第109話 護衛騎士、処分を聞いて喜ぶ
プリエ嬢からバトンタッチしましたアルジャンです。
諸々の行事が終わり、一段落した……と思ったところで陛下に呼び出された。
騎士団長や宰相も一緒だった。
「まず、お主の被害に関して、望み通りの罰が下されたぞ」
マジか! ありがとうございます!
俺は深く頭を下げた。
――俺からギルドマスターの悪行を聞いた陛下は、ドラミトモン王国として『ギルドマスターが私利私欲のために一部の冒険者に対して不当な扱いをし依頼金を着服した、さらには魔王討伐のための調査を故意に邪魔していた』ということを大々的に発表し、冒険者ギルドに責任を追及した。
この発表を聞き他国も冒険者ギルドに事件の解明を迫った。
これを受け冒険者ギルドは調査を行い、そして事実を認めて該当のギルドマスターの権利を剥奪。関与した者を捕らえ収監された……ってのが、ちょっと前の状況だった。
今まで使い込まれた金の他に賠償金も含めた金額が、俺に支払われることになった。
使い込まれていた金の合計は、かなりの金額だった。
桁が三つばかり違ったんだよ!!
金額を聞いて怒りが再燃したが……もう今さらだ。
俺は、半分を妹へ送り、半分を妹と同じ難病を患う人たちへ寄付することを伝えた。
だが、ここで問題が発生した。
捕まった全員、「全額払えない」というのだ。
もちろん、勇者(と認識されてしまった俺)への罰金だ。さらには組織ぐるみの犯罪ときたもんで、ギルドも一切手を抜かず、連中から徴収する。手持ちの金で足りなけりゃ、全て売り払って補填しようとした。
そしたら連中、なんて言ったと思う?
「使っちまったから、ないものはないんだ」
「手持ちの金で勘弁してくれ」
「せめて、家はかんべんしてくれよ。女房と息子が暮らしていけない」
……っつって俺に恩赦を求めていると、俺のところへやってきたギルドの役員から聞かされたので俺はこう返答してもらっていた。
「ならば全員、罰として難病を患う人たちへ奉仕をすることにしてください。払えない金額を賃金だと仮定し、その賠償のために一生償わせてください。そして、難病を患う人たちに、俺が何をされ、妹がそのせいでどれだけ苦しんだかを伝えてください。――俺は危険を顧みず、妹の薬代と治療代を稼ぐためだけに冒険者をやってきた。騎士団に入ったのも、騎士団の給料の方が良かったからです。平民だからと貴族から中抜きされていたようですが、それでも騎士団の方がマシだった。それくらい安い依頼料で働いてきました。同じAランクのパーティが高級装備に身を固めている中、俺は、やりくりして安い武具で、命を危険にさらしながら戦ってきたんです」
さらに付け足す。
「今言ったことを、難病を患う人とその家族に伝えてください。……あぁ、ついでに、大切な人たちを異形に殺された人にも伝えてほしいな。ソイツらのせいで勇者の供と合流できず、討伐が遅くなったんだって、あわや勇者の道具が尽きて異形で溢れかえることになりそうだったって、そんな奴らが恩赦を求めているって、伝えてください」
――以上の俺の言葉が実行されたことを伝えられたのだった。
元ギルドマスターたちは、日々罵られながら奉仕しているという。
難病で苦しむのを目の当たりにし、ようやく自分が何をしていたのかを思い知ったそうだ。
元ギルドマスターの家族は、家は売り払われるのを免れたが、金品は全て没収されている。おまけに「世界を救った勇者の魔王討伐を阻止していた極悪人の家族」と周囲に非難を受け、全員が離婚し消息を消したそうだ。
誰もいなくなった家はすぐさま売り払われて賠償金の返済に充てられた。少しでも借金を減らし、一刻も早く奉仕を辞めたいんだろうな。
一部の連中は、苦しむ人を見てもなんとも思わず、罵られても「みんなやっていたのになぜ悪い!?」と開き直り、現状の奴隷奉仕を嘆き、そんな目に遭わせている俺を怨んでいるそうだが……。
そういう奴は一生変わらないだろうし、自分こそ怨まれているのが理解出来ず、手を下さずともすぐ死んでいくだろう。
――これで、ギルマスの横領の件は片が付いた。
他、俺の今後……の前にアニキの今後だが、アニキは冒険者を続けるそうだ。
あちらの世界からやってきた使役動物……こちらでいう魔物は、もうこちらの世界に根づいてしまった。
根絶させるのは至難の業だが、それでも根気よく続けていけばいつかきっといなくなる可能性がある。
「Aランクが一気に減っちまったからな。俺まで抜けたらマズいだろ」
って、アニキは言って笑った。
やっぱ、アニキは兄貴だな。
ラスト1話になります!
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