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 結果からいえば、美女がついてきたのは勇者にとって有り難かった。美女の部屋を出てすぐの螺旋階段で再度魔物に挟み撃ちにされた勇者だったが、美女が風の高位魔法を行使し一瞬で魔物を蹴散らしたからだ。

美しい上に強いなど素敵だ、とますます強まる勇者からの熱い視線を完全無視することでかわす美女の足取りはしっかりしていて、目的地への道筋はきちんと理解できているらしい。きっと正面を見据える美女の目の強さには、凛という言葉がよく似合う。

「道が頭に入っているんですね」

 勇者は美女に話しかけた。美女とは対照的に、勇者はさっぱり今いる場所が分からなかった。元々中の構造が分かっていないのもあるが、今から先程までいた部屋に戻れと言われても無理だ。どころか五分ほど前にいたところですら戻れる気がしない。迷宮のような経路は勇者の頭には全く頭に入ってきてくれず、淀みなく歩き続ける美女には羨望の眼差しを向けるしかない。

「一度攻め込んだからな」

 美女は言葉少なにそう言った。一度行けば誰も迷う訳がないという意図で放たれた言葉だとしたら、勇者は美女の想定する『誰でも』から外れてしまうようだ。勇者は少し落ち込んだ。

 そこで、美女の言葉を反芻した勇者は、ん? と思った。

ということは目前の美女は女の身でありながら魔王城に攻撃を仕掛けたということになる。そしてそのまま捕虜として捕らえられたのか。何と羨ま、いやいや、恐ろしい。

ますます魔王が許せない、と勇者は決意を固くして美女の後をついて歩く。

歩きながらやはり道を覚えられないので、代わりに、と勇者は思考を再開した。

しかし、魔王に仕掛けて返り討ちにあう人間の話は魔物自体が人間達の意欲を削ごうと率先して情報を流しているので誰がいつ仕掛けていったかという情報はかなり広まっているのだが、その中に女が仕掛けていったという情報はなかったような。

「あ、もしかして噂になった誰かの同行者として美女は存在していたのかもしれませんね! うう、美女がパーティにいるとか羨まし、あ、今は私が美女と運命共同体間近なんでした。やだ、もし一緒に旅とかしてて一銭とか超えてしまうかもしれません……いや、だめです、こんなところでそんな……!」

「お前気づいてなさそうだから敢えて言うけど、口から欲望全部だだ漏れだからな? 本当気持ち悪いんだけど」

 美女は嫌悪感をたっぷり込めた言葉を勇者に吐いたが、やはり勇者はそれを聞いてやいなかった。

 そうして更に歩くこと少し。美女が大きな扉を開き、そして魔王との対面となった。

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