第12話 異世界ギャンブラー対決
「お前、異世界転生者だったのか!?」
トールは椿の話を聞き、変な格好をしていることや言動の異様さに納得がいった。
昔一度だけ異世界からきたという男に会ったことがある。
その男というのはギフトをこの世界にもたらした張本人で、ソイツも変な格好をしていて、なんだ気味の悪いヤツだった。
でもその男は俺に対する特別な敵対心みたいなものは持っていなかった。
いや、その時はただの学生だったから持たれていなかっただけかもしれないが。
だが今の椿は明らかに魔王を殺すと言って敵意を剥き出しにしてくる。
復興作業中のアルカンディアで問題を起こされては困る。
ここは魔王として国を守る義務を果たすとしよう。
「世界は俺を中心に回る!」
俺は『世界は俺を中心に回る』を初手で発動。椿という男は得体が知れない。出し惜しみ無しで、俺は2番、3番、そして4番の星を展開。椿がどう動くかを見定めてやることにした。
「ほぇ〜、お前さんも物浮かしたり出来るんか! なんや、パチンコの球か? なんて、そんなわけ無いわな!」
コイツ……やっぱり只者じゃ無い!
トールは能力の確信に迫る一言を口にする椿への警戒度を上げる。
トールの『世界は俺を中心に回る』は自分を中心にして周りにギフトを持った星を配置する。宇宙を想像して考えた能力ではあるが、椿の言ったパチンコというのも、実は能力の土台なのである。
花札という博打を知らないトールと『世界は俺を中心に回る』の能力をまだちゃんと理解していなかった椿。
偶然の出会だったが、アルカンディアのカジノ前で今、異世界ギャンブラー同士の戦いが開始されるのであった。
「やる気やね。ほんならいくで。こいこい!」
椿は空に浮かぶ花札を操作。48枚の花札の内16枚をトールに向けて発射する。
花札の切れ味はかなり高い。
念の為だ、ここは4番ではなく2番を使う。
2番星の能力『俺に敵はいない』を防御に回す。
2番星のリングを高速で回転させ、飛んでくる花札を叩き落とした。
「……」
椿は攻撃に回した花札を一瞬で叩き落とされたのに表情はまるで変わらない。
ただ黙々と俺の2番星を見つめていた。
椿が何か考えていると思った俺は、防御から攻撃に移り、4番星の能力『薙ぎ払う嵐』を発動。風の刃を椿に向けて撃ち込む。
それを見た椿は指をクイッと曲げ、数枚の花札を前面に展開する。
「赤短!」
花札は赤く光り、飛んでくる風の刃を飛散させる。
爆風がこっちまで届き、俺は一瞬顔を伏せてしまった。すると
「ここや! 青短!」
花札は俺の2番星が回るリングのギリギリ外まで近づく。そして椿の『青短』という叫びとともに青く光りだした。
「!?」
「こっちこいや!」
花札が青く光ると、俺は何かに引っ張られるように椿の方へどんどん近づいていた。
何をされたかは分からないが、近づけるなら好都合。
俺は2番星を回転させたまま、自ら椿に向かって行く。
だが、椿の策はこれで終わりでは無い。
近づく俺を見て、タイミングを測り、ある地点に到着した瞬間に椿はまた叫び出す。
「これで終いや、三光!」
「何っ、しまっ、!?」
足元に設置されていた3枚の花札は白い光を発光し、爆発する。
椿の花札は絵柄の組み合わせによって発揮する効果が違う。
『赤短』は斥力。
『青短』は引力。
『三光』は爆破。
『赤短』で風の刃を弾き、『青短』の引きで『三光』を設置した場所までトールを誘導する。
2番星の能力が触れたものを何でも弾き飛ばす能力と踏んだ椿は、2番の軌道では触れられないトールの足元ならと考え、この策を実行したのだ。
椿の考えは見事にハマり、2番星の回転する内側で『三光』を発動することが出来たのだ。
「さ〜てどうなったかな……んにゃ!? そう簡単にやれらてくれないか。強いな、魔王って!」
「いや〜、かなりびっくりはしたぞ。舐めてかかってたら直撃してたかもな」
爆風が晴れると、椿の前には無傷のトールが現れる。
「どうやって俺の攻撃を凌いだ?」
「凌げてはないさ。ちゃんとくらったよ。まぁ、俺じゃなくてコイツがな」
俺は指で3番星を指差す。
3番星の能力は『|痛いの痛いの飛んで行け《ペインサクリファイス》』
俺自身が受ける効果をコイツが肩代わりしてくれる能力である。
3番は展開しておくだけで俺がくらうダメージを0にしてくれる。
受け切る許容範囲はあるが、さっきの爆発ぐらいなら問題なく吸収してくれるのだ。
「能力を3つ持ってるのか、なるほどね」
椿の中でトールは3つも能力があると断定する。
しかし実際はそれ以上の数の能力を持つトール。4つ目を出すかどうかを迷っていたが、今回は3つだけでいけると判断し、2番星のリングを回転させ、パージする。勢いに乗った2番星が椿を狙う。
「にゃにゃ、それ飛ばせるんか!? でも触っちゃダメならそらすだけ!」
2番星の飛ぶルートに花札を配置。
レールのように配置された花札は2番星の軌道少しずつそらし、椿直撃のルートから外すのであった。
俺の2番星をあんな方法で!?
今までいろんな国のヤツらと戦って来たが……もしかしてコイツ、1番強いんじゃないか?
異世界から俺を殺しに来たって言ってたが、目的は何だ?
俺は椿に話しかける。
「俺を殺しに来たって言ったな。理由は何だ?」
「知らん」
「そうか、なら……は? 知らない?」
「理由は知らん。神に頼まれて仕方なくやっとるだけや。俺自身は神の言うことを聞く理由があるけど、そっちは言えないんだよな、ごめんな」
椿はごめんなさいのポーズで俺に謝って来る。
神……何者なんだ?
「その神ってのは……」
「今日は終いにしよか! なんか疲れたしな。ほな、また今度どっかでな、魔王さん」
俺は椿に再び声をかける。
しかし、椿は俺の話を最後まで聞かず、その場から立ち去ってしまった。
追いかけることは出来たが、椿の余裕そうな表情を見て、まだ何か隠し球を持ってると思い、深追いは辞めておくことにした。
この鬼屋椿という異世界から来た男と出会って以降、俺は多くの転生者たちと事を構えることになったのである。




