいましょう。このままでは浄化の玉が尽きます。そうなると、どんどんと魔王種が現れ、そしてそこから現れる魔王の眷属でこの世界は溢れかえります」
姫さまは俯いたままうなずいた。
俺はそばにいた受付嬢に声をかける。
「魔王の眷属は、冒険者でなんとかしてくれとギルドマスターに伝えてくれ。そして、俺たちを追っかけているアニキに伝えてくれ。かなり危機が迫っている。勇者の道具は有限で、尽きたら終わりだ。これ以上、魔王の眷属に構っていられない。俺たちは魔の森に……目的地に真っ直ぐ向かう。そちらも可能な限り最速で俺たちと合流するように向かってきてくれ、と」
受付嬢は俺の言葉を聞き、顔色を変え、真剣な顔でうなずいた。
「かならず伝えるように各ギルドへ流します」
「よろしく頼む。……姫さま、行きましょう」
姫さまの手を取り、ギルドを出る。
馬車に乗り込もうとしたとき、ギルドマスターが飛んできた。
「おい! 魔王の眷属を退治してくれるんだろうな!?」
非難するように怒鳴るので、眉を顰めた。
「もう時間がない。それよりも頭を押さえないと、勇者でもこの事態は止められなくなる」
「そんな……! ちょっとくらい寄り道したっていいだろ!?」
そんなことをギルドマスターが言い出すので、正面に向き直った。
「寄り道した結果、非常にやばいことになっているのがさっき判明したんだ」
「はァ!?」
「勇者の道具には、数に限りがあり、そして、尽きかけている」
「……ッ!?」
ギルドマスターが詰まった。
「今からまっすぐ魔王のもとへ向かって封印しないと、この世界は魔王の眷属で溢れかえるよ。それでも俺たちを止めるか?」
「…………ッ。なんでこのギルドで気づくんだよ……! じゃなけりゃ、お前らに魔王の眷属退治を押しつけられたのに……!」
捨て台詞のように吐き捨てられた。
……しかも、最悪の台詞を。




