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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第百二拾九話 パフォーマー

ここ数年来、夕暮れとともに都内や近郊のターミナル駅前に現れて、音楽やダンスなどを披露している人達をよく見かけます。

ほとんどが自作CDなどの宣伝活動のために行なうパフォーマンスのようです。けっこう固定ファンもついていて、人だかりがしていることが多いです。


もちろん中華圏にもこのようなパフォーマーはいます。

有名なところでは、香港の油麻地の露店カラオケや、尖沙咀フェリー乗り場近くのストリートミュージシャンが挙げられます。ただし、あくまでもこれは生活レベルが高くて、音楽を楽しむゆとりのある地域ならではのことで、中華人民共和国のほとんどの地域では、ストリートミュージシャンやパフォーマーは『物乞い』の一種と考えられています。


今から10年以上前のことです。

当時、私が勤めていた企業に中国工場から出張者達がやってくることになりました。

受入企業側のお世話係(アテンド)はもちろん私です。

中国人出張者のわずか10日あまりの日本滞在中、不自由な思いをさせないように、張り切って朝から晩まで通訳として帯同しました。

ある日、役員達との会食を終えて、中国からの出張者達を宿泊先のホテルまで送り届けようとした時のことです。

たまたま駅前広場を歩いて横切ろうとしたら、何組かのミュージシャンやダンサー達が思い思いにパフォーマンスをしているのを見かけました。

その中でも、女子高生3~4人のダンスグループが音楽に合わせて上手に踊っているのがとても目を引きました。私が思わず足を止めて感心していると、中国からの出張者達も立ち止まってダンスに魅入っています。


『やはり年齢(とし)が近い女の子のパフォーマンスだから、ファッションとか、色々気になるんだろうなぁ……。』


私が心の中でそう思っていると、何だか中国人出張者達の様子がおかしい……?

ちょっと涙ぐんだり、バックの中から財布をひっぱり出そうとしている……(=゜ω゜)

私が出張者のリーダー格の曽さん(女性)に、


「曽さん、みんなどうしたの?何だか涙ぐんじゃったりしているけど。」


と聞くと、曽さんは心底呆れたように、


「胖姐さん、私達と年齢がそんなに違わない若い女の子があんなことをするなんて、日本にも貧しい人がまだまだいるんですねぇ……。胖姐さんはあれを見て可哀相だと思わないんですか?ちょっとでもお金あげなきゃダメでしょう。」

「曽さんの言っている”あれ”って、あっちでダンスしている人達のこと?」

「そうですよ。まだ若いのに、路上であんな恰好して芸を見せているなんて、ヤクザが彼女達にやらせているんですか?」

「……????」(・・?


中国人出張者達は、どうやらストリートダンサーが”物乞い”で、お金を得るために、公共の場所で無理矢理ダンスを踊らされていると思っているようです。だから彼女達の境遇に同情して涙ぐんたり、寄付のために財布を出そうとしたようなのです。


「曽さん、彼女達は乞食じゃないよ。みんなに自分のパフォーマンスを見てもらいたいと思っている人達だよ。プロじゃなくてアマチュアだから、お金は取らないの。」

「え~~っ!!タダで!お金いらないの?ウソでしょう?日本って、豊かなんだなぁ……。」


ほぉ……っ、とため息をつきながら、感心したように言う曽さんを横目に見て、何とも言えぬやるせなさを感じる私なのでした。

今日は中秋の名月です。中国では『中秋節』と言って、月餅を食べながら、一家団らんをする日です。(一人暮らしの人は、離れている家族のことを思う日とされています)

私は月餅よりも日本の月見団子のほうが好きですねー。餡が甘すぎず、フレッシュなお餅の美味しさが味わえるので。皆さん、月餅はお好きですか?

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