運命が動く時
朝のホームルームが始まる
「みんなおはよー」
気だるそうな声が教室に入ってくる
ボサボサの髪に大きな丸メガネ、生気のない瞳
細すぎる体はもはやくたびれたシャツに着られていた
前山田 陣 32歳
通称まえやん
私達の担任である
お世辞にもかっこいいとは言えたものではないが、はっきりした物言いに時たま見せる優しさで生徒には好かれていた
「じゃあ今日のホームルーム始めるけど、その前に一つ、隣のクラスに転校生が今日から来るが…まあ、そのなんだ、所詮はみんな同じ人間だ、ほどほどにするように…」
珍しく歯切れが悪い
「まえやん先生!何が言いたいのかよくわからないです!」
一番前に座る男子生徒がすぐに発言した
「ま!そのうちわかると思うので先生からは、
ギャーーーーー
隣のクラスからものすごい悲鳴が聞こえてきた
「何々!???」
何事かと、クラスが騒がしくなる
「静かにー!見に行けばわかる!!分かるんだが今はホームルームを終わらせるぞ」
それから5分ほどでホームルームは終わった
「じゃ、ホームルーム終わり」
生徒達は悲鳴の正体が気になり
はっきり言ってみな上の空だった
「真子!!!隣のクラス見に行こうよ!!」
沙織が声をかけてきた
「そうだね!見に行ってみようか!」
隣のクラスを見に行くと、クラス全員が1人を囲んで盛り上がっているようだった
きっと、あれが転校生だろう
「まこまこ!!転校生がめちゃくちゃカッコいいんだって!!」
一体これ程までに騒ぎ立てられるかっこよさとはどのようなものなのだろうか
「…っ!!やば!なに、あれ…」
沙織が見ている方に目を向ける
そこにはみんなの中心に座る男子生徒がいた
あきらかに一人だけ空気が違うのが直ぐに分かる
まるで別世界からきたのではないだろうか
本気でそう考えさせられる
色白のキリッとした顔立ちにサラサラの髪
柔らかな唇は綺麗な曲線を描き
両眼のアイスブルーは吸い込まれそうなほど鮮やかで深い
「あれだけ悲鳴が上がるのも納得だね、あんなにかっこよくて綺麗な人、初めてみた…」
沙織が納得な様子で話す
「…真子??」
私は無言で転校生を囲う輪の中へ入って行った
知ってる…
きっと彼に似ている人なんてこの世にいない
唯一無二の美しさ、かっこよさ、
近づけば近づく程わかる
どこか懐かしくて、あったかい、優しい匂い
もう会うことはないと思ってた
「…日和」
私は細い息で彼の名前を呟いた




