最終話 護衛騎士、お断りするが、姫さま、護衛騎士を振り回す
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何卒よろしくお願いします。
そして、俺なんだけど。
「パシアンを娶り、王配……いや、実質お主が王になれ」
って言われたんですけど?
「………………? 冗談ですよね?」
不敬かもしれないけど、頭の処理がおいつかなくてつい言ってしまった。
陛下が呆れたように俺に告げる。
「冗談ではない。お主は今代の勇者。勇者の供が口を揃えて言ったので、そうなのだ。討伐したのもお主と聞き及んだ。ならば、お主が王になるのが道理であろう」
俺は思いきり首を横に振る。
「いやいやいや。無理です。全体的に無理です」
何もかもが無理です。
すると、姫さまが憤った。
「何が無理なんだ! あたしとケッコンできるんだぞ!」
それが一番無理だって!
「いくつ年齢が違うと思ってんですか!?」
「そんなん、カンケーないっ!」
「あるの!」
無理だから!
陛下が眉根を寄せて俺に尋ねた。怒ってますね。
「……パシアンの、何が気に入らないというのだ?」
「年齢です。俺、熟女好きなので」
キッパリと言い切った。
俺は早くから両親と死に別れ、ずっと妹の面倒を見てきた。
妹の手がかからなくなったら、今度は姫さまの面倒を見る日々だ。
いいかげん、年上の世話女房タイプに甘やかされたい。
出来れば肉感的な女性がいい。
膝枕されてみたい。
宰相と騎士団長が頭を抱えたよ。
いや俺が抱えたいよ。
なんで幼女をあてがうの?
俺、全く以てそういう趣味じゃないんですけど!
姫さまがまた怒鳴った。
「あたしだって、そのうち熟女になる!」
「その頃俺は死んでますね」
ギリギリ生きているかもしれないが、どのみちじいさんだよ。ボケて姫さまの顔もわからないような状態になってるよ。
姫さまが俺をポカポカ叩いた末、ヒシッとすがってきた。
俺はため息をつき、姫さまに諭す。
「いいですか姫さま。姫さまこそ今代の勇者。姫さまが勇者の武具を使いこなせていなかったら魔王は決して倒せていなかったでしょう。姫さまが初代勇者の記憶を宿した絵本を携えてなかったら、そしてたまたま私が姫さまから拝借した剣を持っていなかったら、『魔王を倒す』という偉業は起こり得ませんでした。私一人の力では、あの化け物は倒せませんでしたから。ですから、初代勇者が何と言おうとも、勇者は貴女です」
「なら! 勇者の言うことを聞け! あたしとケッコンしろ!」
「謹んでお断りします」
「ムキー!」
なんと言われようがダメ。
俺、ようやく夢の年金生活が送れると思ってウキウキしているから。
――実は、妹から手紙とともに手形が送り返されてきたんだよね。
『こんなにもらっても困るし何より怖いので、兄さんに返す』ということだった。
あと、『こんなに金があるのなら、いいかげんに危険な仕事から足を洗って帰ってこい』とも。
それで、決心したのだ。
騎士団を退団し、妹のところへ帰ることを。
陛下と姫さまの家族仲は良好だということがわかったし、これからはちゃんと姫さまの面倒を見てもらえるだろう。
わかってないようなら姫さまがどんな目に遭ってきたかを語り(初代勇者の件も含め)、姫さまへの待遇の改善を要求しよう。
陛下と宰相と騎士団長がため息をついた。
「……勇者アルジャンよ。少し考えろ。パシアンとの結婚は……確かにまだ早いのはわかる。パシアンがもう少し成長したらまた話を出そう」
「いえ、俺は熟女が」
「話を出そう」
あ、聞いてくれない。
でも、さすがにこれは引かないからな!
俺の一生がかかってるんだ!
*
「……ルジャン。アルジャン」
声が聴こえてビクッとして飛び起きたら、姫さまが俺の寝所に忍び込んできたよ!
「――ッ!! 姫さま!!」
マジで怒るよ!?
俺が睨んでもどこ吹く風の姫さまは、
「冒険に行くぞ!」
と、寝言を言った。
「なるほど。姫さま、寝惚けてるんですね。わかりました。私が離宮にお連れします」
「王様になるのがイヤなら別にかまわない! でも、一緒に冒険はするんだ! アルジャンが行かないなら、あたし一人で行く!」
駄々っ子みたいなことを言い出したよ……。
ハァ、とため息をつき、とりあえず着替える。
姫さまを離宮に送らなければならない。
服を着たら……あれ? 姫さまがいない?
いつの間にか姫さまは外に出ていた。
「行くぞアルジャン!」
「ちょっ……待てやコラ!」
姫さまが走り出し……ちょっと、なんで馬車があんなところにあるの?
「あ、姫さま!」
「アダン! 出発だ!」
「ハァ!?」
アダンって……エルフ国の王族なのに馭者をやってる変わり者の?
俺は慌てて剣とマジックバッグをひっつかんだ。
……ん? 今、何かチラッと見えたけど、気のせいだよな。
「置いてくぞ、アルジャン!」
「置いてくじゃねーよ! 全員寝ろ! 何時だと思ってんだ!」
馬車が発車しようとするので慌てて飛び乗ると、アダンが思いきり馬車を走らせた。
「おい、アダン! お前、王家の馭者だろうが!」
「いや~、あのまま王城にいると、いつか連れ戻されるんで! 逃げたいなーって思っていたら、姫さまが声をかけてくださったんです!」
姫さまが付け足した。
「アダンは、途中までだ。よさげな仕事があったらやめるって」
「エルフの王族、とんでもねーな!」
なんなんだよその自由奔放さは!
姫さまがヒシッとくっついてきた。
「帰らないぞ! お前があたしとケッコンするって言うまで、ぜーったい帰らない!」
うわー。
幼女のワガママが炸裂しているよ。
ハァ、とため息をついた。
「……いつかきっと、もっと歳が近くて格好いい騎士様が現れますよ」
「アルジャンがいい!」
姫さまが抱きついて離れない。ちょっと鼻声になってるし……。
もう一度ため息をついて、天を仰いだ。
「……わかりましたよ。もう少しだけ冒険を続けましょう。でも、飽きたら帰ってくださいね?」
「わかった!」
姫さまが顔を上げ。涙で濡れた瞳で俺を見ながら嬉しそうにうなずくと、急にすやすやと眠ってしまった。
「……アダンは眠くないのか?」
「馭者なので! お馬さんを走らせるのが楽しくて眠気がぶっとびました!」
うーわー。こんなんと旅をしてきたのか、イディオ様とプリエ嬢は。
どうしようかな、とりあえずギルドに寄って騎士団長に手紙を出さなくては……とマジックバッグに目をやって、ふと思い出した。
……気のせいだよな?
さっき、『姫さまの大冒険』って絵本がマジックバッグに入っていた気がするんだけど……。
うん! きっと気のせいだ!
(了)
[あとがき]
これにて、『やんちゃ姫さまの大冒険 うちの第三王女、冒険者になるってよ』を完結いたします。
短編から始め、コンテスト用に長編に仕上げて、2巻程度のボリュームになるように考えていました。
なぜなら書籍は2巻以上出すのが難しいためで、なら2巻完結にすればいいじゃない!と考えたのですが……。
続刊無しでした!
ですがコミカライズされましたし、悔しくなんかないです。
作者としては、処女作から小説の書き方を改めて勉強し、コンテストおよび書籍化というものを意識した作品づくりを心がけて書いた最初の作品です。
惜しくも続刊しませんでしたが、ストーリーも話のつくりも満足のいく仕上がりになっています。
ただし、タイトルとキャッチコピーはまだまだ未熟なので、次回以降の作品はそこを課題としていきたいと思います。
姫さまの冒険はここで終わりますが、これ以降はアルジャンがほだされて姫さまの粘り勝ちか、姫さまが丸め込まれてアルジャンが逃げきるか、ご想像にお任せいたします。
消えてしまったはずの初代勇者もね……(ホラーみで終わる)




