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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
ざしきわらしの章《しょう》
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23/30

21 にぎやかな夜《よる》

 具(ぐ)が分(わ)からないまま作(つく)っても、ユカリちゃんがさがしてる味(あじ)にはならない。

 だから思(おも)い出(で)の料理(りょうり)は日(ひ)を改(あらた)めることになった。


「ユカリちゃん。今日(きょう)はごはんたべよ。うちのごはんはどれもおいしいんだよ」

「ユカリも、たべていいの?」

「いいぞー! はらいっぱい食(く)えよ」


 ユカリちゃんが食(た)べやすいよう子(こ)ども用(よう)のうつわにもりつける。

 今日(きょう)の夕(ゆう)ごはんは雪路(ゆきじ)のリクエスト、カレーだ。

 三日(みっか)にいちどはリクエストしてくる。

 ユカリちゃんのぶんは甘口(あまくち)カレー。

 シリコンのスプーンをわたすと、不安(ふあん)そうに私(わたし)を見(み)てくる。


「こうやって食(た)べるんだよ」


 スプーンで口(くち)にはこんでおてほんを見(み)せると、ユカリちゃんはおっかなびっくりカレーを食(た)べる。


「おいひい」

「そうでしょー。うちのじまんの料理(りょうり)だよ」


 あっという間(ま)にお皿(さら)がきれいになった。


 雪路(ゆきじ)と小町(こまち)もあしもとでがっついている。


「うむうむ、うまいのう」

「よきかおりだ。わがはいのごはん一生(いっしょう)これでいいのだ」


 雪路(ゆきじ)はカレー。小町(こまち)はごはんにカツオブシをまぶしたね(・)こ(・)ま(・)ん(・)ま(・)。

 

 

 夕(ゆう)ごはんを食(た)べて、おフロにむかう。

 


「じゃあ、ユカリちゃん。お風呂(ふろ)入(はい)ってねよっか」

「おふろ?」


 ユカリちゃんは不安(ふあん)そうだ。


「あ、もしかしてざしきわらしって、着物(きもの)もからだの一部(いちぶ)でぬげないのかな?」

「ざしきわらしをフロに入れようなんて言(い)い出(だ)した人間(にんげん)マコトくらいだ」


 雪路(ゆきじ)がそんなことをいう。


「おふろ、はいったことないから、わからない」

「なら入(はい)ろ。ね!」


 私(わたし)がようちえんのころ着(き)ていたパジャマがのこってたから、ユカリちゃんのきがえにしよう。


「ついでに雪路(ゆきじ)と小町(こまち)も洗(あら)っちゃおう」

「いやだ。わがはいはぬれるのがキライだ!」

「だーめ。洗(あら)わないと汚(きたな)いでしょ」

「わしは汚(きたな)くない! ぬわーーー!」


「汚(きたな)いでしょ! 口のまわりがカレー色(いろ)になったまんまだもん」


 たらいを出(だ)して、お湯(ゆ)をはって即席(そくせき)ペットぶろを用意(ようい)。


「ほら、入(はい)って」

「くっ……!」


 雪路(ゆきじ)が、なさけないかおで湯(ゆ)にちゃぷんとつかる。

 小町(こまち)は背中(せなか)を丸(まる)めて目(め)をほそめた。


「あったかいのう。きもちええのう」


 はい、かわいい。ものすごくかわいい。


「これが、おフロ」

「へへへ。いいもんでしょー?」


 ユカリちゃんもおふろになれて、きもちよさそうに手足(てあし)をのばしている。

 背中(せなか)を流(なが)してかみも洗(あら)って、さっぱりした。


 オフロからあがったらパジャマをきせる。


 ユカリちゃんはふわぁとあくびをした。

 雪路(ゆきじ)と小町(こまち)もしっかりタオルドライしてからドライヤーの風(かぜ)をあてると、ふっかふかになった。


 雪路(ゆきじ)の毛並(けなみ)ってもとはこんなふうだったのか。いつもよりふかふかだ。


 私(わたし)のふとんのよこに、ようちえんで使(つか)っていたおひるねふとんをしいてユカリちゃんに手まねきする。


「ほら。今日(きょう)からこれがユカリちゃんのおふとん」

「おふとん、いいの?」

「うん。使(つか)って。このおふとんは小(ちい)さくて、私(わたし)じゃもう使(つか)えないから」


 ユカリちゃんはおずおずと、ふとんにもぐりこんだ。


「なっとくいかん! わしと小町(こまち)にはダンボとかいうはこに入(はい)れと言(い)うのに、なぜユカリにはふとんをやるのだ?」

「だって雪路(ゆきじ)と小町(こまち)は箱(はこ)でもかまわないでしょ」

「ひいきするな! わがはいだってわがはい用(よう)のおふとんがほしい!」

「ぜいたくいわないの! ほら、ユカリちゃん。ねるよー」


 


「ふふふっ」


 ユカリちゃんは出会(であ)ってからはじめて笑(わら)った。

 とてもにぎやかで楽(たの)しい夜(よる)だった。



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