あなたの罪を許します(13)
「ベネディクトはどうした?」
「ここには来たく無いんだとよ。なんだ、あんたもわかっていたのか」
そう俺に応えつつもエリックと名乗る少年は俺の奥に磔となっている仲間の姿を見て安堵しているようだった。 法廷の奥に位置する刑場は、その昔コロシアムとして使用されていた。公開処刑のような場にはうってつけと言えるだろう。
「そうか、あいつはまた逃げたのか」
そうだとも。そういう人間なのだあいつは。衝動的に人を助けはするものの、その責任、重圧には耐えきれない。あの時もそしてこれからも。
「あいつらに何をした」
「少し眠ってもらっているだけだ。抵抗されても面倒なのでね」
「面倒ごとが嫌なら俺が引き受けてやるから、さっさと解放するんだな」
ベネディクトが来ないのならそれでも良い。やるべきことをやるだけだ。
「昨日、手も足も出なかったことをもう忘れるとはな。貴様になど興味はない」
呪符に魔力を込める。次の瞬間アモンが炎とともに現れ地面を揺らす。
その姿にエリックという少年は動じない。いや、恐怖で動けないというところか。
「威勢は良かったが、所詮は子どもか。安心しろ、火炙りになどはしない。我が忠実なる使い魔に殺されることをせめて誇りに思って死ぬんだな」
爆撃とも呼ぶべきアモンの一撃が振り下ろされる。
あの少年に防げるなど到底思えない。
「あら、もう勝利を確信するなんて、甘いわね」
アモンの攻撃は巨大な氷の壁に遮られていた。
「ほう、少しは出来るやつもいたようだな。ッ、、、」
ガキン。と私の防護壁がエリックの大剣を弾く。
「クソ、あと少し」
ふん、少しは頭を使ってきたようだな。
「さあ、どうする。2対1だな。俺は寛容だからな。いま降参するなら許してやらんこともない。はっきり言っとくがシルビアはめちゃくちゃ強いぜ。あんな召喚獣一匹なんて瞬殺される」
あの女。人間、いや魔族だな。それも相当な手だれか。拮抗しているように見えるが、ギリギリのところでアモンが押されている。
「ふふふ、最高裁判官だかなんだか知らないけれど、この程度の使い手など聖戦にはゴマンといたわ。こんなのが切り札だとは笑わせる」
「わざわざ敵を呼び出しておいて、たった一人で待ち受けるとはな。よほど自分に自信があったと見える。多勢に無勢だが悪く思うなよ。仲間がいるなら今のうちに呼んでおくんだな」
「そうさせてもらおう」
次の瞬間、鈍い衝突音とともに魔族の女が壁にその体を叩きつけられた。
「は?」
エリックという少年は咄嗟のことで理解が追いついていないようだ。
「くっ、一ツ目鬼『キュクロプス』。いつの間に」
「キュクロプスだけではないぞ」
俺はすでに召喚を終えていた全ての召喚獣に惜しみなく魔力を供給を始めた。
場内に潜ませていた一ツ目鬼『キュクロプス』、上空に待機させていた鳥獣蛇尾『コカトリス』、気配を完全に遮断していた暗影凶刃「オー・ランタン』。それに加え炎の魔人『アモン』。
「さて、わざわざ敵地に乗り込んできて、たった二人でというわけではあるまい?仲間がいるなら手遅れにならないうちに呼んでおくんだな。それともよほど自分たちの力に自信があったのかな」
俺にしては洒落た意趣返しのつもりだったのだが、エリックと魔族の女はただ肩で息をするだけである。




