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氷の妖精

ネタに走った。

後悔している。


「一つお聞きしたいことがあるのですが」


「何かしら?」


ベランダで優雅に紅茶を楽しむ少女、レミリアの後に、突如として銀髪の少女、咲夜が現れ、レミリアへと問いかける。

咲夜の視線は広場で美鈴と武術の稽古をしている聖へと向けられる。


「能力と言うものは性格にも反映されますよね」


「まぁそういう能力もあることにはあるわね」


「なら聖の能力は何故反映されないんでしょうか?」


「常識や概念が通用しない、ならもう少しアッパラパーになってもいいじゃないの、ということかしら?」


「……ま、まぁ」


上白沢聖、思考に偏りがあるし、歴史関係になると朝から夜まで語り続けるという異様な人間ではあるが、この幻想郷の中ではまだ濃くはない。

忠義や恩を大切にするのは最近の仕事ぶりからもわかるし、努力家なこともよくわかる。

柔らかな物腰で、根本は常識的だ、まぁそれだからこそ周りに振り回されているのだが。


「もとより幻想郷は非常識な場所よ、非常識という部類がかなり狭い。聖の非常識という部類は人にして妖魔や神の力をもっているくらいじゃないかしら、まず可能性としては幻想郷に性格の非常識というものがないという点かしら、残酷な一面でも優しさにあふれる一面でも、恩をあだで返すようなことを好む一面でも、この幻想郷ではありうるということが二つある可能性のうちの一点ね、死というものが隣り合わせな戦場となんらかわらないわよ、この世界は」


それと二つ目だけど、そうレミリアは続ける。


「能力的には通用しないだからね、いわば枠が外れた状態だからね、パチェの本からの引用だけど、集合Uを生命或る者として仮定し、カテゴリAを人間、Bを妖怪、Cを悪魔....とわけていくんだけど、聖は分類がどこにもないのよ、いわば集合体Uに属するというだけの話、どの要素をもち、どの要素にはいることもできる、だから自由度が高いというだけのはなし、これを集合Uを性格として考えるだけよ、選択権は聖自身にある、きっかけによって残虐性極まりない正確になる可能性があるわね、まぁ聖が得物もって人里を皆殺しにしたりする光景を一切考えられないけどね」


「それは私がさせません」


「ふふふ……まぁ性格の例を挙げるなら、博麗――いや先代の巫女ね」


「えっと、前に着ていらしていた霊夢の母親、でしょうか?」


「ええ、アイツは『物事や概念を突き破る程度の能力』はもはや人間の常識でさえも付きや――なにかしら美鈴」


レミリアがいつの間にか咲夜の後ろへと立っていた美鈴へと何かしら、と問いかける。

すると美鈴は門の向こうを指さした。


「ものすごい勢いで怒気を持って先代の博麗の巫女様が近づいてきてますよ」


「……聖!とりあえず先代の巫女を持ち上げる言葉を言い続けなさい!」


「えっ!?えーっと、黒髪長髪で美人って本当に美人な人じゃないと無理ですよね、その点師匠ってすごい、全身からみて一部の隙なく美人」


「……どう?」


「あと二言三言あれば」


「……」


じっと聖の言葉を待つ、お前の言葉はないのだろうか。

聖は少し考えながらも言葉を続ける。


「師匠は破天荒でありながら思いやりのある女性で、その上実力もあるのでかっこいい、霊夢姉さん将来美人になる、頼れる女性」


「……怒気が静まりました……あれ?えーっと『霊夢をほめたたえろ』?」


「……霊夢をほめたたえなさい」


「いや美人になるとは言いましたけど……霊夢姉さんかわいい、霊夢姉さん強い、霊夢姉さん頼りになる、霊夢姉さん最高、霊夢姉さん黒髪美人、霊夢姉さん……その肌は白魚の様に透き通り、黒髪は艶を感じさせる、黒曜石のように美しい大きな瞳は、かわいらしさを感じさせながらもその将来性を感じさせる、まつ毛が長く、眼を細めたその憂いを秘めた瞳は思わずゴクリと唾をのむほどに美しく、華奢な体と相まって、その様子は思わず肩を掴み抱き寄せたくなるほどだった――」


「なんで小説風なのよ」


「『霊夢と結婚したいか』ですって」


「それは無い」


その瞬間、紅魔館の広場は遠方から放たれた夢想封印によって吹き飛ばされたのだった。

聖の悲鳴が空のかなたに消えた。

終わり。






美鈴さんとの修行中、水色の髪をした妖精が門の前へと降り立った。

こちらへとビシィッ!と人差し指を向けて何かをいっているが、何をいっているのかわからないので門の前へと向かうことにする。


「何かご用でしょうか?」


「アンタ、アタイと勝負しなさい」


「……えっと、何で、でしょうか?」


「……」


「……」


沈黙が訪れる。


「……勝負方法を考えてからまた来てくださると良いのですが」


「……うん」


素直に帰っていった。

何だったんだ、そう思いながら修行を開始することにした。

その次の日、昨日の妖精が緑色の髪の妖精を連れて現れた。


「ちょ、チルノちゃんやめようよー!」


「アタイは最強だからだいじょーぶ!」


「大丈夫じゃないよ!?」


「こんにちは、勝負でしょうか?」


そういってにこやかに声をかける美鈴師匠。

庭掃除の手を止めて、少しばかり観察することにした。


「えぇ!アタイのさいきょー振りを見せてあげるわ!」


「それで勝負はなんでしょうか?」


「ズバリ、弾幕ごっこよ!」


弾幕ごっこ、いわば打ち合いの勝負である。

この勝負の名称は特にないが、弾幕勝負、弾幕ごっこなどが主流。

ルールである『スペルカードルール』は妖怪同士の戦いによる博麗大結界への影響を抑えることの他に。

異変を起こしやすく、また解決しやすく。

そして人間と妖怪での実力を縮めるという意味がある。

弾幕ごっこは数回やったことがある、人間にとって有利な内容ではあるが、結局のところ実力がものをいう勝負だと思った。


「わかりました――」


そういって美鈴師匠は了承し、妖精と師匠は同時に飛び立ち――。






「……」


美鈴師匠が勝利したのはまぁ誰しも予想済みであろう。

しかしなんとそれは――覆されなかった。

一分程度で終わった、なんだこれ。


「あうぅ……チルノちゃんの弾幕は前方の展開が甘いって昨日もいったのに……」


「うぅっアタイはさいきょーなのに……」


ポリポリと頬をかく美鈴師匠、困った様子なので、門へと静かに近づき、柱へと腰かける。


「フハハハ!甘いィ甘いぞ、氷の妖精よォッ!」


とりあえず気、魔力、霊力、妖力といった主要な力を放出しながら大物っぽい声を出す。

体は子供なんですけどねー。


「ア、アンタ誰?」


「我が名は上白沢聖ィィ!聖と邪を背負いしもの也ィ!」


「せいと……じゃを」


「背負いし者……?」


「そうッすべての力を持つ最強となるべくして生まれた究極生命体ッ!」


どこの柱の男ですかね。


「究極生命体……?子供のくせに!」


「ハッ貴様は肉体程度で敵の力量を見るのか?それで最強とはとんだお笑い草よォ!」


「な、なにおう!?」


「しかし力は未だ未熟なために最強とはまだほど遠いのだ、しかし未来は無限大だッ!最強という言葉は研磨し続ける者のためにあるものだッ!我が如何に素晴らしき究極生命体であろうとも、努力をしないものに最強というゴールは存在しないッ!努力を貯め続けたもののみに最強というゴールに到達するための切符は買えるのだッ!」


「さいきょーというゴールにとーたつするための切符……」


「氷の妖精よ Never forget to do your best!」


「ね、ネバーホーゲットトゥドゥユアベスト……かっこいい!」


「チルノちゃん、意味わかるの?」


「……」


「わからないんだね……」


うん、予想はしていた。


「努力を決して忘れるな、ということだ、今回がダメでも次回がある!今はダメでも次がある!」


「いいこと言うわね!セイだったわね!アタイの名前はチルノ!さいきょーの妖精チルノ!」


「あ……大妖精です」


「えーっと「紅美鈴です」ホンメーリン!また来るわ!」


「えぇ、いつでもいらしてください」


そう言い残して妖精・チルノと大妖精は遠くの空へと飛び立っていった。

こうしてよくわからない演劇は終わったわけだ。

やれやれ掃除を始めようか――。






次の日


「聖と邪を背負いし者、紅茶お願い」


「聖と邪を背負いし者、この本をあちらの本棚へと整理してくれるかしら」


「聖……ぐふっ、く……聖と邪を背負いしもげふぅっ、……こういった食器類の油汚れはこれをつかくく……」


もうやめてくださいと土下座することになった。







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