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trigger ! ! 〜ノア計画〜   作者: 夜野 助べ衛
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“消えた”

  翌朝、『ROOM 戦闘班』は情報班班長 大國主音の家へと向かった。秘密基地のある公衆トイレから歩いてすぐの桜田門駅から、有楽町線、半蔵門線、京王井の頭線と乗り継いで行く。

  貴夜美に連れられてたどり着いたのは高井戸駅だった。猛麻呂は遠出をしたのは久しぶりだ。

  駅からさらに10分ほど歩いた住宅街の中にひっそりと佇む二階建てのアパートを見つけた。貴夜美が足を止めた。

「着いたぞ・・・」

  そのアパートは壁に蔦が絡み、ところどころの黒いシミが目立つ。外側に取り付けられた階段は赤黒く錆びている。廊下にはゴミ袋が積み上げられ、住人の生活遺物の掃き溜めとなっていた。

  住人がアパートをこうさせたのか、それともアパートが住人をこうさせたのか。猛麻呂にはわからない。

  大國主音の部屋は二階の1番奥の部屋だった。ドアの前にはAmazonの空箱が積み上げられていた。インターフォンはない。

コンッコンッ

  貴夜美がドアをノックした。しかし反応はない。   何度もしたが全く出てくる気配がしなかった。

「やっぱいなさそうですね」

  猛麻呂は郵便受けの下に溜まった新聞の山を眺めた。

「電話とかメールとかもできないんですよね?」

「ああ・・・。全く繋がらない・・・。いったいどこにいるんだ・・・」

  貴夜美は深いため息をついた。

  その時、ドアの向こう側から微かに物音がした。

「誰かいるのKA!!」

  凪が叫んだ。

  シーーンとした静けさがアパートを包む。

「気のせいか・・・」

  そう呟いて貴夜美がもう一度ドアを叩いた瞬間だった。

ガタガタンッドンッガシャンッ

  部屋の中から誰かが暴れるような音が聞こえた。

「いったい何なのよ〜〜!!」

  波がドアを開けようと引っ張るがビクともしない。

  その時、貴夜美のスマホの着信音が鳴った。主音からの電話だった。

「もしもし・・・!主音か・・・?お前の家で何が起こってる・・・?おい・・・!!答えろ・・・!!」

「タカヤンか……!早く帰れ……!殺されるぞ……!!うわぁぁぁぁ!!」

  叫び声とともに貴夜美のスマホの画面から手が現れ飛び出した。

  その手には血染めの紙切れが握られていた。

「俺は“ロックオン”されている。タカヤン、これを受け取れ。理由はまた今度だ。諏佐男さんにも伝えてくれ……!俺はしばらくタカヤンに会えそうにない……」

  貴夜美は主音の手に握られている紙片を受け取った。すると手は画面の中に沈むように消えていった。   しばらく貴夜美は戸惑ったように立ち尽くしていたが、ハッと我に返った。

「猛麻呂・・・!ドアをぶち壊せ・・・!!」

  猛麻呂は右腕に力を込めた。

「trigger!!『創造世界(チェンジ・ザ・ワールド)』ドアの材質を鉄から発泡スチロールに変化させる!」

  猛麻呂が殴るとドアは乾いた音とともに縦に真っ二つに割れた。

  猛麻呂たちは部屋の中に突入した。

  すると部屋の奥から、全身黒色の迷彩色の服を着て、黒色のヘッドガードとサングラス、黒色のバンダナを口に巻いた3人が現れた。

  ナイフを振りかざし、猛麻呂たちに襲いかかった。

「あっ」

  足元に散乱した雑誌に足を取られた美香が倒れた。

  そこへ妖しく黒光るナイフが美香の胸をめがけて振り下ろされた。

  美香は口を噛みしめギュッと目を瞑った。

ガキンッ

  美香はハッと目を開けた。

  美香の目に映ったのは突き刺さったナイフではなく、覆いかぶさる猛麻呂の“どアップ”な顔だった。

「たけはる……」

「服を鉄に変えた……!」

  美香の顔のすぐ横に、折れたナイフの刀身が畳に刺さっていた。

  猛麻呂はホッとした表情で大きく息を吐いた。

  鉄となった猛麻呂の服の背中側には、ナイフと擦れた跡がはっきりと残っていた。

  貴夜美と凪と波が玄関に置いてあった傘を振り、全身黒づくめの3人と戦っている。

「……ありがと」

  美香は少し顔を赤らめた。その口調はわざとらしくぶっきらぼうだった。

  猛麻呂は美香の上で四つん這いになっている。猛麻呂と美香の顔の距離は10センチもない。

「って、ちょっと早くそこどきなさいよ! バカが移る!」

「重くて立てねぇんだよ!俺の能力は解除するのに時間がかかることぐらい、お前も知ってんだろ!」

「自分の能力何だから自分で責任持ちなさいよ!」

  猛麻呂と美香がそうこう言い争っているうちに黒づくめの3人はベランダから飛び降りた。

  貴夜美も追いかけて外を見るとそこにはもう誰もいなかった。

「どこへ消えたんだ・・・」

  凪と波も不思議そうに首をひねる。

  このアパートの隣にはこちらもさびれた公園が併設されている。

  黒づくめの3人が飛び降りた下には花壇があるが、そこには足音がしっかりと残っていた。

「靴のサイズでも測っておくKA」

  そう言って凪はポケットからメジャーを取り出した。

  波は足跡を追って公園の中に入ったが、そこで不自然に足音が途切れていた。

「人間って消えるのね〜〜!」

  波は途切れた足跡を覗き込んだ。

  猛麻呂はようやく能力を解除できたので立ち上がり、ベランダに出て様子を見ていた。

  そこへ体をはたき穢れを落とし終えた美香が横に並んだ。

「あの黒い服……、そうだよね?」

  美香のその眼はどこか虚ろで不安げだった。

「ああ。あれは1週間前に渋谷で狙撃してきた人と同じ服だった……。と、いうことは、あいつらは政府の人間だ。間違いない、この件には政府が絡んでる。大國主音は何らかの理由で政府に命を狙われているんだ」

「その理由って……」

「諏佐男さんが言ってた政府の企む恐ろしい計画のことじゃないかな」

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