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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第百拾三話 ウォーター! その①

世界を探しても、水道の蛇口から出てくる水をそのまま飲むことが出来るのは日本くらいだと聞いたことがあります。


もちろん中国も、水道の水をそのまま飲むことは出来ません。

水の硬度が高いこともあり、生水ではお腹を壊してしまうので、いったん沸かしてから飲むことになります。

湯冷ましのお水が美味しくないからこそ、お茶文化が発達したとも言われています。


学校や職場には大きな湯沸かしボイラーがあり、一日のうち、決まった時間にお湯が沸かされます。その時間を逃すとお湯がもらえないことがあるので、沸騰直後に魔法瓶や蓋つきマグカップを持ってお湯を汲みに行き、お茶を入れて、長い時間をかけてちびちびと飲みます。

最近では、蒸留水やミネラルウォーターのガロンボトルの入ったウォーターサーバーが置かれていることのほうが多いですね。最近は日本でも同じような機械を見かけることが多くなりました。


日本人は中国に行くと、料理に含まれる油分や水の硬度にやられてお腹を壊してしまう人が多いのですが、その場合は、マグカップに入れたお湯に梅干し(昔ながらの製法の塩辛いもの)を一粒溶かしてゆっくりと飲み、他の食べ物はしばらく摂らないようにして、胃腸を休めるとよいとされています。

口に入れる水分をミネラルウォーターだけにするよう十分注意していても、なぜか中国滞在中にお腹を壊してしまうことがあります。それは、歯ブラシを洗う水に水道水を使ってしまったり、シャワーを浴びた時に口から水の飛沫が入ってしまったからなのです。また、外食時のサラダや果物を洗っているのが水道水ということもあります。


私が200X年に東莞工場で長期研修を行っていた時、工場のオフィスには、大きな蒸留水のウォーターサーバーがありました。蒸留水のボトルに貼られたラベルには、私の知らないメーカー名と市内中心部の住所が書かれていました。


「陳さん、あまり聞いたことのない水のメーカーだけど、このメーカーって有名なの?」


私が同僚の陳さんに訊ねると、


「はい、そうです。この辺りでは一番大きなメーカーですよ。水質が良くて美味しいでしょう?」


という答えがかえってきました。

後日、陳さんに連れられて、私が東莞市内中心部まで買い物に行った時のことです。


「胖姐さん、あれですよ、あれ!ウチの会社にある蒸留水の工場はあそこですよ!」


突然、走行中のバスの中から陳さんが窓の外を指さしました。

その方向を見ると、フェンス越しにかなり大きな敷地面積のある平屋の工場が見えました。

工業地帯のど真ん中にあるため、工場の周囲に樹木はなく、敷地に芝生すら植わっていないため、説明してもらわないと蒸留水を作っている工場だと全く分かりません。


「えっ、うそぉ~、あれなの?」(◎_◎;)

「はい。ちゃんとした工場でしょう?」

「確かにちゃんとした工場だけど、口に入れるものだし、もっと緑豊かで綺麗な環境に建っているのかと思っていたよ……。」

「胖姐さん、何を言っているんですか?そんな田舎にあったら不潔で飲める水なんて作れないですよ。何が入っているか分からないでしょう?大きなメーカーが高いレベルの技術を使って工場で大量生産しているからこそ、美味しい水が出来るのです。会社でも、蒸留水のメーカーをいくつか見学して、最終的にあそこに決めたんです。」

「………へ、へぇ~~。そうなんだ。」( ゜д゜)


現地の人との考えの違いに驚かされました。

中国人にとって、水とは自然の恵みではなく、科学技術の産物なのですね。

ちなみに私は蒸留水の微妙な味の違いが分かりません。ダメ舌ってことかな?

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