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魔王の力をお借りします!  作者: 働く猫の日常
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初めて竜を退治します。(6)


『Ⅰ、自身の身を魔王復活の依り代として捧げる』


『Ⅱ、Ⅰについて一切の口外を禁じる』


『Ⅲ、自害、もしくはそれに準ずる行動を禁止する』



 以上の3つが俺が魔王と交わした契約である。魔王は復活のときまで俺の中で眠り続けている。そのときまでに依り代である俺が死ねば、不完全な復活を迎えることとなる。魔王復活のために俺が裏切らないための制約なのだ。


 その恩恵として授けられたのが、この場所「真理図書館イデア・ライブラリー」である。そしてその制約を破れば奪われるものは「最愛の人の命」なのだ。


 『聖戦』終結のあの夜以来、エルザの心の臓には呪印が刻まれている。


 「エルザの命」を守るために結んだ契約、その担保が「エルザの命」だというのだから何とも皮肉な話である。


 制約Ⅰのために俺は決して未来を生きられず、制約Ⅱのため誰にも助けを求めることもできず、制約Ⅲのためこの身を投げることも叶わない。


 唯一の救いは俺が役目を果たしたときには、「エリックの愛するものに危害を加えない」のだそうだ。


 「この契約は制約であり、呪いでもある。我が主君と言えど決して破ることはできない。安心して努めを果たすが良い」


 マイラの忠告を受け、そろそろ目を覚まし現実への帰還を果たそうとする俺に、忘れてはならないと釘を刺す。


 お前は独りよがりな我欲によって世界を裏切ったのだ。それを忘れるな。まるでそう誰かに責められているような錯覚に襲われる。俺は間違っている。そんなことはわかっている。


 しかし、もう一度やり直す機会を与えられたとしても俺は同じ選択をする。その他大勢ではなく、最愛の1人を選ぶ。


 「じゃ、そろそろ俺を目覚めさせてくれよ。今回はお前が呼んだんだから許可がないと出られないだろう」


 ちなみにここには自分の意思でも来ることができる。その場合、入退場は自由なのだ。


 「う、うむ。そうじゃ、、、のう。もう話は終わったことじゃし、貴様を留めておく必要ももうない」


 なんか歯切れが悪いな。


 マイラは座っていた椅子から降り、俺に背を向けた。その手を後ろに組まれている。


 「それで」


 「それで?」


 「次はいつここに来るのじゃ?」


 「次か?そうだな、あらかた気になる本は読み尽くしたしな。また気になることができたときには来るかな」


 「それは明日か?」


 「いや、明日はさすがに」


 「むむ、そうか。いや、別に余は良いのだが貴様も最近勉強不足ではと思っておったのじゃ。もっと足を運んだほうが良いのではないか。うむ、週に4回は来たほうが良い。余はどうでも良いがの」


 なんか指をもじもじしだした。


 もしかしてこいつ寂しいのか。


 そういえば思い出した、こいつ俺が小さいころここで本を読み漁っていたときに、しつこいくらい話しかけてきたときがあったな。あまりにしつこいんで無視を決め込んで本を読んでいたら、いきなり目に涙を浮かべ、キレだした。


 ちなみにそのあと、こいつが機嫌を直すまでここに閉じ込められた。いじけたこいつのご機嫌を伺い聞きたくもない話を延々と聞かされてやっと解放された。


 そこから目を覚ますと三日間が経過しており、『エリック昏睡の3日間』と今でも話題に上がるほどである地母神の怒りを買っての呪いということで片付いたが、危うく衰弱死するところだった。


 「それとも、もう余と話すのは飽きたと申すのか?」


 うわ、なんかちょっと泣きそうなんだけど。さっきまでの邪悪な笑みはどこに行ったんだよ。普通にちょっと可哀そうに見えてきたぞ。


 まあ、でも仕方ないことなのか?生まれてこのかた魔王としか話したことがなく、その魔王とも今は話すこともできない。その心細さといったら俺には想像もつかない。俺も最近忙しくてここに来れなかったからな。


 「そうだな、これからは週に1回はここで学ばせてもらおうかな。またここでの知識が必要になるかも知れないからな」


 「そ、そうか!いや、余としてはそんな気軽に来てもらっては邪魔なのじゃがな、貴様がどうしてもというのなら特別に許してやらんこともない。そうかそうか良い心掛けじゃな!」


 急に饒舌になった。わかりやすいぐらいに表情が明るくなっている。マイラも身を粉にして協力してくれているからな、俺が話し相手になって気が紛れるのであれば、俺もやぶさかではない。


 ふんふんふーん♪


 鼻歌まで聞こえてきた。いや、本当に先ほどまでの悪役キャラが崩壊しだしている。いいのかこれで?なんだかいずれ分かり合える気がしてきたぞ。


 「それでは、退館をここに許可する。週に1回じゃな?約束じゃぞ、絶対じゃぞ!?」


 退館の許可を得たことで薄れゆく意識の中で最後まで念を押す、マイラの声が聞こえた。


 さて、戻ったらまずジークに一発お見舞いするか。


 俺はそう心に決めていた。





 

 



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