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九二 山男 8/8
昨年(明治)の事です。
土淵のある里の子が14,5人で早池峰に遊びに行き、いつの間にか夕方近くになったので、急いで山を降りて麓も近くなった頃に、背丈の高い男が下から急ぎ足で登ってくるのに出会いました。
肌の色は黒く眼はきらきらとして、肩には麻製と思われる古い浅葱色(ごく薄い藍色または明るい青緑色で、新選組の羽織に使われていました)の風呂敷の小さな包を背負っていました。
恐ろしかったですが子供の中の1人がどこへ行くのかと声をかけると、
「小国へ行く」
と男は答えました。
この道は小国へ越える方角ではなく、男が立ち止まって考えると、行き過ぎたと思うと間もなく見えなくなりました。
子供達は山男だと口組に言いみな逃げ帰ったと言います




