第百三拾五話 カメラがあなたを狙ってる……! (その1)
あまり知られていないかもしれませんが、中国で日本よりも普及しているのは『顔認証システム』です。
新幹線に乗る場合でも、オンライン販売でチケットを購入した場合は、外国人ならばパスポート、中国人ならばIDカードを改札のスキャナ部分にあてて、自分の顔を改札部分のカメラに向けるだけで、自動改札のゲートが開いて構内に入ることができます。何と切符の発券が要らないんですよ。社内検札もQRコードを見せるだけ。だから中国の新幹線の自動改札には切符を入れるための穴が無い!
2020年1月下旬にコロナウィルスの流行が本格化しだしてから、私の赴任先の工場も早急に対策をとる必要に迫られました。もちろんマスク着用、手洗いうがいの励行、適切な換気、ソーシャルディスタンスの確保など基本的なことはやっているのですが、労働力密集型の工場なので、万全を期さねばなりません。
毎日、管理職の社員が交代で工場正門に立ち、出勤してくる従業員の検温チェックを実施していたのですが、それが2か月、3か月も続くとなると、管理職の社員達にも、流石に疲れが見えてきます。
そこで、私の赴任先の中国工場では、正門入口を改造して、自動体温測定機能付きの顔認証システムゲート及びナンバープレート認識システム車両用ゲートを導入することになりました。
予め全社員の顔写真をシステムに登録しておき、朝、出勤してきた社員がゲート前に立つと、赤外線で体温を測定するとともに、カメラで撮影した画像と登録されている画像とを照合し、合致した場合はゲートが開いて構内に入ることが出来ます。その際、出勤した時間も人事管理システムに登録されます。
現在はコロナウィルス感染予防対策の一環で社員のマスク着用が義務付けられているので、万が一マスクを着用していない状態でゲート前に立つと、『マスクを着用して下さい』とのアナウンスが流れます。(もちろんゲートは開かない)
自家用車で通勤してくる社員については、事前に登録したナンバープレートと車種を照合して車両用ゲートが開くので、構内に入ってから、警備員が体温測定を行います。
システムを導入した初日……
工場正門前のあちこちで、「カメラが私を認識してくれない!」と大騒動が発生( ;∀;)
結局、その日は手すきの管理職が駆り出されて、全社員の体温測定をやり直す羽目になりました。
設備メーカーと協力して、朝からずっと問題の原因調査をしていた総務人事部の潘さんがポツリと一言。
「もしかして……認識されなかった人は"美顔アプリ"で顔写真を撮っていたんじゃ……」
そうなのです!
現場で働く女性のワーカーさんのほとんどが、いわゆる美人に撮れる携帯アプリを使ってめっちゃ加工した顔写真を認証登録に使ったため、自分の顔なのに同一人物と認識されなかったのでした……(;´д`)トホホ
総務人事部が社内に"美顔アプリ"を使った登録写真の禁止、及び再撮影のお願いを緊急通知して、何とか問題は解決したのでした。ε-(´∀`*)ホッ、