1.3章
1時間近く体育をした後、蓮は1週間のエネルギーを使い果たしたようにぐったりしていた。
- なぜ「能力」を使わなかったんだ?フェアにやりたいってこと?- アレックスは言った。
- クラスのあいつらに対してそんなこと考えてないよ。ただ、これ以上疲れたくなかったからさ。- 蓮は疲れすぎて話すのがやっとの状態だった。
- やばい... 心臓バクバクするし、頭もいてえ...
- 普段座りっぱなしのやつが何の準備もなく運動すると、まあそうなるわな...で、この後俺みたいに生徒会の仕事もあったらとてもじゃないけど無理そうだな!- アレックスは蓮の様子を見て笑った。
- 想像したくもないね。
- でもさ... 俺は日本人ってもっとシャイだと思ってたけれど、お前が転校生にもう手を付けてたなんて...。さては俺から学んだんだな!
アレックスは多くの人に慕われる模範的な生徒だったが、普段は人に女生徒から人気であることを自慢することはなく、こういった冗談は蓮にだけにしかしなかった。
- 黙れよ、ばーか!日本人全員がシャイなわけじゃないし、僕は日本育ちじゃないんだ。そもそも日本にいる長さはお前と同じくらいだろ!- 蓮はアレックスのからかいに答えた。
- 今日、学校に来たのはあの転校生に会うためだったのか?はは、この時のために、お前は落第しない程度に最低限出席してたんだな!?- アレックスは、蓮が怠惰でのんきな生活を送るために、それなりに学業をこなしていたことを知っていた。
- 最初に違和感があったんだ...今まであの転校生に会った覚えはないのに、だけどあの子のことなぜか知っているような気がした......。
"@blessedwitch: あなたが好きです! 彼氏になってください... - 00:25"
雨の降る11月2日、受け取ったこのメッセージは、蓮を興奮させ、出席日数表上、登校不要とされていた日にちまで学校に行かせていた。蓮は転校生の美春の正体はチャットのやり取りの相手 ”blessedwitch” 聖なる魔女だろうと推測していたが、いざ転校生に話しかけようとすると、いつも周りの女の子たちに囲まれており、声を掛ける機会を見失っていた。
- あの転校生、授業が始まってからお前をずっーと見てたぞ...... あの子一瞬たりともお前から目を離さないんだぜ
- それを知っているお前の方が怖いよ! なんかストーカーが2人いるような感じだわ、ただし2人のうち、可愛い女の子は1人だけっていうね...
東京高等学園は全日制であり、昼休みの1時間はキャンパス内を自由に動き回ることができた。家から出るのが嫌いな蓮は、この1時間の休み時間を利用し、授業をサボっても寮から出なくてすむように、1週間分の買い物をするなどしていた。
- 合計で1500円です。
- …
- ありがとうございました!またのご利用をお待ちしております!
蓮は、キャンパス内のコンビニで買い物をした。コンビニには、電子蓮ジで温めるハンバーガーやインスタントラーメン、スナック菓子、清涼飲料水などの加工食品と、アイスクリームやヨーグルト、デザートのお菓子などが揃っていた。
"アレックス に頼んで、このお菓子全部持たせればよかった...。”
蓮がベンチで休んでいた所、突然、左耳から全身に戦慄が走り、食べていたお菓子を喉に詰まらせた。
- こんにちは!蓮!- 蓮の耳に息を吹きかけた笑顔の転校生は、彼の隣に腰を下ろした。
"近いよ!"
- 白雪さん... い、委員長と一緒にキャンパス巡りでもしてきたらどうなの?- 緊張のためか、少し口ごもった。
- やっと二人になれたのに、そんなこと言わないでよ...。あなたといつもくっ付いてる友人はここにいないし、それに私と一緒にいたクラスメートもまいてきたの。私に話かけに来なかったのはあの子たちのせいでしょ?- 美春が言う。
- まあね...。アレックスは生徒会の仕事にいっちゃったし...。
"この子、いい香りがする"
- えっと...それで、白雪さん、授業の前に言ったこと、あれはどういう意味?
- どういう意味か分かってるくせに。約束を守ってくれてうれしい!- 美春は意味ありげな笑みを浮かべながら言った。
- ただ、私のことは名前で呼んでほしいなーなんて。もしかしたら、私のことなんて呼べばいいか分かってないのかな...聖なる魔女でもいいよ?
美春は本当に自分が”聖なる魔女”であることを証明するために、スマホで2人の自撮り写真を撮り、”聖なる魔女” のアカウントから蓮に送ってきた。美春が口にした約束とは、聖なる魔女の誕生日プレゼントとして、その日蓮が学校に行くというものだった。
- それにね、「白雪」は私の本名じゃないの......。- 美春は少し照れながら、こう言った。
"「白雪」って私の苗字じゃないから変な感じ!"
- どういうこと?- 蓮が驚き尋ねた。
- 芸名なの。 雑誌、ドラマ、CMと出演が続くし、おかしなファンに個人情報を知られたり、家族に嫌がらせをされたくないから。
美晴の事情を聞いて、蓮は名前を偽らなくてよい友人・社会的な繋がりがあることは幸せなことだと再確認した。
- だから、ゲームでは音声通話しないの。
- ところで、今朝、私に送ってきたメッセージはどういうつもりだったのか教えてよ?- 蓮に本当の苗字を聞かれる前に、彼女は話題を変えた。
- 何のこと?最近、かなりメッセージのやり取りしてたから。- 蓮は美春が何を言っているのか分かっていたが、それを言う勇気がなかった。
- ねえ、とぼけないでよ?私のパンツの色を知りたいんじゃなかったの?- 美春は突然、座ったままの蓮の前に立ち、右足をベンチに立て、女の子と接し慣れていない人間にとっては危険なほど刺激的な状況を創り出した。
蓮は唐辛子のように真っ赤になったが、美春が笑っているのを見て冗談だと分かり安心した。
- ところで、お菓子いっぱい食べるとは聞いてたけれど、ホントにこんなに食べるんだね。実際に食べてるとこ見るまで信じていなかったけど! こんな食べ方してたら健康に悪いよ!- 美春は少年の買ったお菓子についてコメントした。
- え...うん...
午前中の授業を終え、蓮は美春との関係をまだよく理解できなかった。何しろ、一日で対応できる情報量ではなかった。しかし、戸惑いや恥ずかしさ、不安はあっても、蓮は聖なる魔女をとても大切に思っていた。彼女は、落ち込んでいる時も、オンラインゲーム対戦の時も、いつも彼の「そばにいて」くれたし、「付き合う」という問題についてはまだどう感じているか分からないが、確かに二人を結ぶ絆が存在した。
- 君の好きなお菓子、試してみてもいい?
- 僕が好きなのは...。イチゴ味を多めに買ったんだけど、他の種類が欲しいなら... - 蓮は美春に遮られ、最後まで話すことができなかった。
"キス?!"
美春の唇が蓮の舌を軽く吸い、蓮の飴を美春が奪ったとき、今まで経験したことのない複雑な感情が蓮を支配した。
- うっわぁ!本当、イチゴ味は美味しいね。- 彼女は何事もなかったかのように、隠微な笑みを浮かべていた。
蓮は美春を前にして完全に言葉を失った。生意気な少女の唇の味がまだ唇に残っていた。直接会って数時間しか経っていないが、蓮は目の前のこの子がほぼ毎日メッセージで話している子と同じだと認識した。
- お邪魔だったかな?
右の鼓膜にから突然の声が波紋のように全身に響き渡り、蓮は本能的に立ち上がった。まるで悪いことをした子供が親に見つかるように。
- もうすぐ昼休みが終わる。今回は早退させないよ。- アレックスは蓮のフードをつかみながら言った。
- 残念...。- 美春の笑顔は消え、すでに傘を開いて教室に向かって歩き出していた。アレックスは暗い表情でそれを見ていた。
"美春はあの傘をどこで手に入れたんだろ?" 美春が去る姿を見ながら、蓮は思ったが、すぐにアレックスの方を向いた。
- くそっ、アレックス!僕の計画を邪魔する気か!?お前には100人のガールフ蓮ドがいるかもしれないけれど、あいにく僕はそんな幸運に恵まれていないんだ。
しかし、アレックスはすぐにからかい返した。
- 蓮君よ、お前とは長い付き合いだけど、「まな板」な女の子が好みだったとは知らなかった、ははっ。 ... ま、可愛い顔をしてるけどね、俺の意見では委員長の方がお胸のサイズではお前の彼女に圧勝だな!
- バカだな、アレックス!大きな胸は男の手を満たすが、小さな胸は心を満たすってもんだ。
女の子の好みは違う2人であったが、今回は雨を避けて急いでいたこともあり、議論はお預けとなった。
次の章に進みます...




