プロローグ
- ゲームやりすぎると頭悪くなるってよく言われるけどさあ、こんなに早く気がくるっちゃうなんてさ、思わないじゃん......。- とあたりを見回しながら、下唇を噛み、(理不尽な状況に置かれた際によくやる癖である)少年は言った。
ついさっきまで自分の部屋でくつろいでいた15歳の彼が、真夜中になって突然最初に目にしたものが、こんな終末的な世界だなんて、当然ながら全く想像もしていなかった。
彼は巨大なクレーターのような場所に立っていた。周囲には都市群の廃墟のようなものしか見えない。地面には血で書かれたような奇妙な記号が描かれているが、死体はない。赤く染まった空には、3つの月があった。
まるで悪夢の中にいるようで、彼は重要なことに気づいていなかった。全神経を集中させ、自分の視界に入った遠くの「何か」に意識を向けた。その「何か」は...少女であった。
透き通るような肌と赤い肩までの髪を持つ少女。18歳前後と思われる彼女は、引き締まった体つきで魅力的な雰囲気を放っている。しかし、それ以上に彼の注意を引いたのは彼女の服装だった。半透明のベールで顔を飾り、ドレスの上にグレーのケープを覆っている。着ているローブ・ブーツはいずれも黒の濃淡で、喪服のような印象を与えた。
少年の眼に映る少女の美しさを、定義するのであればまさに「天使」の一言に尽きる。今自分の立場は、都合がよいオタクなら誰でも妄想する物語の主人公のようだと思った。
遠めに見える少女は剣のようなものを振り回していた。なぜそんなものを振り回しているのかは明らかであった。
"あの空中にいるやつが「悪者」みたいだな!"
遠くで文字通り、空中を飛び回っている人影を見つけ、少年はそう思った。
どうやら少女は、この終末的な状況を招いた張本人であろう人物と対峙する宿命があるようであった。交戦しているのは神父のようなローブが特徴的な男性と顔の一部を覆う頭巾の下の白い髪が見える美しい女性であった
- ねえおじさん、女性に暴力をふるうのはマナー違反だって誰かに教わらなかったの?
どちらが「正義の味方」でどちらが「悪者」であるのかははっきりとは分からない。
実際、「悪者」と先ほど表現した男は、少女本人を攻撃するよりも、追い払うような行動をしているようにも見える。
少年もそれを知っていたが、彼の中では、どちらが「正義の味方」で「悪者」であるか選ぶとしたら、可愛い女の子を応援するに決まっていた
体を素早く動かしながら、少女はまるで踊っているかのように優雅に戦っていた。火や雷の攻撃をかわし、岩を紙で作ったかのように剣で切っている。しかし、彼女と対峙するものとの力の差は、天と地の差ほどもあった。
"どうやら俺本当にいかれてるみたいだ... "
遠くから鋭い視線で、注意深く観察しながら、少年は心の中でこの言葉を繰り返していた。その時、一瞬、謎の少女が自分の方を見ているような印象を受けた。傷だらけで、おそらく痛々しい表情をしているのだろうが、その美しさには何ら影響を与えていない。少女の顔は紅潮しており、目を逸らさずこちらを見ていた。その光景が、ネットでよくみる助けを乞う美少女を思い起こさせる。
風に紛れ聞き取れない言葉が少女の口から出た。そして、少女は自分の方に銃を向けたのが見えた。
- おいおい、どういうつもりだよ...「美少女ヒロイン」じゃないのかよ?
パニックになった少年は、反対方向に全力で走った。しかし、少女はひと思いに強力な衝撃波を少年に向け放った。少年は奇妙な血で書かれたような奇妙な記号のある方向に、風の中で葉っぱが散るように吹き飛ばされた。その瞬間、少年すなわち、神代蓮は絶命した......。




