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将来有望冒険者ケンスケっ!!  作者: 大石次郎


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負の奇跡 前編

冥王信奉者レイミは冷気耐性の腕輪に護られながら、氷漬けの古代の玉座に腰掛けて眠たげな人ならば13歳程度少女の姿に育った氷の冥翼王の元に歩み寄った。


「最後に一仕事だ」


「・・地上のヤツらは世話が焼ける」


億劫そうな氷の冥翼王。


受肉(じゅにく)してから殺されるとそれなりに苦痛なのだが?」


「冥府に面白味等あるのか? 新鮮に愉しめたろう」


「随分だな、レイミ」


氷の冥翼王は笑ってレイミを見た。それだけで猛烈な氷の呪いに晒され、冷気耐性の腕輪に負荷を掛けられるレイミ。


「冥王様を信仰していないのだろう? ニーベルングども等今更復活させてなんになる? 完全な自分達でも見たいのか? 嫌と言う程負け続けたヤツらは自分達では救われないのようだ、滑稽である」


「どんな陳腐な話にも結末がある。お前もお前の結末に至るだけだ」


「ハハッ、辛辣! 我は、傷付いたぞ? ヨズーの所にゆこう、ヤツはレイミより面白い、面白味がある。レイミは、そう」


氷の冥翼王は呪いの視線をやめ、氷漬けの古代の玉座から立ち上がった。


「我等がよく知る、冥府の空虚な死の風景によく似ている。そこでは皆、ありもしない代償を求める。永遠に。つまり冥王様は慈悲深い御方ということだ。わかるか? レイミよ」


「・・鳥が、知った風な口を聞くな」


氷の冥翼王は翼を拡げた拍子に起こした冷気の衝撃でレイミの左腕の冷気耐性の腕輪を砕き、左頬を凍傷で傷付け、左耳を氷結させて粉砕した。


「ふん」


鼻で嗤い、氷の冥翼王は氷漬けの遺跡であった玉座の間から飛び去っていった。


「代償は、ある。あって然るべきなのだっ」


苦々しくレイミは呟いた。



俺達がカグチ火山で太古火の矛を手に入れてから2日後の早朝、木の冥翼王が無数の植物と鳥の中間のような眷属を引き連れて州都リーラティアラへと進攻を開始!

合わせて、もう隠しもせず州南西部のリーラ公国時代の砦跡地下にあったニーベルング遺跡から氷属性を付与された無数のアンデッド軍が溢れだした!

州都はどうにか配備が間に合った周辺州の州軍連合と国軍が迎え打ち、今回の騒動の冥王信奉者閥の拠点である砦跡は囲んでいた周辺州ギルド連合とその他の国内ギルド選抜達が対応する。

消耗の激しいリーラ州の州軍と俺達州の冒険者ギルドメンバー、特に各遊撃班は補助に回っていた。

砦戦はどのタイミングで氷の冥翼王が出てくるかは不明だったが、基本的にはオパル石炭基地の時と同じ戦術だ。

最初は魔工ゴーレムで押す!

カナヒコ達が操ってる改良型の飛竜型魔工ゴーレム軍で氷のアンデッド群を一掃してゆく。地上の討ち漏らしの氷のアンデッド群はギルド連合で狩る。

この段階では俺は、火の加護を与えるファイアブレッシングの魔法の広域付与を維持する部隊に配属され、充填タイプの火属性の杖を持ってギルド連合の後方に配置されてジリジリ前進していた。

俺の隊の隊長はユッチェさんで、久し振りに見た気がするディンが、


「くぅ~っっ、前衛どうなってるか全然わからないんだがっ?!」


と、やきもきしながら護衛に付いていた。俺は「規模があんだから落ち着けよ」と言ってやりたいが、昨日覚えたばかりのファイアブレッシングをいきなり多数で連動して広域で維持する! というムチャ振りに応えるのに必死でそれどころじゃなかった。


「ふぅ・・遠くねーか?」


俺は小声でボヤきながら1歩1歩、他の隊員と共にギルド連合の後についていった。



長いように感じたが、時間としては20分足らずで溢れ出た氷のアンデッド群を殲滅し、砦跡の完全包囲に成功した。

ゴーレム使い達は、損耗し屋内で使い難い飛竜型から人型のゴーレムに手駒を切り替え、凍り付いた砦内に突入させた。

合わせて小型の使い魔を操れる者達が内部の観測の為に大量に使い魔を潜入させた。これは氷属性の方が生存率が高いのでアマネさんはこの隊のどれかに入っているはずだ。

ゴーレム群によるルート取りと、使い魔達の観測が終わるまでは生身のギルドメンバー達は突入しない。

俺はこの待機時間にバフ維持から回復隊に移動になって、あちこちに設けられた即席治療所の1つに入り回復系の杖を使って治療を始めたが混乱の中、知り合いの1人もいない治療所に配属されちまってかなり戸惑っていた。


「杖の交換お願いします」「あ、応急手当て済んでないんでまだヒールできないです」「すいません、このポーションアレルギーみたいで、取り換えを」


俺はかつてない程慎重に丁寧語であれこれ頼みながら治療に当たっていた。まだ砦跡に1ミリも入ってもいないが既に疲労がピークだっ!

まずユッチェさんと普通にはぐれてしまったから、俺のこの次の段の配置を誰の指示に従えばいいかわからんっ。

段取りでは負傷者が多い場合は外部で治療に専念、でない場合は砦跡1層の回復拠点設営隊に合流となっていたのだが、護衛のはずのディンもいつの間にかいないし、参ったな・・



ルート取りと観測が済むと慌ただしい中、一瞬擦れ違った数日ぶりに見たゼンミン3係長に「ケンスケ君は1層までね!」とだけ念を押されたが、


俺は1層で何をするのか??


すぐ解散になった仮設治療所を出て砦跡内の入り口付近で、剣と盾を背負い、右手に回復の杖、左手に火属性の杖を持って困惑していると、


「何ボサっとしてんだっ!! 所属はっ?!」


と全然知らない角刈りの人に、め~~っちゃ怒鳴られて、1層に点在し氷のアンデッドモンスターを延々召喚しているらしいサモンオーブの1つを破壊しに向かう隊に入れられたっ。

俺は流されるまま回復しバフを掛けまくり、隊は氷のアンデッド群を蹴散らしながらサモンオーブの1つへと進行を続けた。

途中、角刈りの人の仕切りに不満のある隊員達が「1度回復させろっ!」とゴネて、ギスギスしまくりの隊はかつては浴場だったらしい氷漬けの広間で一旦休息を取ることになった。

回復と言っても怪我の治療より休ませろ、という話で、ヒーラー役の俺の仕事はすぐ済み、棒状糧食とカフェイン入りポーションを手に、俺はなんとなく端の方に座って溜め息をついた。


「死んだ目で働いてんね! ケンスケっ」


「っ?!」


急に言われてギョッとして振り返ると、防寒具でモコモコした格好のエビィユーだった。


「エビィユー、中に入ってたのか? サポーターだろ?」


「わっちは結構バトれるかんね。ただ感じ悪い隊に入りられちゃって、ムカついて仕切ってるヤツら喰いたくなってきたからバックれてやったのさ」


俺の糧食を1つ摘まんで食べだすエビィユー。


「自由だな」


「いいんだよっ、どうせわっち達くらいだと本線ルート攻略にゃ入れないんだから、傍系の整理ついてないとこはなんか声大きいヤツらが好き勝手すんだろ? マシなとこ探してシレって紛れ込んどきゃいいのさっ」


「・・エビィユー、ぶっちゃけこの隊もキツいぞ?」


小声で狐の耳に囁いてやると、


「ケンケケっ! くすぐったいぜっ? ケンスケっ」


「・・・」


改めて、しょーがねーヤツだな、エビィユー!

俺が呆れていると、今度はエビィユーが俺の耳元に顔を近付けてきた。癖の強い香水付けてんなっ。


「次、乱戦になったらどさくさでバックレようぜ? このルートの近くにオロロの隊がいたから追い付けんだろ?」


何ぃっ?!


「いやでも」


「元々、わっち達は東方遊撃班だろ? 所属元に戻るだけじゃん?」


エビィユーがグイグイ耳に口を近付けてくるのと犬歯の鋭さに俺は怯んだ。


「わかったよっ、噛むなよっ」


「ケンケケっ、やっぱお前はカモいヤツだなぁ~」


色々思うところはかるが! 俺は、エビィユーの悪の誘いに乗ることにした。とにかく疲れていて、ギスギスや怒鳴られるのが辛かったんだぜ・・



出発後、程無く雑魚数十体とアイスホーントゴーレム5体との交戦になり、アイスホーントゴーレム3体がいい感じで吹雪のブレスを一斉に吐いて視界不良になった! チャーンスっ!!


「ケンスケ!」


ゴーグルをしたエビィユーが素早く駆けてきた。


「よしっ」


俺達は猛吹雪の中、転がるように角刈りの人の隊から遁走した。

俺らが抜けたら全滅する、て感じでもなかったし、いいよな?

そのままやたら手榴弾を多用するエビィユーとオロロ隊への合流を目指し、氷のアンデッド達とはまともに戦わずにズンズンと俺は進んでいった。

疲れているのには変わりないし事実上隊からはぐれて2人だけで移動している状態だが、脇道に過ぎないルートを通っているので大した敵はおらずエビィユーはフランクなヤツで、俺は気楽だった。

聞かないのも不自然な気がしてエビィユーの特異だろう身の上でも聞こうか? というところで犬型アンデッド、アイススカルハウンドの群れに襲われた!

雑魚だが素早く数が多いっ。


「守りを重ね掛けするから手榴弾で数を減らしてくれ! プロテクトっ!!」


物理防御魔法を自分とエビィユーに重ね掛けした。


「りょうか~いっ!」


エビィユーは身軽に立ち回りながら手榴弾を投げまくりだした。俺も突進してきた1体をヒートシールドを使って銅鑼打ちで粉砕し、地道に数を減らしに掛かったのだが、突然下方に強い魔力を感じた! 直後、


激震っ! 床の崩壊っ!!


「おおっ?!」


崩壊の中心近くにいた俺は足を取られ、そのまま地下へ落ちだした。しかもアイススカルハウンドが2体、捨て身で飛び掛かってきやがった。


「岩断ちっ!」


ヒートソードで1体両断し、もう1体の噛み付きはヒートシールドでどうにか受けるっ。


「ケンスケっ!!」


「ファイアブレッシングっ!!」


崩壊を回避し、1層に残れているが多数のアイススカルハウンドに囲まれる形になったエビィユーに俺は渾身の火の加護を重ね掛けした。


「ワンちゃんよ、これで死んだらちょっとカッコイイかもなっ?!」


俺は落下しながら、ヒートシールドに焼かれながらも噛み付き続けるアイススカルハウンドの眉間にヒートソードを突き刺してトドメを刺した。

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