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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第九十話 大・失・敗

宗教によって、制限されている『食べ物』があります。

有名なところでは、イスラム教徒は豚肉が食べられませんし、ユダヤ教徒はウロコのない魚介類(鰻など)が食べられません。また、台湾の熱心な仏教徒は牛肉を食べません。


1995年の春のある日、北京の大学で中国語を学んでいた私に、担任の先生からある提案がありました。


「日本には春になると、桜の花を見る習慣があると聞きました。北京にも日本から寄贈された桜の木があるのですが、来週、クラスのみんなで見に行きませんか?」


おおっ、花見!

それまで北京で桜の木を全く見かけたことが無かったので、先生の提案は、まさに願ったり叶ったりです。


「先生、ぜひ参加させて下さい。お弁当を持っていく必要はありますか?」

「そうですね、菓子パンやビスケットなどの簡単なものを持ってきて下さい。」


同じクラスのアメリカ人、チェコ人、イスラエル人、韓国人などの同級生も揃って参加することになりました。私は、『やっぱり日本人なら遠足のお供はおむすび一択でしょう(^▽^)/』と、日本から持参した貴重な鮭わかめ味のおむすびの素と梅干、輸入食品店で買ったオーストラリア産のコシヒカリ米を使って、たくさんの海苔むすびを作り、タッパーウェアに詰めました。


遠足当日は曇り空でしたが、気温もまずまずで、まさにお花見日和です。


ところが……

肝心の桜の木がすご~く小さい(約1.5m)!これじゃ植木レベルだよ!しかも花がまだ咲いていない!_| ̄|○


かなりガッカリしてしまったのですが、無邪気に桜のつぼみを見て喜んでいる先生や同級生を見ると、何も文句が言えません……。

ともかく気を取り直して、日本人の同級生達と一緒に、ちょっとだけ花が咲いている桜の木の下にレジャーシートを広げて、他の学生達を呼ぶことにしました。


「おーい、みんなでお弁当を食べようよ。」

「その敷物は何なの?」

「日本では、花見と言えば、桜の木の下にレジャーシートを敷いて、飲んだり食べたりしながら、桜の花を楽しむことなんだよ。今日は、私達日本人が伝統的なお弁当を作ってきたので、良ければみんなで食べましょう。」


日本人の発言に、非常に驚く先生。

どうやら先生のイメージした“花見”は、いわゆる大阪の“通り抜け”のような感じだったようです。

私達の誘いに応じて、おずおずと靴を脱いでレジャーシートの上に上がり込み、日本風のお弁当を恐々覗き込む同級生達。


「これは“おむすび”と言います。炊いたご飯が熱いうちに、手に塩を付けて、中に具を入れて成形した食べ物です。周りの黒いものは、海苔です。冷めても美味しい日本のお弁当の定番です。今回は、日本から持ってきたおむすびの素を入れて味付けしています。」


イスラエル人の同級生が、私のにぎったおむすびを一口かじり、『ん?』というような顔をしてから、質問してきました。


「このピンク色のものは何?グリーンのものは野菜?」

「ピンク色は鮭フレーク。……あ~、えーっと、魚肉です。グリーンのものは、海藻です。」

「うわ……(=_=)。僕はユダヤ教徒でベジタリアンなんだよね。胖姐さんには悪いけれど、宗教上の理由で、これ以上は食べちゃいけないと思う。」

「ええーっ!(゜Д゜;)ごめんなさい。日本人は宗教上の理由で食べ物に制限を受けることが少ないから、配慮が足りなかったです……。本当に申し訳ありません。」

「大丈夫。知らないでやってしまったことだから、神様もお許し下さると思うよ。」


後日、その同級生から聞いたところによると、海苔やわかめのような海藻は、植物性だからOKだと思ってしまいますが、宗教上NGだそうです。鮭は、ユダヤ教では食べてよいのですが、彼はベジタリアンなので、これもNG。こんなにNGばかりだと、普段の彼は一体何を食べているのか、本当に不思議になってしまいますね。

宗教上の制限がある人と一緒に食卓を囲む難しさを痛感させられたのでした。

梅雨明けした途端に、関東地方はハッキリしないお天気が続いていますね。

暑くないのはありがたいですが……。皆様も季節柄、くれぐれもお身体ご自愛下さい。

来週末から、いよいよお盆休み。今年も私は一人旅に出るので、エッセイの更新が遅れるかもしれませんが、気長にお待ち下さいませ。

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