死にたくない
本当の“死”を目の前にして、オレの腕も足も、ガクガクと震え始めた。
たった数刻前、激情とともに命を賭けたはずのオレを――まるであざ笑うかのように。
「ち、ちくしょう・・・」
その様子を見た死神野郎が、訝しげに眉をひそめた。
「お前・・・その腕前で、命のやり取りに慣れてないのか?つくづく、ワケのわからん奴だ」
そう言いながら、ヤツは剣を持ち上げ、ふわりと近づいてくる。
――次の瞬間、鋼鉄の嵐が吹き荒れた。
暴風のような剣閃を何とかかわし続けるも、オレの体は徐々に斬り刻まれていく。
痛い。苦しい。
――死にたくない。どうにかして助かりたい。
気がつけば、そんなことしか考えられなくなっていた。
やがて嵐のような攻撃がやみ、そこには無傷の死神と、ボロ雑巾のようになったオレがいた。
「へえぇ、普通は・・・っていうか大体みんなコレで死ぬんだけど。この剣舞をここまで捌くとはねぇ・・・やるねぇ。でもそんなガチガチに縮こまってるのは、やっぱり初心者なのかなぁ」
勝てない。いやだ。死にたくない。助かりたい。土下座でもすれば許してもらえるだろうか。
「・・・この通りビギナーでして、ここは同業のよしみで、見逃してもらえると嬉しいんですけど・・・」
オレの言葉を聞いて、うーんと考え込むようなそぶりを見せる死神野郎。
「うーん、そうだなぁ、仕方ないなぁ、まぁ、この仕事から手を引くなら別にいいかなぁ。その代わり、分かってるよな?またこちらから連絡するから、恩は返せよぉ」
肩をすくめて剣を背中に収める死神野郎。
さきほどまで突風のように叩きつけられていた殺意が、フッと掻き消える。
・・・た、助かった。




