第百拾四話 ウォーター! その②
前回に続けて”水”にまつわるお話です。
最近はあまり見かけることがなくなってきましたが、私が中国で生活していた1990年代後半の中国では、台所のシンクの上にガス湯沸かし器が取り付けられていることが一般的でした。高級マンションだと、外国製の湯沸かし器が使われていたと思います。
私が住んでいたマンションの台所にも、日系メーカーのガス瞬間湯沸かし器が取り付けられていました。
ある日、急に湯沸かし器の調子が悪くなりました。
炎の状態を確認するため、のぞき窓を見ると、青い炎が小さくなったり大きくなったり、ゆらゆらして全く安定していません。しまいには炎が消えてしまい、どうやっても火が付かなくなりました。その途端、台所中に漂う都市ガス特有のタマネギ臭。
「あ~~、とうとう壊れた……。管理事務所に言って直してもらわなくちゃ。」
台所のガス湯沸かし器を分岐して風呂にも給湯しているため、機械が壊れてしまうと、お風呂にも入れなくなってしまうのです。
私の連絡を受けて、すぐに管理事務所のスタッフが修理業者と一緒にやってきました。
「すみませんが、石鹸はありますか?」
「ありますけど……。何に使うんですか?」
「ガス管に石鹸水を塗って、ガス漏れしているかを確認します。お客さんの話だと、ガスがうまく付かないとのことなので、ガスが漏れている可能性があります。念のため窓を開けておいて下さい。」
「ひえ~~~っ!((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」
修理業者は、私から石鹸を受け取ると、慣れた手つきで石鹸水を作り、刷毛でガス管に塗っていきました。
「うーん、ガス漏れはしていないみたいだな……。じゃあ、もしかしたら……?」
と言って、今度はガス湯沸かし器につながっている水道管と蛇口を外して調べ出しました。
そして……。
「原因が分かりましたよ、これです。」
と、いくつかの小石を手のひらにのせて、私に差し出しました。
「あら、こんな石がどこに入っていたんですか?」
「水道管の中です。水道管が詰まって湯沸かし器に水がちゃんと供給されなくなったため、安全装置が働いて、火が消えてしまったんですよ。」
「………( ゜Д゜)ハァ?」
「水道水には石が混じっているので、これが原因で湯沸かし器が故障することが多いんです。もうキレイに掃除しましたから、当面は大丈夫ですよ。」
「えっ?中国でも水道水は濾過しているんじゃないの???」
後日、日本への留学経験のある現地の友人に確認したところ、中国では浄水の技術が日本よりも低いため、濾過をしても完全に小石を取り除くのが難しいのだそうです。また、市内のあちこちで大きな工事をしているため、水道管が傷つけられて砂利が混入している可能性もあるのだとか。いずれにせよ、数か月に一度は、業者にお願いしてガス湯沸かし器の点検整備をしてもらわないと危ないらしい……。
ひょんなことから、またまた中国生活の新たな怖さを体験したのでした。
ガス湯沸かし器の故障は怖いですよ。
私が上海にいた頃には、毎年のように不完全燃焼による死者が出ていました。知り合いの日本人女性も、当時、湯沸かし器の故障による一酸化中毒で客死されています。現在では電気給湯器に切り替わっていることが多いので、事故は減っていると思いますが……。