1話 世界の始まり
僕は目の前に広がる美しい景色を見ながら口を開いた
【昔な…… この世界には何も無かった…… 本当に何も…… 何も無かった…… 闇…… それだけさ、在ったのわね】
僕は思い出す
何十億年も昔の事だ
口にし、思いを込めながら、モリサダと云う男
に話した
闇だった
本当に、ただ、何も無かった
世界は無かった
居ただけだ
僕が、ソコに……
それでも僕はソコに居た
ただ、ソコ居た
闇に囲まれてね
でもさ、人の感情とは違うかも知れない
それでも何だろ?
寂しさ…… かな?
多分、それに似た気持ちだったんだろうね
何か目的を持ちたくなった
だから手始めに光を灯した
意外と巧くいって驚いたよ
でもすぐに消えた
僕の意識がソコに無いと光は直ぐ消える
だから、僕は僕の意識から切り離した大きな光の塊を世界の中心に創り上げた
正直、大きすぎたかと思いもしたが、まあ、結論としては丁度よかったようだ
その光の塊は、後に【サン】と名付けられた
場所が違えば【太陽】だな
僕の愛する地球って奴の言い方をすれば、ね
光が産まれたことで、何故か少し、満たされた
折角だ
これを機に僕は創造ってやつをしてみようとした
アート
自己満足の作品創りさ
取りあえず何でも良い
先ずは小石の様なモノを作った
粘土の様な物も
水の様な物も
水はソコでは霧散したが、まぁ、ありとあらゆるモノを創ってみた
個体として残るものは石が丁度良い感じだった
大きい物や小さい物
創っては気に入らないモノから壊し、また創っては壊した
幾度となくそれを暇潰しとして繰り返す
それによりサンのみが輝く世界には僕の駄作の岩石が浮遊した
ある時、僕の考えの及ばない事態が起きる
目を向けていなかった宇宙空間に、僕の駄作
その岩石がそれぞれ衝突し、それぞれを融合したと思われる巨大な岩の塊を見つけた
面白い
創造はコウでなくては楽しみが無いよな
予定外が僕の創造を加速させた
その塊を僕は理由を持って破壊した
なぜソウなったのか分析したかった
そして観察の後、改めて他の塊を創った
太陽の近くから1個目の岩の融合体を形成する
その塊に名も付けた
【マーキュリー】
コノ塊は若干失敗だ
太陽が近すぎて表面温度が高すぎる……
本当に岩の塊にしか成らなかった
次は美しい色合いを兼ねた塊
それを【ヴィーナス】と名付けた
マーキュリーからは遠ざけはしたものの、やはり暑すぎた
まあ、試しに創った星だ
所詮は自己満足のアート
サンの次に輝いてくれるヴィーナスで有れば良い
そう思った
次は【アース】
コレは意外だった
勿論、すぐにどうという事は無い
だが妙に青く、そして緑が見えるマーブル模様が付いた
それも、塊の反対側だけ……
まあ、いい
そんな新しい創造と変化に楽しみを覚え、僕は次々と塊を創った
【マーズ】
【ジュピター】
【サターン】
そんな名を付けていった
アースには妙な水が溜まり、変な物が大地に芽吹く
そんな変化をもたらしたのに、他の塊にはそういった傾向が見られない
それにつけ、アースですらサンが光を当てない塊の反対側はそういった変化が見られない
妙だと思い、塊をサン中心に回してみた
それぞれも回転させ、変化を観察する
今度はアースの塊、その全域に色が付いた
それぞれの変化を見たくて一度サンを消滅させてみる
そこで変化は無かった
妙な物だ
サンから見えれば、小さすぎる塊のそれらでもサンが必要で有ることは理解出来る
ただ、観察しているだけでは面白くも無い
それで創ったのが、もう一つの世界
カタストロフィさ
この世界とは別次元に作り上げた平面の世界
観察するための世界
宙に浮いているだけでは見える物も見えない
足を付け、体感する事で何か他の物が見えるかも知れないと思ったんだ