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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第百二拾四話 歯医者でビックリ体験

海外で一番困るのは体調を崩した時です。

特に”歯痛”は、ほとんどの海外医療保険がカバーしていないので、外国で歯が痛くなるとすごく困ります。


最近は歯の矯正に大金を費やす中国人が増えてきたせいか、日本人医師がクリニックを中国で開業することも増えてきましたが、私が上海で働いていた1990年代後半は、上海のような大都会でも日本人歯科医師は全くいませんでした。(現地の医科大学に留学されている日本人はいらっしゃったかもしれませんが)


当時、もしも歯が痛くなったら、日本に緊急帰国して集中治療するか、または、現地の歯科医院で外国人患者を受け入れ可能なところを見つけるしかありませんでした。

私の同僚Iさんは歯の定期治療のために、毎月、飛行機で日本に一時帰国していました(もちろん自費)。恐らくIさんは当時貰っている給料よりも歯科治療にかかる費用のほうが多かったのではないかと思われます。


そんなIさんを見て、歯科治療にかかる高額費用にガクブル(゜o゜;;なっていた別の同僚Kさんは、勇気を出して現地の歯科医院にかかってみることにしました。当時の上海では技術に定評があり、外国人の治療も可能な私立のクリニックです。

上海人医師による検診の結果、なんと彼女は”親知らず”が虫歯になっていることが分かりました。


「右下の智牙(親知らず)が虫歯になってますねぇ……。治療しても、また将来的に虫歯が再発するかもしれないし、思い切って抜きませんか?」

「……えっ???(◎_◎;)、こ、ここで、今、すぐにですか?」

「はい。今日の午前の患者さんは、ちょうどアナタが最後なので時間もありますし。抜かないと、一時的には良くなっても、またすぐに痛みだしますよ。」

「………はい、お願いします……( ノД`)シクシク…」


医師の勧めにうなずくしかなかったKさん。

あちこち麻酔注射をされて、早速、治療が始まりました。

確かにその日の午前中の診察は彼女が最後だったらしく、あれだけ喧しかった待合室からは何も物音が聞こえてきません。聞こえるのは自分の歯を削るドリルの音と、室内の柱時計が時を刻む音だけ。


……ボーン、ボーン、ボーン、ボーン♪


時計が重々しく12時を告げました。

……と、その途端、


「あっ、お昼だぁ(^▽^)……じゃ、いったんここで治療を中断しますので、あと1時間そのままお待ち下さい。」


医師と看護婦はドリルを放り捨てて、その場を足早に立ち去ろうとしました。

後に残るのは、麻酔をされてまともに口も利けない状態で放置されそうになっているKさんだけ。(^▽^;)


「せ、先生~~(゜Д゜;)、昼ごはんも大事でしょうが、お願いですから歯を抜いている途中で放り出さないで下さい~~( ;∀;)」


医師の白衣の裾をがっちりつかみ、何とかそれだけを回らぬ口で言って、必死の形相で医師と看護婦を引き留めるKさん。

あまりのKさんの形相に恐れをなした医師と看護婦は、ブツブツ文句を言いながらも、治療を再開してくれました。

それから30分後、無事に”親知らず”を抜き終わり、ようやく治療椅子から解放されたKさんは、待合室で会計をしながら心の中でつぶやくのでした。


『食欲に負ける医師がいる国では、もう歯医者に行かない(-_-メ)』

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