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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第一章 期待と疑念、それが紡ぐもの
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第2話 京都の動乱

「父上、清雅をいつ江戸から呼び戻すのですか?」




清雅の父 輝雅(てるまさ)は、部屋に入ってくるなり、ぶっしつけな態度で疑問をなげかけてくる我が息子を、じろりと睨んだ。




清雅の兄、元輝(もとてる)である。





清雅の家は京都にある。


江戸警察で勤めを果たす清雅を、兄の元輝は心配でたまらない。





そんな元輝の気持ちを察してはいるが、父、輝雅(てるまさ)は清雅にとって、江戸での勤めは重要と考えている。




「お前のな」


輝雅(てるまさ)は、元輝(もとてる)を見た。




「その、弟への執着、なんとかならんか?」




ため息をひとつ。





「執着ではありません父上。


 今、京都がどないな事になってるか、知ってますでしょ?」




―― そう。




京都では大変な事件が起こっていた。





江戸を守る江戸警察は、佐倉が所長を務めており将軍様をお守りしている。


京都を守る京都警察は、天皇をお守りするのが職務。




その京都警察の所長が、先日何者かに暗殺されたのだ。





「内部の人間が刺客と通じていたらしいな。


 敵に組織の奥まで入られるとは、京都警察も大した事ない」




「今、京都では"戦国復古派"と言われるテロリストが、盛んに行動を起こしているらしいですしね」




戦国復古派は、通称"ムカデ衆"と言われる密偵を使う、頭脳派テロリスト集団だ。


京都警察は、このテロリストに手を焼いていた。




「ついに所長が殺されたとあっては、京都警察も黙ってはいまい」




「それはそうでしょう。


 私が言いたいのは、京都で起こったことが、いつ何時、江戸でも起こるかわからないという事です」




元輝(もとてる)は、父の目の前で正座をし、父の目を見据えた。


「何かあってからでは、取り返しがつきません。


 もし、あの清雅の、白くて柔らかい肌に傷でもついたら、嫁の貰い手がなくなりますよ」




「あれは男だ」




「……」




輝雅(てるまさ)は深いため息をついた。




元輝(もとてる)には、はよう嫁を探さんと………しまいには、弟を嫁にするなどと言いかねん)




兄の弟への執着は、輝雅の悩みの種だった。






一方、江戸警察では佐倉が、相良、一ノ瀬、黒崎を呼び出していた。




京都での問題の知らせは、すぐに佐倉のもとにも届いていたのだ。




「吉岡さんがねぇ」


佐倉は腕を組み、頭を捻りながら、ため息ばかりついている。


「まさか暗殺されるとは」


佐倉と、暗殺された京都警察所長の吉岡とは深い仲だった。


「あそこは規律も厳しく、内部統制もしっかり取れていた」




「どこからヒビが入ったかは、わからんものだ」


相良が相槌を打つ。




「人ごとではないはずです」


黒崎が冷静な口調で佐倉と相良に釘を刺した。


「我々も、つい先日まで、所内に侵入を許していましたからね」




「どういうことですか?」


一ノ瀬は姿勢よく正座をしたまま、三人の顔を順番に見る。


「ここにも、ムカデ衆が混じっていたと?」


言って、そこで口をつぐんだ。




勘のいい一ノ瀬は瞬時に頭をめぐらし見当をつけたようだ。




「僕だけ知らないということは、僕の近くの人物ですね」




「丸山だ」




黒崎は瞬時に事実を突きつけた。




「これ以上、隠す意味はない」


「清雅と高岡に、お前の体調を気遣えと言われ、今まで言わなかった」


冷たく突き放した態度の黒崎の言葉を補うように、相良は一ノ瀬に向き直った。




「そうか……。


 それで、黒崎さんが丸山くんを斬ったのですね」


一ノ瀬は、その日のことを思い出したように目を瞑り拳を握る。




「あれだけ近くにいながら気づかなかった。


 お前の落ち度だ」


「いやいや、これは我々全ての問題だ」




黒崎の言葉を佐倉は否定した。




「まだ、丸山以外にもいるかもしれない」


「もしくは……」


相良は相変わらず緊張感なく耳くそをほじる。




「たぶらかされて、後から寝返る奴もでてくるだろう」


つぶやくように言いながらも、視線はするどく、何事かを考えているようだった。


本人は協力するつもりなどない。

しかし、そこをうまく使い、内部から事を起こす。

ここ江戸警察でも、見事にしてやられることとなる。

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