岐路
酒を飲むだけが目的なら、途中に何軒か酒場はあった。
それでも、俺は結局ここに来てしまった。
ここに来ればシャーロットとまた、会えるかも――。
いや、たとえ会えなくても、彼女があれからどうなったか、何かわかるかもしれない。
・・・わかったところで、自分に何ができるわけでもない。
酔っぱらいの自己満足だ。
でもやっぱり気になるじゃないか。
ギィ……と、酒場の扉を開いて中を見渡す。
以前と同じく、酷く暗い。客は数人いるが、皆テーブル席の隅で飲んでいて、顔まではよく見えない。男しかいないようだ。
各テーブルの上に置かれているランプのわずかな光の揺らめき。
まるで明るさが足りていないその空間を進み、店主の元へとたどり着く。相変わらずの筋肉隆々系スキンヘッドだ。目元にタトゥーなど入っている。
「ん?あぁあんたか。しばらくぶりだな。つーか酒臭っ!」
「どうもどうも。実は、人を探してるんだけど・・・」
「まぁ、まずは座って何か頼んだらどうだ」
「あ、はい」
俺はバーカウンターに備えられた椅子に座り、蒸留酒を頼んだ。すぐにグラスへ蒸留酒を注ぎ、こちらに手渡すスキンヘッド。スキンヘッド店主は相変わらず怖い顔だ。ハゲてなければ結構なイケメンだっただろうに。
「ハゲてねぇよ。こりゃ剃ってんだ」
いけない。声に出てしまっていたようだ。俺は誤魔化すようにグラスを空にする。相当に強い酒だ。一気に頭に血が上る。
「一気かよ・・・大丈夫かお前?もう大分酔っぱらってるように見えるぜ」
「酔ってないですよ頭が眩しいんですよこの太陽光発電」
「酔ってるじゃねえか。なんだよタイヨーコーハツデンって」
「フフ・・・貴方の頭皮が無ければこの店は少しばかり暗すぎますね・・・」
「貴女の笑顔みたいに言って口説いてんじゃねえよ。人探しだったな?誰を探してるって?」
「シャーロットって女の人だけど・・・」
「あぁ、こないだお前と一緒にいた美人さんだな。なんだ、乳を揉みたかったのか?」
「はい」
「ほんとに何しにきたんだお前」
「もちろんナニに決まってるじゃないですかヒッヒッヒ」
「もう帰れお前。というか、もうあのお嬢ちゃんには会えねぇよ」
「冗談ですよ本気にしないで・・・。ん?もう会えない?」
「蛇凶に連れていかれちまったんだとさ。酒に薬を混ぜられたんだろう、蛇凶の男が持ってきた酒を飲んだらコロリと寝ちまったらしい」
「・・・・・・」
「こんな店をやってるとな、嫌でも色んな情報が入ってくる。嬢ちゃんは、あんまり言いたかないが……頭のイカれた貴族の“そういう目的”で買われたそうだ。どんな目に遭うかなんて、考えたくもねえがな」
「・・・・・・」
「嬢ちゃんの両親ももう、死んでるだろうとよ」
「・・・・・・」
「あんたもあの嬢ちゃんのことは諦めな。剣の腕に覚えがあるらしいが、貴族と本格的にやりあえばまず、生きていられねぇよ」
「・・・・・・」
「ほれ、これでも飲んで忘れろ」
店主の気遣いだろうか、頼みもしないのに目の前に置かれた、グラスになみなみと注がれた酒。
そいつをしばらく見つめて――
グイッと飲み干す。
喉を焼き、体の奥へ落ちていった熱いものは果たして、なんだったのか。
いったい、なんなのだろうか、この気持ちは。




