21 にぎやかな夜《よる》
具が分からないまま作っても、ユカリちゃんがさがしてる味にはならない。
だから思い出の料理は日を改めることになった。
「ユカリちゃん。今日はごはんたべよ。うちのごはんはどれもおいしいんだよ」
「ユカリも、たべていいの?」
「いいぞー! はらいっぱい食えよ」
ユカリちゃんが食べやすいよう子ども用のうつわにもりつける。
今日の夕ごはんは雪路のリクエスト、カレーだ。
三日にいちどはリクエストしてくる。
ユカリちゃんのぶんは甘口カレー。
シリコンのスプーンをわたすと、不安そうに私を見てくる。
「こうやって食べるんだよ」
スプーンで口にはこんでおてほんを見せると、ユカリちゃんはおっかなびっくりカレーを食べる。
「おいひい」
「そうでしょー。うちのじまんの料理だよ」
あっという間にお皿がきれいになった。
雪路と小町もあしもとでがっついている。
「うむうむ、うまいのう」
「よきかおりだ。わがはいのごはん一生これでいいのだ」
雪路はカレー。小町はごはんにカツオブシをまぶしたねこまんま。
夕ごはんを食べて、おフロにむかう。
「じゃあ、ユカリちゃん。お風呂入ってねよっか」
「おふろ?」
ユカリちゃんは不安そうだ。
「あ、もしかしてざしきわらしって、着物もからだの一部でぬげないのかな?」
「ざしきわらしをフロに入れようなんて言い出した人間マコトくらいだ」
雪路がそんなことをいう。
「おふろ、はいったことないから、わからない」
「なら入ろ。ね!」
私がようちえんのころ着ていたパジャマがのこってたから、ユカリちゃんのきがえにしよう。
「ついでに雪路と小町も洗っちゃおう」
「いやだ。わがはいはぬれるのがキライだ!」
「だーめ。洗わないと汚いでしょ」
「わしは汚くない! ぬわーーー!」
「汚いでしょ! 口のまわりがカレー色になったまんまだもん」
たらいを出して、お湯をはって即席ペットぶろを用意。
「ほら、入って」
「くっ……!」
雪路が、なさけないかおで湯にちゃぷんとつかる。
小町は背中を丸めて目をほそめた。
「あったかいのう。きもちええのう」
はい、かわいい。ものすごくかわいい。
「これが、おフロ」
「へへへ。いいもんでしょー?」
ユカリちゃんもおふろになれて、きもちよさそうに手足をのばしている。
背中を流してかみも洗って、さっぱりした。
オフロからあがったらパジャマをきせる。
ユカリちゃんはふわぁとあくびをした。
雪路と小町もしっかりタオルドライしてからドライヤーの風をあてると、ふっかふかになった。
雪路の毛並ってもとはこんなふうだったのか。いつもよりふかふかだ。
私のふとんのよこに、ようちえんで使っていたおひるねふとんをしいてユカリちゃんに手まねきする。
「ほら。今日からこれがユカリちゃんのおふとん」
「おふとん、いいの?」
「うん。使って。このおふとんは小さくて、私じゃもう使えないから」
ユカリちゃんはおずおずと、ふとんにもぐりこんだ。
「なっとくいかん! わしと小町にはダンボとかいうはこに入れと言うのに、なぜユカリにはふとんをやるのだ?」
「だって雪路と小町は箱でもかまわないでしょ」
「ひいきするな! わがはいだってわがはい用のおふとんがほしい!」
「ぜいたくいわないの! ほら、ユカリちゃん。ねるよー」
「ふふふっ」
ユカリちゃんは出会ってからはじめて笑った。
とてもにぎやかで楽しい夜だった。




