22 ユカリちゃんとおつゆの歴史《れきし》
よくあさ。
ぞうすいを食べつつ、ユカリちゃんにおつゆのことをきいてみる。
「ねえユカリちゃん。おつゆを食べたおうちってどこにあったかわかる? 何年くらい前かおぼえてる?」
ユカリちゃんはレンゲをくわえて、きおくをさがすようにぼんやり天井をみつめた。
「んと、くさなぎが、ざしきわらしたいせつにするといいことあるっていった。そしたら、おばあちゃんがおつゆをつくってくれた。くさなぎは、みそのおつゆだっておしえてくれた。おやどのばしょ、わからない。あちこち、くさなぎさがしてたら、おねえちゃんとあった」
「そっか」
父さんが家系図をしらべたら、草凪家最後のおんみょうじは、清継さん。
明治十五年に亡くなっているんだって。
ってことは、ユカリちゃんが食べたみそ汁は、それよりも前だ。
父さんが今聞いたことをノートに書き出す。
「雪路のときにしらべたことが役に立ったな。明治はじめのころなら、肉はあまりなじみがない。とん汁や肉のつみれ汁のせんはうすい」
母さんが日本食の歴史本をひろげる。
「鎌倉時代には、みそ汁の大元になる汁ものがたんじょうして、明治時代には日本のほとんどの土地にふきゅうしているわ。お吸いものもふくめると、かなりのしゅるいになるわね」
「明治のはじめなら、日本のどこにでもみそ汁はあったってこと?」
「そうよ」
なら、おやどがあった場所の歴史をしらべたら、そこで昔食べられていたみそ汁がわかる。
でもユカリちゃんはやどがあった場所をおぼえていない。
「わしは草凪とそのやどに行ったから覚えているぞ。江戸のやどだ。このあたりから何日もかけて、やどまで歩いたのだ。草凪は足がいたいと泣きごとを言っておった」
いまみたいにまっ平らにほそうされてないんだから、きっとデコボコ。
山道歩くのってつらいよねぇ。
それを何日も。
車や電車があるのってしあわせだ。
「江戸ってことは、東京だ。雪路、くわしい場所わかる? そこに行って、やどのことおぼえている人をさがしたらユカリちゃんの食べたみそ汁のこともわかるかもしれない」
「よかろう」
そんなわけで、私は雪路をつれて東京に向かった。




