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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
きつねの章《しょう》
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6/30

6 友人《ゆうじん》に会《あ》いたかっただけ

 私《わたし》はふとんをかぶったままスマホをとる。


 ジビエ 肉《にく》 明治《めいじ》 思《おも》いつく単語《たんご》をうって、手当《てあ》たりしだい検索《けんさく》にかける。


 いのしし、しか、くま、かも、しゃも



「……ううーん。ジビエってイノシシとシカだけじゃないのかぁ……」


 肉をきんしされた時代《じだい》でも、みんなひそかに肉《にく》を食《た》べていた。


 さくら、もみじ、ぼたんなどなどべつの名《な》をつけて。


 法《ほう》のぬけ道《みち》をさがす昔《むかし》の日本人《にほんじん》、ガッツある。


 雪路《ゆきじ》は私《わたし》の背《せ》にのって、スマホをのぞきこんでくる。

 もふもふのシッポとヒゲが当《あ》たってくすぐったい。



「マコトよ。おぬしのもっているその板《いた》は何《なん》なのだ? ここに来《く》るとちゅう、いろんな人間《にんげん》がおなじようなものをもっていた」


「これ? スマホ……スマートフォンっていって、とおくにいる人《ひと》と会話《かいわ》ができるものだよ。あと、インターネットっていうのにつないで、いろんなじょうほうをえられる」


「おんみょうじゅつか?」


「そんなすごいなものじゃないよ。だれでも持《も》っているもの」


「いいや、たいそうなしろものだ。前《まえ》にきたときには、そのようなものはなかった。それに、なぜみな、その板《いた》を見《み》ている?」


「うーん、明治《めいじ》なら、そりゃないよね。電気《でんき》すらないもの」


「電気《でんき》というのはなんだ?」


「家《いえ》の中《なか》、あと夜《よる》だけど道《みち》も明《あか》るかったでしょ? あのあかりのことだよ。はつでんしょで作《つく》られた電気《でんき》がとどけられて、町《まち》が明《あか》るい」


「ううむ、いまの人間《にんげん》はみながおかしなじゅつをおぼえたのか」


「だから、トクベツなじゅつじゃないんだよー」


「いや、おかしいぞ。しかも、馬《うま》よりもはやい鉄《てつ》のはこがまちをはしりまわっている」


「それは車っていってねー」



 私《わたし》は今《いま》の日本《にほん》に生《う》まれたから当《あ》たり前《まえ》と思《おも》っているけど、雪路《ゆきじ》から見《み》たらお(・)ん(・)み(・)ょ(・)う(・)じ(・)ゅ(・)つ(・)よりすごいもの。


 森《もり》だった所《ところ》には電車《でんしゃ》や車《くるま》が走《はし》ってるし、たてものはコンクリートせいだし。

 夜《よる》だって明《あか》るい。


 私《わたし》も私《わたし》で、ご先祖《せんぞ》さまと雪路《ゆきじ》があやかしとたたかっていた時代《じだい》のそうぞうがつかない。


 人《ひと》をおそうあやかしなんて見《み》かけないし、お(・)ん(・)み(・)ょ(・)う(・)じ(・)もサ(・)ム(・)ラ(・)イ(・)もいない。 


 私《わたし》は天井《てんじょう》をみあげる。


「ねえ雪路《ゆきじ》。雪路《ゆきじ》はどうして草凪《くさなぎ》が……私《わたし》たちがここにいるとわかったの? 最後《さいご》に会《あ》ってから百年《ひゃくねん》はたっているけど」

「ニオイをたどった。わしは少《すこ》しのあいだ山《やま》でねむっていた。目《め》をさまして、草凪《くさなぎ》に会《あ》いたいと思《おも》った。時代《じだい》がうつろっても、おぬしのニオイはかわらん。とくべつなニオイはわかる。草凪《くさなぎ》は、ほかの人《ひと》とちがうニオイがする」

「…………そう」


 ああ、雪路《ゆきじ》はただ友人《ゆうじん》に会《あ》いたかっただけなんだ。


 友人《ゆうじん》が作《つく》ってくれた料理《りょうり》を「昨日《きのう》のあれおいしかったよ。また作《つく》ってよ」と言《い》っているだけなのだ。


 あやかしと人間《にんげん》では、生《い》きる時間《じかん》がちがいすぎた。


 私《わたし》と父《とう》さんは友人《ゆうじん》の草凪《くさなぎ》さんの子孫《しそん》だけど、草凪《くさなぎ》さんじゃない。


 大切《たいせつ》な友人《ゆうじん》の草凪《くさなぎ》ではないことに、きっと雪路《ゆきじ》は気《き》づいていない。

 なんだかちょっと目《め》のおくがあつい。


「あなたの友人《ゆうじん》は、もうこの世《よ》にいないんだよ」なんて、本当《ほんとう》のことを言《い》えないよ。

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