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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第百拾一話 成果のためなら何でもする

中国で毎年繰り返される一大イベント……旧正月(春節)。

このエッセイの第二十五話でも紹介しましたが、中国人にとって旧正月とは非常に重要な季節行事であり、家族の再会の場でもあります。

中国国内や世界の各地に家族が散らばって生活している人が多いので、一族が顔を合わせる機会は旧正月くらいしかありません。


日本でも歳末セールというのがありますが、中国でも同じように旧正月前になると大セールが始まります。衣類や日用品を初め、食料品もセールになります。特に日本でいうギフト用詰め合わせが人気です。中国でおめでたい色とされる赤や金色で彩られた箱に健康食品やお菓子を詰め合わせたものが、スーパーにドドーンと山積みで陳列されています。また、青果売り場では、ちょっと珍しい輸入果物を取り合わせた”フルーツかご”が人気です。


私が上海の日系流通企業で働いていた1990年代後半に、バイヤー修行の一環で、青果部門に配属されていたことがありました。

今から紹介するのは、その頃に日本人先輩社員から聞いた武勇伝(?)です。


上海の日系流通企業でバイヤーとして働くHさん(男性)は、旧正月を前にして非常に悩んでいました。


『……ヤバい、今年の春節セールの目玉商品がない……。去年と違う目新しさを出さなければ、お客様が離れてしまう……。』


上海のお客様は見栄っ張りだけど、金銭にはとてもシビア。目新しさを打ち出さなければ、財布の紐がゆるまないどころか、客足が離れてしまいます。

オフィスの机で頭を抱えて悩んでいると、上海出身の同僚の劉さんが声をかけてきました。


「Hさん、何をそんなに考えこんでいるの?」

「春節に何を売ろうか考えているんだよ。去年と全く同じというわけにはいかないだろう?」

「そうですね。……あっ、そうだ、今、日本で流行っている皮が黄色くないグレープフルーツがありますよね?あれはどうかな?」

「それって、スウィーティーのこと?中国にはまだ正式に輸入されていないでしょう。卸売市場でも見かけないし。仲卸でも取り扱っているという話は聞いたことがないよ。」

「確かに現時点では政府の許可が下りていないけれど、手段が全くないわけじゃないんです。あまり大きな声では言えないんですが……ヒソヒソ(=゜ω゜)ノ」

「……(・_・D) フムフム、なるほど……。でも、ちょっとそれは……。」

「これしか方法はないですよ!これでいきましょうよ。」

「他店に負けないためには、それしかないか……。よし、やろう!」


かくして、Hさんの勤め先のスーパーには、春節セールの目玉商品として、それまで上海には存在しなかった”スウィーティー”が店頭に並ぶことになったのでした。

案の定、新しい物好きな上海市民は、スウィーティーにくぎ付け!ちょっと手を伸ばせば届く値段で、味も甘くてさわやかということで、陳列すれば即完売の大人気商品となりました。


……でも、Hさんがどのような手段で、スウィーティーを上海に輸入したのでしょうか?


それは、イスラエルからスウィーティーを満載して日本に向かう冷蔵船が、上海近くの航路を通るときいたHさんは、小さな船をチャーターして貨物船の近くまで行き、直接、乗組員と交渉して、貨物の一部をこっそり横流ししてもらったのです。


「おかけで地元のお客様に、”お正月の手土産にピッタリ!”って、大人気だったよ。総経理にもほめられて、めでたしめでたしだよねぇ。」


と、Hさんは笑って語っていましたが、それって、いわゆる密輸ってことじゃ……((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

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