26 再現(さいげん)思(おも)い出(で)のおつゆ!
母さんにわたされた電子しょせきで、ユカリちゃんの食べたものをさがす。
「うーんと、とうふ、つぶす、みそ汁、……………あ! これかも! すりながしとうふ! とうふをすりつぶしてこねておみそ汁に入れるってなってるもの!」
「どれどれ」
父さんもスマホをのぞきこんだ。レシピをじっと読んで、うなずく。
「ふんふん。材料と大まかな手順しか書いてないのか。これくらいなら目分量でなんとかなる。やってみよう」
父さんは《《くず》》粉を小さじですくい、つぶしたとうふにすこしずつまぜる。たまごの白身も入れて、ねっていく。
みそ汁のだしについてはないから、かつおぶしと昆布でだしをとった具なしの汁をつくる。
ほどよくあたためたみそ汁に、スプーンですくったとうふタネを落として、とうふが固まったらみそをといて『すりながしとうふ』のできあがりだ。
「どうだ、ユカリ。食べてみてくれ」
ユカリちゃんはお面をずらして、両手でうつわを持って、すりながしとうふを見つめた。
シリコンスプーンを持たせてあげると、スプーンでゆっくりとうふをすくいあげて、口にはこぶ。
ぱっとかおがかがやいた。
「…………おいしい。これだよ、おばあちゃんがくれたおつゆ! くさなぎとたべたおつゆ!」
「やったぁ!!!!」
私は父さんと母さんと、ハイタッチした。
ユカリちゃんはなんどもかみしめて、じっくりすりながしとうふを味わっている。
せっかくつくったから、自分たちでもすりながしとうふを食べてみる。
とうふのぷるぷる感の中に、ほんのりもっちり。ふしぎなかみごたえとのどごしだ。
とうふのみそ汁とにているようでぜんぜんちがう。
「おもしろいね、これ。とうふのみそ汁って、こんな食べ方あんまりしないじゃない」
「現代よりも食べもののしゅるいは少なかったからこそ、あきないようにいろんなくみあわせを考えていたんじゃないか? うん、我ながらうまい」
「おいしいわ! うちのメニューに取り入れてもいいわねー」
足元で、雪路がこうぎのこえをあげる。
「おぬしたちだけで楽しむでない! わしにもくれ!」
「わがはいもたべる!」
「もー! 雪路、小町! 今もりつけるから、あばれないの!」
ペット用のごはん皿にもりつけると、雪路がすぐにかおをつっこむ。
ねこじたな小町のぶんは、ぬるくしてある。
ちょっとニオイをかいでなめてから、お口をムチャムチャいわせながら味わっている。
「うまい! カエルカレーにはかなわんが、これもいいものだ」
「わがはいも、すきなのだ」
「そりゃあよかった。料理人として、よろこんでもらえるのが何よりのよろこびだ」
父さんてば、うれしさのあまりニヤニヤしちゃってる。
「ねえねえ! これお店のメニューにいれていいと思うよ。定食のおみそ汁、プラス五十円ですりながしとうふにできるとかどう?」
「いいかもしれないな」
そんなわけで、ユカリちゃんが食べたかった思い出の味は、くさなぎの新メニューになった。
※すりながしとうふ
豆腐百珍にじっさいにのっているレシピ。




