第三十八話 日本人社会のヒエラルキー
中国の日本人社会では、目に見えないヒエラルキーがあります。
階級の上から順に、
①日本大使館(または領事館)の館員及びその家族
②日本から派遣された公務員及びその家族
③メガバンクの駐在員とその家族
④大手商社の駐在員とその家族
⑤日本のマスコミの特派員記者とその家族
⑥地方銀行の駐在員とその家族
⑦大手メーカーの駐在員とその家族
⑧中小メーカーの駐在員とその家族、中小商社の駐在員とその家族
⑨現地で自営業を営んでいる日本人とその家族
⑩企業派遣の留学生とその家族
⑪現地企業または外資系企業に現地採用されている日本人
そして、”ランク外の網走番外地”として、自費留学生や中国の大学の日本人教員、中国人と結婚して永住している日本人、がいます。(異論は認めます)
このヒエラルキーは決して明文化されているわけではありませんが、現地の日本人社会にかかわることがあれば、実際に肌で感じることの出来る厳しい”区別”です。
私が北京に留学していた頃、企業派遣の留学生や大手商社の駐在員家族のお宅にうかがって、お食事をご馳走して頂いたり、お風呂を使わせて頂いたり、家庭的な温かいおもてなしを受けたことがありました。(留学生寮にはシャワールームのみなので、たまには浴槽に浸かりたいのです)
私としては、自分の持っている衣服の中で、華美ではありませんが、洗濯の行き届いた清潔なものを着ていったのですが、マンションの自治会に、『〇棟の××号室に、身なりの汚い日本人が出入りしている』と即刻クレームを入れた住民がいたらしく、後日、そのマンションに住む友人から、
「悪いけれど、今度ウチに遊びに来る時には、日本から持ってきた一番きれいな服を着てきてね。タクシーも、普段乗っているそこら辺の車じゃなくて、運賃の高いホテルタクシーに乗ってきてくれるかな。自治会の役員さんから、ウチにヘンな人を出入りさせないで、って注意されちゃったので。」
と言われて、大ショックを受けました。
……何というか、同じ人間扱いされていない??Σ(゜д゜lll)ガーン
当方としては、在留邦人のお宅にうかがうということもあり、同じ日本人らしく、がんばって礼儀正しくふるまっていたのですが。
ちなみにそのマンションは、日本のある大手商社の社宅のようになっており、各棟の入り口の掲示板に、『新入居者のお知らせ』として、まもなく引っ越してくる家族の名前、家族構成、年齢、勤め先や最終学歴まで表示してありました。
プライバシーを重視する今ならば考えられないことですが、当時はこれらの情報から、新しく入居する家族について、日本人社会やマンション内での立ち位置が決まったみたいです。
その後数年して、私が駐在員として上海に派遣された時、会社から手配されたマンションの部屋に、シャワー付きの浴槽があるのを見て、
『ようやく私も出世して、ランク外からヒトの仲間入りをしたか……。』
と、感無量のあまり思わず涙ぐんでしまいました。
ルームメートの日本人同僚は、そんな私を見て、(・・? という顔をしていましたが。
このルサンチマンは、所詮キミには理解出来まい……(-_-;)




