第百三拾七話 謎の機械
今、アメリカのトランプ大統領が携帯アプリの”Tiktok”や”WeChat”のアメリカ国内での使用を禁止しようとしており、大きなニュースになっています。
でも、中国国内では従来から西側諸国が開発した”Google”、”Twitter”、”Line”、”Facebook”、”YouTube”などの利用が禁じられており、第三者の目からみるとお互い様なんじゃ……という感も否めません。
中国国内の人達がまったく西側諸国からの情報から切り離されているのかというと、実はそうでもありません。何しろ”上に方策あれば下に対策あり”という文化ですから、抜け道はあります。
代表的なものが、VPNという仮想プライベートネットワークを利用するやり方です。
既存の回線を利用して、他国にあるサーバーと仮想上の専用回線を設置して情報のやり取りをします。(実は私も理屈はよく分かっていない) 日本のサーバーを利用している場合は、ネット上では自分が日本国内にいることになる(?)らしいです。
かなり複雑な経路をたどって情報が届くので、ダウンロードのスピードはすごく遅いです。しかもWi-Fiの無い場所だと通信費用がえらいことになる(-_-;)
幸い、中国はインターネットが非常に発達しており、私が住んでいたマンションにも各戸に光ファイバーが引かれていて、携帯電話の料金プランに自宅内のWi-Fiルーターとその通信費用までが入っていたので、自宅でアクセスする分には心配がありませんでした。
このVPNによる回避方法も万能ではなく、中国では法律上禁止となっているとの情報もあり、大都市では中国政府の妨害が入ってつながらないことが多いようです。
私が住んでいたのは田舎だったので、接続はほぼ問題ないのですが、ちょくちょく遮断されました。まぁ、YouTube見るくらいは出来ましたけど。
これだけ厳しく海外からの情報の流入を規制しているのにも関わらず、なぜか街角にある携帯電話の修理屋さんなどで『解码器』という不思議な機械が普通に売られているのが中国です。解码器とは、暗号コード(密码)を解読する機械という意味です。日本語だとテレビボックスというらしい。要するに中国を含む全世界のテレビ局の番組をインターネット経由で見られる不思議な機械なのです。設置方法は簡単。部屋に引かれている光ファイバーを、まずWi-Fiルーターにつないだあと、解码器につないで、その後TV本体に接続するだけ。
これで全世界のテレビがほぼオンタイムで視聴できます。(録画は出来ない)
日本だとNHK及び民放各局、なぜか関西圏の一部TV局も見られます。東京では吉本新喜劇をオンタイムで見るのは難しいですが、これも簡単。すごい。フジテレビと関西テレビのザッピングなんていうものも出来ます。
海外だと、欧米諸国、インド、東南アジア諸国、韓国、台湾、香港&マカオ、中国の各局が見られます。
日本とのオンタイム放送というのが建前ですが、実は3分程度の遅れとなっているので、朝の忙しい時にテレビに表示される時間をあてにできないのが玉に瑕(;^ω^)
さて、この素晴らしく不思議な解码器ですが、赴任当初から利用していたわけではありませんでした。
10年以上中国で勤務している日本人社員のMさんから紹介して頂いたのです。
「胖姐さん、普段、テレビ番組は何を見ていますか?中国のですか?」
ある日、Mさんが私に訊ねました。
「はい。海外の衛星放送は見られないみたいなので、中国中央電視台を見ていますが。」
「あぁ~、そりゃイカンわぁ。つまらんでしょう?私が良い機械を紹介するので、それを買いませんか?日本のテレビが見られますよ。」
「本当ですか?ぜひお願いします。」
「でもね~、中国だからニセモノが多いので、本物を売っているところを見つけたら教えますから。(自分の部下の)鄭くんに買ってきてもらったら良いですよ。」
そして約1ヶ月後に私の手元にやってきたのが解码器だったのです。
それから、毎日、解码器を使って世界各国のテレビを楽しんでいたら、上記の鄭さんがこんなふうに訊ねてきました。
「胖姐さん、例の機械、どうですか?調子いいですか?」
「はい。毎日、日本の番組を楽しんでいます。映像もスムーズに見られますよ。」
「……( ̄― ̄)ニヤリ。じゃぁ、あの機械は本物だったのですね?それじゃ、僕も自分の分を一台買いますよ。」
……鄭さん、私を実験台にしましたね!?!?
ひ、ひどいわ~~(=_=)