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エピローグ

 


 空で瞬いた、星とは違う輝き。それを見た山神が声を上げた。

「おい、あれ……!!」

「っ、よっしゃぁぁぁ!!」

 気づいた睡蓮が、光へ向かって大声を放つ。彼女の肩を借りて空を見上げたエリカも、ボロボロの身体に残った力を叫びに込める。

「っ……おかえりー!!」



 無事に大気圏を抜け、2人は翼を再び広げた。

 虹の花弁により彼女達の身は安全だが、まだ遥か上空。未だ眠ったままの蒼葉と紅葉を落とさない様に最新の注意を払いつつ、リンドウはヒガンバナへ問う。

「まさか本当に後から追いつくなんて………宇宙だぞ?」

「《ヘルズドミネーター》の力を初速に使って、補助出力としてプレシオフォンとアルゲンタヴィスフォンのデータシェアを利用した。やれば意外と出来るものだな」

「無茶苦茶……って、俺は言えないか。似た様なものだし」

「……見えてきたぞ」

 ヒガンバナの言葉と共にリンドウの目に地上が見えた。手を振る仲間達の姿を見て実感する。

 自分達が草木ヶ丘に戻ってきた事を。


「ただいま!」


 2人が降り立つと同時に変身は解け、虹色の花弁は散っていった。

「しっかしお前ら、いつの間に空で戦ってたんだ?」

「少し前まで宇宙にいて」

「……うちゅう?」

 あまりに唐突な桜の言葉に唖然とする山神を他所に、睡蓮とエリカが尋ねる。

「ちょ、ちょいちょい、2人を助け出したのは分かるけど……」

「ねぇ、白葉ちゃんは……?」

「白葉は……」

 躊躇いながらも口にしようとした桜だったが、それを遮る様に抱いた体が動き出す。

「蒼葉……」

「白葉も……姉さん達も、ここにいる」

 桜の腕から降りると、まだ覚束ない足取りで一歩前へと進む。同時に、

「待て紅葉、まだ……」

「大丈夫、だから」

 紅葉も踏み出した。


 2人が向かい合い、差し出した掌の中。そこへ舞い散った虹色の花弁達が、吸い込まれる様に消えていく。

 最後に2人の中に消えたのは白い花弁。それを見た全員が、蒼葉の言葉の意味を理解した。


「……これからもよろしく」

「側で、見守ってて」

 静かに涙を流す2人の様子を見て、山神は写見とセラ、そして睡蓮の肩を叩き、耳打ちする。

「俺、先に戻って転校生と社長がゆっくり休めるように準備しとく」

「あ、自分も手伝うっす」

「わ、私も。出来る事があれば」

「私はエリカと一緒に戻るから、先行ってて」

「おう」

 山神、写見、セラが去った事に気づいたのか、蒼葉と紅葉が顔を上げる。

「待っ、貴方達にも、沢山言わないといけない事が……」

「いいのいいの。ちゃんと分かってるからさ」

 慌てて追いかけようとする2人を、睡蓮は朗らかな笑みで制する。そして彼女の肩を借りたエリカもまた、笑みを浮かべていた。

「お姉さん達と、分かり合えたみたいだね……良かった」

「エリカも……本当に、ありがとう……!」

 蒼葉はエリカを抱きしめる。寄せ合った頬の熱さが伝わり、エリカの目にも涙が浮かぶ。

 そして蒼葉の向こう側にいる桜へも笑みを向けると、彼も笑顔を返した。

「ありがとうエリカ。エリカがいなかったら、きっと助けられなかった」

「え、へへ……わっ!?」

 すると突然、睡蓮がエリカを桜へとパス。よろめいたエリカを桜は慌てて抱き止めた。



「さぁて、色々話したい事もあるだろうけどさ! まずは帰ろう! 出発〜!」

「うぁぁ、待って待って睡蓮ちゃん!」

「桜ならエリカ背負って、蒼葉支えて歩くくらい出来るでしょ! 邪魔者睡蓮ちゃんは先に帰って準備してきまーす!」

「待ってよ睡蓮ちゃ〜ん!!」

 凄まじい速さで走り去ってしまった睡蓮にエリカの制止は届かなかった。静かになった空間の中、桜はエリカを背負い、まだ足の震えが残る蒼葉の手を取った。


「俺達も帰るか」


 ゆっくり歩み出す。蒼葉とエリカは最初こそ照れ臭そうにしていたが、やがて桜へと身を任せる。



「……」

 そんな様子をマジマジと見ていた彼岸は、桜の真似をする様に紅葉の手を取る。

「真似しなくて良いの」

「だがまだ歩くには……」

「もう自分で歩けるから」

 逆に彼岸の手を握り返し、震える足に力を込めて歩き出す。彼女の強がりをしばらく見守っていた彼岸だったが、すぐにまた横に並んだ。

「なら、俺も一緒に歩こう。躓かないように」

「子供扱いしないで……なんて、あなたに言っても仕方ないか」



「「ねぇ」」


 蒼葉と紅葉は小さく尋ねる。横を並んで歩く、自分達の英雄に。



「「これからも、一緒にいてくれる?」」


 桜は少し驚いた様に、彼岸は眉一つ動かさず、見つめ返す。だが最後は小さく笑って、



「「あぁ、もちろん。皆、ずっと一緒だ」」



 彼等が歩いて行く道の後に、小さな花弁が1枚舞う。やがてそれも、彼等の後を追いかける様に飛翔し、桜の手の中に消えて行った。





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