第百拾八話 翻訳って難しい
中国語から日本語への翻訳を行う時、一番厄介なのが、『日本語をそのまま流用した単語』です。
特に中国にある日系メーカーが日本語の製造用語をそのまま中国語版の作業マニュアルに取り入れている場合、一見すると中国語のように見えるのに、読めば読むほど意味が分からない!(=_=)
例えば、『接着』という言葉があります。
日本語では”二つの物体の表面同士が接触して離れなくなること"、"くっつける"という意味ですね。
しかし、中国語では、”それから”、”そのまま続けて”、”手で受け止める”、というような意味になります。
だから『接着基板脚部接着』という文章があると、思わず「???」となってしまうのです。
この文章をそのまま直訳すると、『それから基板の脚の部分を続けて』となり、後続の内容と全くつながらず、意味が通じなくなります。
この場合の正しい日本語訳は『それから基板の脚部を接着する』です。
……誰だ、こんな変な作業マニュアルを作ったのは!!責任者出て来いやヽ(`Д´)ノプンプン
さらによく分からない中国語となっているのが、ネットの翻訳サイトを使って自動翻訳した文章です。
たまに職場で翻訳チェッカーとして他部署から助っ人に呼ばれることがあるのですが、よく意味の通らない中文訳になっているのは、自動翻訳機能で作成したものが多いです。定型表現はキレイな訳文になっているのですが、作業マニュアルのように専門用語がバンバン出てくる文章は、あまり意味がよく分からない(;^ω^) まだAIの翻訳能力には限界があるってことですかね~。
職場で、『胖姐さん、ちょっとこの部分の中国語を訳してよ。』と同僚や上司に頼まれることがあるのですが、前後の文章のつながりが分からないと、AIではなく生きている人間が翻訳しても、キレイな訳文にならないことがあります。
あくまでも『直訳だからね。前後の文章が分からないと正しい訳じゃないかもよ。』と断ってから翻訳するようにしているのですが、なかなか彼らには納得して頂けません。
しまいには、
「胖姐さん、直訳じゃなくて、その場ですぐにこなれた日本語には訳せないもんなの?」
と、ちょっぴり呆れ気味に言われてしまうのです。
高い能力を誇るプロの翻訳者でも、事前に関係資料を読み込んで知識をつけておかないと、とっさの対応が出来ないと聞いたことがあります。ましてや私のようなレベルの翻訳者ならば尚更です。
「せめて前後の文章を読んで、何について書いてあるのか理解する時間をくれよ……。」
と愚痴半分で思ってしまうのでした。(´Д`)ハァ…