第四章 45話 よろめき様の声
アムルは、やや疲れた顔をして明け方に家に戻ってきた。
モモタウロスとハインツを起こさない様に、朝食の雑穀スープと干し肉とヤギのチーズをテーブルに置いてモモタウロスとハインツを起こした。
「食事を食べたら直ぐ野営地へ向かいましょう。」とアムルは、暗い表情でモモタウロスに言った。
「分かった。」と言葉少なく同意して席について食事を取った。
3人とも会話なぞは無く淡々と食事をする。
空は、若干曇りがかって今朝は曖昧な天候だった。
3人は、食事を済ませて荷物をまとめて馬に荷を乗せてハインツとモモタウロスが同じ馬に乗り、アムルはモモタウロスが乗って来た馬に乗りキャラバン隊が待っている野営地まで向かう事にした。
モモタウロスが、手綱を持ちハインツは、義手でモモタウロスの胴体を後ろから抱きつく形で馬を走らせた。
村からハシム達がいる野営地までの戻り道もやはり先日通った険しい獣道。
確かに早いのだが、走る時の上下の揺れがキツいこの獣道。
そんな揺れの激しい道程の行進にハインツは、振り落とされまいとしっかりモモタウロスに掴まっているつもりだったが、左の義手の固定が甘かったのか、揺れる度にだんだんと左肩の繋ぎ目が外れそうになっていった。
気付かないモモタウロスは、そのまま山道を駆けるが馬が石に足を取られてよろめいた。
その時にハインツの左肩が外れてしまい、ハインツは、危うく落馬しそうになった。
モモタウロスは、その一瞬耳にした声が「きゃっ!」と聞こえた様な気がした。
先を急ぎ馬を走らせていたモモタウロスは、振り返ると義手が外れたハインツが右の義手だけで抱きついていたのを知り、「おい?大丈夫か?」と声をかけて、馬を止め垂れ下がる左の義手を付け直す様に促した。
「わかった。
済まないちょっと待ってくれ。」
ハインツは、騎乗したまま義手を取り付け直す。
左肩に取り付いた固定用の繋ぎ金具に、垂れ下がる義手を装着し直してハインツは、もう一度モモタウロスの腰に義手を回して「もう大丈夫だ。行ってくれ!」とハインツは、モモタウロスとアムルに進行を促した。
そんな事もあったが、何とかキャラバン本体が待機する野営地まで到着する事が出来た。
曇りがかってはいたが運良く雪も降る事なく到着出来た事にひとまず安堵する3人であった。




