5 ひとばんの同居人《どうきょにん》
ビーフカレーとチキンカレーも作ってみたけれど、雪路はくびをよこにふった。
「ぬぬ。これも、これもちがう。でも、牛よりトリのほうがまだ近いか? にているがちがう」
「えええっ?? ブタでも牛でもトリでもないの?」
ブタ、牛、トリ以外の肉?
カレーを再現するなんてカンタンだと思ったのに……。
「だとしたらジビエか? りょうしが知り合いにいたならば、ご先祖さまがジビエを使ってもおかしくはない。ニワトリに近い味のジビエ。スズメだと法律で使えないし……、キジあたりだろうか。しかしニワトリと味がにているかどうかは」
父さんが作ったカレーをほおぼりながらうなる。
たしかに、ひとくちにトリと言っても、たくさんいる。
スーパーにならばない肉のどれかなのかな?
「……あのカレーは作れないのか?」
雪路がかなしそうにうつむいてしまった。
元気づけるつもりなんだろうな。母さんがやけに明るい声で手を叩く。
「大丈夫よ雪路! わたしの友だちにかけあってみる。友だちの旦那さんがジビエ料理店をやっているのよ。シカ肉やイノシシ肉なら、分けてもらえるかもしれない」
「てことは、今日作れないね。カレー作りは明日でもいい、雪路?」
「むぅ……仕方あるまい」
雪路は私の後ろにくっついてちゃっかり家に上がりこんできた。
「え、あれ? 山に帰らないの?」
「ここで待っていたほうがよかろう?」
まんぞくのいくカレーができるまでいすわるつもりだ。
しょーがないな。ゼイタクなお客さまのためにベッドを作ってしんぜよう。
店のうらにつんでいたやさいのダンボールに、使いふるしのバスタオル二枚をしきつめる。
キツネなんだし、これで良いでしょ。
「はい、雪路。ベッド……じゃわかんないか。ねどこを作ったからこれに……」
手作りベッドをはこぶと、雪路は私のふとんで丸くなっていた。
しかもどまん中。
「ちょっと待ったーーーー!! 雪路、それは私のふとん! あんたはこれを使いなさい!」
「いやだ。こっちのほうがやわらかくてあたたかくてねごこちがいい。マコトがそれにねればいいのだ!」
「人間がこんな小さいはこでねられるわけないでしょ! わがまま言わないでよ! ふとんがないと私がねむれないじゃない! どうせねどこを取るなら父さんか母さんのを取りなさい!」
「すぴー」
「ねたフリするなー!」
あまりにケンカがヒートアップしすぎて、母さんが部屋のとびらを開けた。
「マコト。夜なんだから大きな声を出すとご近所めいわくよー」
「私悪くないもん!!!!」
「いいや、悪い! わしにそんな小さな箱でねれというのが悪いのだ!」
「聞こえなかったの? し、ず、か、に、し、な、さ、い」
せなかに、もえるようないかりのオーラを感じる。
母さんはふだんにこやかなぶん、怒るとチョーこわい。
雪路には、まくら元で丸くなることでなんとかなっとくしてもらった。
…………キツネとケンカして怒られる中学生なんて、世界中探しても私だけじゃない?




