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【電書化】元侯爵令嬢の辺境使用人ライフ  作者: ユタニ


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39/52

39.深い緑色は、、、


「サイズを測って、着れる物を全て出してくれ」


ディランの執務室にて、国王からの呼び出しに着ていくドレスがないと気付いた、ほんの1時間後、シーラは今、城下のブティックのふかふかのソファに腰掛けている。


1時間で、ディランは店を貸切にしたので、今現在、このブティックにはオーナーとデザイナーとお針子達の他はシーラとディランしかいない。


さすが、領主様、、、、。


何だか、小説みたいな事になっているわ、、、。


なんて感心している側から、シーラはお針子達によって、別室へと連れていかれて、サイズをくまなく測られた。



「特別な方へのドレスでしたら、オーダーメイドがお勧めですが、、、」

隣の部屋からオーナーの猫撫で声が聞こえてくる。オーナーはディランが辺境伯その人であると知っているようだ。


うわお、オーダーメイド、高いわよ。そして、そんな時間はないわよ。


シーラとて、侯爵令嬢で、王子の婚約者だったのだ、オーダーメイドのドレスくらいなら実家にある。もう絶対に着れないけど。

なので、それがとても高価で、手間のかかる事は十分に知っている。


「時間がないんだ、明日までにドレスが1着は要る。まずはそれを見繕いたい。サイズは記録しておいてくれ、オーダーメイドについては後日また相談する」


えっ?

驚くシーラに、お針子達がにっこりする。


「こんなにお綺麗な方ですもの、もちろん、ドレスもオーダーメイドがよろしいですよ」

「ええ、お肌もとても綺麗です。手は少し荒れておりますね、後でクリームも塗りましょうね」

「それにしても、本当に細くていらっしゃる」


にこにこしながら、手際よくサイズが測られる。



オーダーメイドは後日相談って、どういう事かしら、、、、オーナーに合わせただけかしら?


疑問に思うシーラだが、すぐにサイズ計測は終わり、ディランの居る部屋へと戻ると、そこには圧巻のドレス達が並べられていた。



「わぁ、、、」

因みにこれは、歓喜の声ではない。

ドレスは大嫌いなので、ちょっとげんなりするシーラだ。


「そんな顔をするな、好みはあるか?」

「ないです」

「分かった、着やすくて、露出の少ない物を」

オーナーとデザイナーが直ぐ様、数着持って来てくれる。


「ふむ、、」

ディランは、持って来られたドレスをシーラにあてていく。その様子は意外にも手慣れていた。


シーラは思わず、「慣れておられますね」と少し険のある声で言ってしまった。


あら?

言ってしまってから、自分のその声の響きに驚くシーラだ。


「母上の買い物によく付き合わされていたからな。それにこれでも貴族だ、かなり上位の。なんで怒ってるんだ?しょうがないだろう、ドレスは必要だ」

ディランは一旦むすっとしたが、その後は真剣な表情でシーラのドレスを選んでくれる。


顔映りや、肌色との相性を見ているのだろう、ディランの深緑色の強い眼差しが、自分の肌や髪に注がれているのが分かる。

シーラは少し、動悸が速くなるのを感じた。


「、、、とりあえず、これと、これ。あと、これを試着してみろ」

「あ、はい」


押し付けられた3着を持って、シーラは試着室内へと入る。3着は深い緑のビロードのものと、紺色のエンパイア型のもの、深紅に銀糸の刺繍が入ったやはりビロードのものだ。


試着してみると、3着ともびっくりするくらい着やすく、楽だった。

侯爵家で着ていた、とにかくきついドレスとは大違いだ。


深い緑のドレスを纏って、ディランの待つ部屋へと戻る。

シーラを見て、ディランは息を呑んだ。


「どうだ?流行りの最先端とはいかないだろうが、、、」

「はい、とても着やすいです。きつくないし、苦しくないです」

「一体、今まで、どんなドレスを着ていたんだ、、、、」

「出来るだけ細いものを、と」

「そうか、、、、サイズは問題ないな」


「サイズは少し詰めた方がよろしいかと」

お針子が、シーラの胴回りを確認して言う。


「あんまりきつくしないでください」

シーラは慌てて注文をつけた。

「畏まりました」

お針子が、にっこりする。


「明日までに直せるか?」

「させていただきます」

「なら、3着とも貰おう」

「えっ?領主様?」

「何だ」

「そんなに要りませんよ」

「俺が買いたいんだ」

「いやいや!」

シーラは慌てて、ぐいぐいとディランを壁際へと引っ張って行き、小声で抗議した。


「1着で十分ですよ!陛下と会う時だけ着るんです!」

「シーラ、無理を言って貸切にして、明日までに直させるんだ、これくらいは買う必要がある」

「でも!」

「支払いなら心配しなくていい。これは完全に必要経費だ」

ディランの言葉にはっとなるシーラ。

そうだ、お会計だ。陛下に会うのにドレスがない事で頭が一杯で、支払いまで考えていなかった。

ドレスはとても高い。シーラのお給料では何年かかっても買えないものだ。


「お金、、、、」

「シーラ、必要経費だと言ったぞ、あなたは辺境伯夫人として行くんだ。使用人としてじゃない。ここは俺が出す」

「でも、、、」

「それとも、気に入らないか?」

「、、、いえ、どれも素敵でした、きつくなかったし」

そう、どれも素敵だった。何度も言うが、きつくなかったし。久しぶりに着たせいもあるだろう、少し、テンションは上がった。


「なら、問題ないな」

ディランは優しく笑うと、シーラの頭をポンポンと叩いた。


「!」

何、いまの、ポンポン!


真っ赤になるシーラはお針子達により、サイズ直しの為に再び試着室へと戻らされ、3着分の直しを調整した。


ドレスの後は、同じブティックでドレスに合わせた靴を買い、城に戻ってからは、大奥様が残していったアクセサリーの中からドレスに合うイヤリングがディランによって見繕われた。

「ドレス、ない」と告白してからの本日のディランは、頼れる年上の男性で、調子の狂うシーラだ。


怒濤の1日が終わり、部屋で明日からの王都行きに向けて荷造りしながら、ふと、イヤリングを手に取る。

イヤリングは、深い色合いのエメラルドが入ったもので、なかなか美しい。

深緑色のドレスに合わせて選んでくれたようだ。

王都では、あのドレスを着る事になるんだな、と思う。


ドレスもイヤリングも、ディランの瞳の色で、これではまるで、溺愛されているようではないか、と恥ずかしくなるのは、シーラが都に着いてからの話だ。



翌日、直されたばかりのドレスと共に、シーラは旅の装いで馬車へと乗り、王都を目指した。






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― 新着の感想 ―
お母様•••きちんと、鍛えてたんですね!・:*+.\(( °ω° ))/.:+
[一言] ここまで来るのに領主殿が頑張ったと言うより、むしろ作者さんが頑張ったと言いたい。
[一言] おおお!やっと頼れる男を見せる事ができましたー! ディラン本人は無自覚?(笑)
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