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魔王の力をお借りします!  作者: 働く猫の日常
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人は見た目で判断しません(6)

『セクシー・ウィッチ』


魔道具の応用だろう。赤や青などの明るい色に照らされた看板が夜の暗がりのなか鮮明に輝いている。とうとう俺はこの町を訪れた最大の理由にまでたどり着いたのだ。


「おい、貴様。夜は大人しく宿にいるようにエルフに言われなかったか」


マイラは呆れつつも一応義務を果たそうとでも言わんばかりの声色で俺の行動の真意を尋ねた。


「そんなことは知らん」


俺は屋敷のメイドエルフと別れた後は一度宿に戻り身支度を整え、夜も更けたのを見計らって再び町に繰り出したのだ。昼間にどんなシリアス展開があろうともそんなことで俺の信念は曲がったりしない。俺にはどうしてもここに行かなければならない理由がある。そう一人の男として。


「はあ、好きにすれば良いわ」


根負けしたと言わんばかりにマイラはため息をつく。


「いらっしゃいませ」


装飾が施された木製のドアを開けると、中には黒いスーツで身なりを整えた体格の良い男が接客用の笑顔で出迎えていた。


入り口では色とりどりのドレスに身を包んだ女性たちの写真が所狭しと並んでいた。薄暗い照明とこの特殊な状況がそうさせるのか、どの写真も蠱惑的に見える。


「お客様、ご指名はありますでしょうか」


男は口角を目いっぱい上げた笑顔を浮かべながら、写真を手で示した。ここで結論を急いではいけない。どんなときも冷静に。クールに行こうぜ。


「いや、実は初めてで」


こういうときは変に知ったかぶりをしないで、初めてであることとを正直に明かしたほうが良い。どうせバレるし、そうであるなら相手に全てを任したほうが得策である。今回の経験を活かして次回に生かせば良いんだ。


「さりげに常連になる意思を表明するなよ」


「左様でございますか。ではお好みのタイプをお聞かせいただけますでしょうか。この道10年のベテランである私自らが最高のパートナーをご紹介させていただきましょう!さあ、何なりと!」


「では」


コホンと俺は咳払いを死ながら、自分の考えをまとめた。俺が求める理想の存在とは。


「ヤンデレ巨乳でシスターコスのロリ娘でお願いします!」


ズザー。と俺の中でマイラが思いきりすっこけたような音が聞こえたが気のせいだろう。


「ヤンデレ巨乳でシスターコスのロリ娘と仰いましたか?」


黒スーツの男は自分が聞いた言葉が信じられないという様子で目をしばしばしながら聞き返す。


「見ろ、お前のオーダーが特殊過ぎてこの道10年のベテランが困り果てておるわ。なんじゃその身近な属性を全て詰め合わせたような人物像は。好きな食べ物を全て合体しても出来上がるのは悪夢のような味の食べものだという子供のころに得た教訓を活かせよ。カレーとパフェは合わんし、ヤンデレとシスターは共存できぬ、まして巨乳のロリ娘など存在せぬわ」


「いいや、いるね。空想上の存在だと思われていた空中都市アルカディアだって存在が確認されたんだ。ロリ巨乳だって実在しているはずだ。いいや、むしろ俺たちは既に発見したと言って良い。この店のラインナップに不可能などないのだ。見せてやる、ここが俺たちにとってのアルカディアだっていうことをな」


「どうでも良いが『俺たちの』と勝手に余の存在の含めて話をするのは止めてもらおうかの」


「失礼いたしました、お客様。てっきり普通の観光客とばかり思っていましたが、これはなかなかどうして。お客様、ツウでございますね」


黒スーツは先ほどまでの接客スマイルから打って変わって、わずかながら緊張感を感じさせた。わかってもらえたか。俺がどれだけ下調べをして今回のこの来訪に備えていたのかを。いるはずだ。この店ならば。


「承知いたしました。ではこちらでどうぞ。お客様がお望みのものはこちらにございます」


ああ、ついに俺は大人の階段をのぼるときが来たのだ。さよなら、チェリー。こんにちはプレイボーイ。


そして俺は案内されるままに進み、店の通路の奥に進み、そこから地下に向かう階段を下りた。そして石造りの廊下の突き当りにまで歩を進めた。道でも間違ったのかと思ったが、どうやらそうではなく。壁の一部を黒スーツが押すと、ガコン、という音と共に壁が左右に開き通路ができた。


「さあ、ご覧ください。こちらがお客様のお望みの景色です」



『グアアアアア』


『さあ、皆様!活きの良いウルフマンでございます!人語は理解しませんが、躾(しつけ)次第では奴隷としても家畜としても楽しめる一品!50万からスタートです!」


俺はシスターコスに身を包んだ愛らしい女性が待っているとばかりに思っていた。しかし、聞こえてきたのはおよそ人間のものとは思えない何種類もの咆哮だ。その中には狂気じみた人間の歓声も含まれている。


通ってきた道は石の壁で塞がれていた。黒スーツの男の姿も消えていた。会場を見渡すと、劇場のような作りの広い観客席をスーツやドレスに身を包んだ人が埋め尽くしていた。


非合法の場であると一目でわかった。その場にいるもの全てが種類や大きさの違いこそあれど全員が仮面で顔を隠していた。


「これはどう見ても」


「闇オークションの現場じゃな」



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