32.贈り物を考えた
またまた短いです、申し訳ありません。
トイレから戻ると、オークションは終了していた。
「森田さん、すみませんでした」
「いえ、ご体調は如何ですか?」
「ええ、少し落ち着きました」
「確かに、あの金額はやばいね」
森田さんに謝り、弟は顔色は青いもののなんとか冷静を保てているようだ。
流石に上がりすぎではないだろうか?
前回は350万ドルと聞いてたのに、今回の落札額は405万ドル。
日本円にして約6億?宝くじ当選もいいところだ。
でも宝くじと違って、オークション手数料や税金がかかるから手元に残るのはどのくらいなんだろう?
それでもすごい額だ。
税理士さんに相談だな、知り合いはいないけど。
森田さんにいい人紹介してもらえないか聞いてみよう。
「もしご体調が問題ないようでしたら手続きをいたしましょうか」
「……はい」
詳しくは教えてもらえなかったが、ミスリルを落札したのは海外のとある製鉄会社らしい。
自社でクラス鍛治士を育成している会社だとか。
ミスリルの武器がもし完成したならば何億になるのか想像もつかないな。
最低でも405万ドル以上ってことだろうし。
誰が購入するのか気にはなるが、まだミスリルを加工できる人もいないからまだまだ先の話だろう。
この間岡山上級ダンジョンを攻略したような人が購入するのかな、なんて関係ない方に思考は飛んだが、その人はそもそもミスリルを持っているから、買うよりも作ってもらうだろうと思い直した。
作るのも高そうだ……
私に関係ないことばかり考えていたが、その間もテキパキと森田さんは諸々の手続きを終えてくれて、帰宅することになった。
森田さんに再度失態を謝り、また来ますと言ってIDCを後にした。
結局私はここに何をしにきたのか……見にきただけ、失態をおかしただけだ。
♢ ♢ ♢
「ただいま……」
「ただいまー」
弟と共に実家へ帰ってきた。
しかし、父からも母からも返事がない。
留守なのだろうか?
と思ったら、固まったままの父と母がリビングにいた。
テレビではニュースが報道されているが、先ほど終わったばかりのオークションの話でもちきりみたいだ。
「あ、見ちゃったよね……」
「つ、つき、あんた大変なことに……」
「……」
母の動揺がひどい。父は固まったままだ。
「ね、わたしもさっき大変だった。でも、税金とか色々引かれるから手元にはもっと少ない額だからね残るのは」
「だ、だけど……ふぅ、そうね、落ち着きましょう。私が貰ったわけでもないんだから。ちょっとビックリしすぎちゃったわ。お父さん、お父さん大丈夫かしら?」
母が父の顔の前で手を振るもまだ放心状態のようだ。
弟も肩を揺さぶって、なんとか父の正気を取り戻したようだ。
「ああ……二人ともおかえり」
「大丈夫?」
「大丈夫ではないが、もうどうしようもないだろう」
「まあ、そうだね。私も落ち着いてきたよ。宝くじが当たったと思ってる」
「そうだな、無駄遣いせず大事に使いなさい」
今まで育ててもらって、今は居候までさせてもらって、何か恩返しをと思ったが、実家のローンはすでに終わっていると前に聞いた。両親が頑張って働いた証だと思う。
退職金も出て、貯金もあるだろう両親に何が返せるだろうか?
そう言えば、新婚旅行をしていないとずいぶん前に母が愚痴っていたような気がする。
ならば、ちょっと贅沢なクルーズ船の周遊旅行をプレゼントなどどうだろうか?
大金が入るからとちょっと気が大きくなっているかもしれないが、これくらいはいいだろう。
弟を「テント」のリビングに呼び出し、この間できていなかった相談をする。
「ねえ、今度の母の日、あんた何あげる気?」
「あ、俺も相談しようと思ってた。姉ちゃんの「可動掃除機」羨ましそうに見てたから、ロボット型掃除機にしようかなって」
「やっぱり。私も初めそうしようかと思ってたのよね。でも、お母さん前に新婚旅行してないって言ってなかった?」
「え、そうなの? 知らない」
「……確かね。豪華客船の旅行とかどうかな?と思って」
「ええ!いいなあ!俺も行きたい!」
「なんで、あんたもよ? 仕事があるでしょう」
「有給使う!」
「いや、だから新婚旅行の代わりだって話してるじゃん。あんたはあんたで自分の金で行きなさい」
「ちぇっ」
やはり図々しい弟である。まさかの両親の旅行について行こうとするとは。
「まあ、父さんも退職して時間あるみたいだから良いかもね。旅行の間姉ちゃんがこの家にいればいいし」
「そうね。それならお母さんたちが行ってる間は、近場の中級ダンジョンに挑戦しようかな」
あまりに高いと受け取ってもらえないと思ったから、弟と相談しながら10日間くらいの日本一周プランにした。
日程は7月にしておけばきっと予定を空けてくれるだろう。
しかし、まだ落札金額が入る前から気が大きくなってる気がする。
これはいけない兆候だ。
金に任せてアイテムまで買い漁りそうな気さえしてきた……
ダメだ、税金諸々確定したら、いくらか寄付しようと心に決めた。
まずは中級ダンジョンを攻略できるくらいまでレベルを上げることを目標にして、しっかり攻略でアイテムを集めていこう。
まあ、たまには購入もアリかもしれないな、なんてちょっと自分に甘い。
オークションの後からは千葉市中級ダンジョン、船橋市中級ダンジョン、市川市中級ダンジョンをメインにレベルを上げていった。
たまに弟も土日を使って一緒に潜り、レベルを上げた。
弟のライフを削った船橋市中級ダンジョンも、今や余裕を持って階層を進めていて「トラウマ克服だ!」と喜ぶ弟を見て、「あ、そう」と特になんの感情もなく答える。
人型のアンデッド、ゾンビにももう慣れた。
人の順応性とは凄いものだ。
2日はモンスターとの戦闘の日、1日休みを繰り返し、たまに地上に戻ってよっちゃんに高級ステーキを奢ってもらって、またダンジョンに潜って。
記憶はないんだけど、“無姫”が私だったなら、その時と似たような生活を今送っているかもと思った。
いや、“無姫”さんはもっとストイックだったかもしれないが。
そんなダンジョン生活をしていたらいつの間にか母の日前日。
母の日のプレゼントはなぜか一緒に渡すと弟が言うので、慌てて実家に戻った。
そして、母の日まではステータスを見るのも我慢しようと勝手に決めていたので、明日プレゼントを渡したらステータスを確認する。
これまで何百体と倒したから確認するのが楽しみだ。
あ、ステータス確認よりも先に確認しなければならないことがあった。
先日、森田さんからミスリルの落札額から手数料を引いた額の入金がされたので確認をと連絡が来ていたのを思い出す。
これも、実家に帰ってから確認しようと思っていた。
実家の私の部屋にいき、「テント」を出し、「テント」のリビングにあるソファに正座をした。
そして、銀行アプリを開き、残高を確認する。
……気絶した。
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