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Act28.5:蠢く闇

三章プロローグ的な。

安っぽい伏線張ってます。

「………仕損じたか、小賢しい人間め」


 暗い闇の中で、低い声が響く。

 闇の中央に、一人の男がいた。

 切れ長の目。高い鼻。艶のある口元。

 どれを取っても麗しい顔立ちだが、それは人間ならばの話。

 青い肌と口内でちらつく牙、長く尖った耳は、男が人間でない何よりの証明である。

 灰色の髪を手でかき上げながら目の前の水晶球を睨む。

 水晶球の中には、黒髪黒眼で、籠手と脛当てを付けた目付きの悪い少年が映っていた。


「今代の勇者…アカツキシズヤ…どうやらただの餓鬼では無いようだ」


 男は少年…赤月静也の戦いを見て忌々しげに舌打ちした。

 細身の少年が圧倒的な腕力でケルベロスを吹き飛ばす姿は、映像越しでも凄まじさが伝わってくる。


「いくら身体能力の高いリラオード人とは言え、魔法による強化も無しに、あれほどの怪力を発揮するとはな。…それにケルベロスの洗脳も解くとは…侮れんか」


 男は顎に手を当て、唸った。


「……ゼファー様?」


「む…貴様か」


 男の背後から声がかかる。

 背後には黒髪で人間と変わらぬ容姿の青年が、ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべて立っていた。


「一体何を見てるんですか?」


「うむ。今代の勇者が召喚された様なのでな。小手調べに山犬の巣へ送り込んでやったのだが…」


「………へぇ」


 青年は男の言葉を聞いて興味深げに水晶球を覗き込む。


「………うん、強いねぇ、彼。ゼファー様、このワンちゃん相当強いでしょ?」


「ああ、我らが主が直々に『調整』した個体だからな。いや、個体『だった』が正しいか」


 ゼファーと呼ばれた男は、青年の言葉に頷いてみせる。

 青年は細めていた黒瞳を静也に向けていた。


「……うん。強い強い。………でも、僕はキミより強いよ。これからも、ずっと、ずっと」


「………ソウよ、何を言っている?」


「ああ、いえ、なんでもありませんよ」


 ソウと呼ばれた青年はゼファーに向かって微笑んだまま首を振る。


「じゃ、僕は出かけてきます」


「…どこに行く?我らが主の眠りももうじき覚めるというのに」


「散歩です。ちゃんと時間通りに戻ってきますから、ご心配なく」


 ソウはゼファーの苦言にニコニコと笑いながら手を振って闇に消える。


「キミは僕を超えられない。絶対に。ねえ、そうでしょ?………………ツキやん」


 向けた者に聞こえるはずもないソウの言葉は、闇の中に溶けていった。

次回からまた静也サイド。

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