3話 レシア
2人の神、アースとプルートゥをそれぞれの星に戻してからは、特別最悪の事態は避けられた
アースは初めに大気を戻し、緑を再生する
それから地球は改めて世界を再構築した
海に居たモノが陸に這い出す
そして陸での生活を確立していく
意志と姿
それを素晴らしく思ったのか、アースは【人型】の生き物を創っていった
僕達と似た姿のヒトが増えていく
それに僕達同様の意志を持たせた
初めは良かったが、世界が進化するにつれて個性が現れる
自分本位の輩も居るようだった
アースからはその相談も受けたが、結論としてはそれも【進化の美しさ】と位置付けられ、発展には支障無しとなる
実際、常に一番を目指す者が居ることによって、より良い物、いわゆる発明が生まれた
最初は木の枝に石をくくり付けた槍らしき物など、些細な物さ
楕円の石で草木を切ったりもあったな
包丁という物だったかな?
それらが地球を、ヒトを潤した
だが、やはり人と人とがぶつかり合う痛々しい現状に、アースは心を痛める
いつも僕の元に来ては現状報告と進化の相談をしていた
僕だって暇な訳じゃ無い
それでも極力、相談には乗った
研究熱心なその性格を見込んだ僕は、僕のレプリカを創る事に決めた
意志を持ち
僕に似た力を持ち
敬う事を忘れない
そして優しさを兼ねた男型の僕の分身
それに僕の【想い】を持たせ、アースの相談役としたのだ
アイツは面白い男だった
僕の分身であるが故の知識や力
それを持ちながら自信過剰にならない器
そう創った訳だが、それ以上に大した者と言わざるおえない
本来は傲慢になってもおかしくない、他の神とは違う力
同じモノを欲されても困る
だからこそ、僕のレプリカであることは誰にも秘密だった
アースにすら、だ
他の女型神に能力、才能の訳を聞かれた事があっても秘密を貫く
その時には決まって奴はソウ言っていた
【俺は突然変異なんです♪】
ってな……
なんにせよ、アースの人一倍強い熱心さを見込んでの相棒
いつも地球と優しく寄り添えるように、地球の周りを回る星
それが僕のレプリカ
《ムーン》だ
おいおい……
苦笑いするなよ……
まあいい……
僕の独り言だからな……
とまあ、そんなことで、アースは僕に相談するよりも、僕より自由が利くムーンを頼り始める
そして、お互いの理想を話し合いながら、新しい地球が創り上げられた
間もなくさ……
ある意外と取れる出来事が起きた
奇妙だった
あり得ない事では無いが、やはり奇妙が一番似つかわしい
アースの体系が変わった
相談役から離れたことで、たまに会う僕にはすぐに変化が解った
ふくよか……
そんな体系になっていた
特に腹だ
腹部がポッコリと膨らむ
そして間もなくした時だった
僕の宮殿にアースは連れてきた
布に巻いた【ヒト】
赤ん坊を抱いて現れた
驚いたよ、とても……
今のヒトの変化、増殖に繋がる物を持ち合わせ創った訳では無かったのに、子を産んだ
相手は解る
ムーンは相棒から、伴侶となった
愛おしそうに子供を見つめ、僕にも子供の表情を見せるアース
その子供をアースは【レシア】と呼んでいた
僕からすれば、アースは我が子の様な者さ
その子……
僕は祖父?
いや、祖母?
どっちでもいいか…… ハハハ……
うん……
僕はその日、祖父となった
レシアはすくすくと育っていった
地球とカタストロフィを行き来する生活は負担になるだろうと、もっぱらレシアの面倒は僕が見た
最初から成人女性として女型神を創り上げた僕からすれば、子供の成長を見守るのはとても有意義で、満たされた時間だった
親バカ
いや、祖父バカって言うなよ?
僕の城に噴水を創り、花壇を設ける
彼女が成長するにあたり、教育に良さそうな物は僕が揃えた
僕の願いは、心の優しい女性になって欲しいことだけ
自然を知り、世界を知る
誰にでも慈悲を持つ女性になって欲しかった
それが……
今更……
後悔する事であっても、そう思っていた
あの時までは……
まぁ、その話は追々しようか……
ともあれ、どんどん彼女は成長する
齢5歳となった頃には、何かが見えていた
それは世界か……
はたまた理解出来ぬ異形のモノか……
僕はある物を彼女に伝える事にした
力……
彼女のコレからに、何かが起きてはどうしようも無い
他の神にも秘密にしていた僕の力
それを教えた
それこそが【ラピス・ラズリ】
素晴らしかった
脅威に思えるほどに、な
彼女は三日でラピスを完全にモノにした
あり得ない程の才能……
力との相性
当たり前と言えば、当たり前ではある
レシアは、僕の娘と、僕のレプリカから産まれた世界を紡ぐ者
彼女の世話をしていた侍女達は言った
その力を呆然と直視し、呟く様な、消え入る様な……
そんな声を、揃えて言った
【奇蹟の女神】とな
もう解るだろう?
この丘が【女神の丘】と言われる由縁
この断崖絶壁の丘は、初めてレシアがラピスで砕いた山の半分なんだよ……
継承した3日目の昼にな