第八十九話 向銭看!
ご承知の通り、中華人民共和国は、中国共産党による一党独裁の国家です。
政治システムの中で、共産党が、軍隊や政府機関よりも上位に位置しており、宗教でさえも共産党の指導下に置かれています。
……ん?共産主義って、宗教を否定しているんじゃなかったっけ(・・?
中国では、建前上は、国民に信仰の自由があり、仏教、道教、キリスト教、イスラム教など、各種の宗教が存在しています。
あくまでも宗旨が政府の施策に反しないならば、という条件付きですが。
だから、中国では街中にお寺や教会がたくさんあり、多くの善男善女の信仰を集めています。ハッキリ言って、参拝者は、日本よりも熱心にお祈りしているかも。
中国の仏教では、日本と違って、僧侶が妻帯することは絶対にありません。
また、菜食が徹底されています。幼い頃に出家して、お寺で育つ子供もいます。
人口の多い国ですから、出家は、貧しい家庭の人減らしの面もあるのかもしれません。
何となく日本人がイメージする”お坊さん”というと、ストイックで生真面目、商売っ気などないという感じですが、中国のお坊さんは、結構生臭いです。
現代の中国で、一番有名なお坊さんは、少林寺を一大コングロマリットに育て上げた釈永信住職でしょう。彼は、MBA(経営学修士)を取得しており、ベンツに乗る『CEO住職』として、どちらかというと徳の高さよりも経営手腕の高さで知られています。
“カンフーの聖地”という少林寺ブランドを利用して、医薬品開発、学校経営、カンフーショーの公演など、寺院が経営している事業は多岐に渡っており、少林寺をあっという間にお金持ちの寺院に育て上げました。
お坊さんについて、宗教者としての”人徳”よりも、経営手腕などの”現世利益”を高く評価するのが、いかにもお金儲け大好きな中国人らしいですね。
数年前に、私が父親を連れて、中国の杭州にある霊隠寺を参拝した時のことです。
観光名所となっている古刹のため、お寺の門前には大きな駐車場がありました。
そして、駐車場の一角を工事用の塀で囲って、『スターバックスコーヒー霊隠店、まもなくオープン!』の大きな垂れ幕が。(;^ω^)お寺の多角化経営の一環かしら?
さらに、寺院内にあるお札・お守り授与所の陰に、銀行ATMがひっそり設置されているのを見つけました。
『変な場所にATMがあるなぁ……。』
と思って、機械を何となく見つめていたら、伝統的なスタイルの僧服を着た2人連れの若いお坊さんが建物内から現れ、慣れた手つきで銀行のカードをATMに入れて操作を始めました。
驚いた私が、観光ガイドの楊さんに、
「ねぇ、楊さん、お坊さんがATMでお金を下しているよ!もしかして、あのATMは、参拝客用じゃなくて、お坊さん用なの?」
「そうですよ。中国では、有名寺院のお坊さんは、みんな高給取りなんです。今、お坊さんになりたかったら、最低限でも大学を出ていないと、霊隠寺のような有名寺院に勤めることは出来ません。きっとあのお坊さん達も、修士か博士号を持っているはずです。」
「宗教学か哲学の学位だよね?」
「違います、経営学か法学ですよ。だって、お金にならない学問を勉強しても仕方ないでしょう?」
ひぇー(゜Д゜;)
中国のお坊さんは、外資系証券会社の金融アナリストか弁護士のような狭き門のようです。
私には、到底無理だわ……(ヾノ・∀・`)ムリムリ




