8杯目、危険な兆候
「どっ・・・どうぞどうぞ」
何か変な声が出た。自分でも緊張しているのがよく分かる。なんせ、絶世の美女と言ってよい。綺麗系のクールビューティだ。
彼女は注文を済ませると、こちらを向いて言った。
「あの、少し尋ねたいことがあるんだけど、いいかしら?」
透き通るようなブルーの瞳に、思わず吸い込まれそうになる。俺はそれを振り払うようにして、6杯目のビールを一気にあおる。
「はいっ、何でしょうか?」
「この店で、蛇凶の戦闘員を10人以上まとめて倒した剣士が用心棒をしてるって噂を聞いたの。あなた、知らない?」
おっと、なるほど。あの時は目撃者が店の中にかなりいた。噂話が一瞬で広まっている予感。
「よ、用心棒ですか・・・」
これは何と答えたものだろう。ゲラルトとの会話を思い出す。
闘わなくてもいいから、この店で寝泊りしてくれと言われ、俺はそれを承諾した限り。現状、用心棒と言うには違和感を覚える。というかたぶん違う。ここは否定しておいたほうが良いだろう。なにか、厄介ごとの匂いがする。私はその、お強い用心棒ではありません。何も知らない通りすがりで関係ありませんよ。
「ええ。あたし、強い人って好きなの。憧れちゃうわ。一目会いたいと思ってね。知らない?」
「それは私です」
うん。ずっとこんな綺麗なお姉さんとお知り合いになりたかった。ような気がする。
何も知らないフリをすることはないさ。
そう、俺はこの店の、用心棒なのだから・・・。
彼女はジッとこちらを見つめて言う。
「何だかそんな気がしていたわ。フフッ、それにしても随分と立派なモノをお持ちね」
彼女はからかうような声色で、俺の股間を指差して言った。
えっ・・・
―――し・・・しまった!
何ということだ。先ほどからチラチラと横目で彼女のはだけた胸元を見てたので、いけない所がエレクトしてしまっているのだ。
しかし彼女はニコリと笑って、誘惑するような瞳で流し目をしてくる。
二重で少しつり目がちのクールな目線。
俺は、8杯目のグラスを空にする。
「ハ、ハハハ、これはお恥ずかしい。気付かれてしまいましたか」
俺は誤魔化すように笑いながら、うつむきつつ小声で言う。本当に恥ずかしい。
しかし、クールな外見とは違い、随分と妖艶な女性だ。年下のクールビューティにこんな風にからかわれる日が来るとは思ってもいなかった。
しかし、彼女は俺の狼狽した様子を楽しむかのように、ニコリと笑ってジッと俺の目を見つめ、さらに告げる。
「ええ。もし貴方が嫌でなければ、是非拝見してみたいわね」
マジか。この子はいったい何を言っているのだ。




