まずは味方から
「……くっ、油断した……ぐはっ!」
胸を掻きむしりながらウィンが、倒れる。
「お、おいウィンっ! てめえ!! ……ぐあっ!」
続けて、倒れる俺。
「ちょわー、ふぁー」
椅子の上で両手足を縛られているリーが奇声を上げ、顎をしゃくる。
倒れたはずのウィンが音を立てずにポケットからペンのような形をしたものを取り出し、リーの右足首に向ける。ジッという音が聞こえると、俺とウィンは立ち上がり、リーの拘束を解いてやる。
「まあ、これでしばらくは誤魔化せるだろう」
「ってか、死んだって思わせるよりも、まったく見当違いの場所に逃げたと思わせた方が良かったんじゃねーのか?」
「……咄嗟なんだから文句言うなよ。いずれにしても軍は僕らの死体を見るまで諦めないさ」
ヌンチャクを見たリーが叫んだのは、興奮したからではなく、盗聴機能付き発信器の存在を知らせるためだった。
それを理解したウィンの対応を見て、とっさに察して俺も合わせたのだが。
「ぶっちゃけ、外国に来て浮かれてたのかもしれねえな……こういうもんがあるって忘れてたぜ」
俺は、リーの足首に巻かれた修行用圧縮鋼バンドに付けられた蜘蛛型の発信器を取り、握りつぶした。
「ありがとう、リー……」
礼を言うウィンを無視して、リーはいきなり、潜入作戦用の黒いジャンプスーツを脱いですっぽんぽんになると、さっそく俺がやったシルク製の服に袖を通す。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ……」
それから窓に映った自分の姿を見て、
「ふぉあちゃーーーーっ!」
宙空に向かって蹴りを繰り出した。
「よかったね、リー。君の夢が叶ったじゃないか」
「あちゃ、ふぉーあ」
蹴りのままの姿勢で上げている方の足を見つめながらリーが呟く。
「……靴だっていずれ手に入るさ。なんたって僕らは自由なんだから」
どうやらこいつは、足元がまだ気に入らないらしい。
確かに、シルク製の服に軍靴は違和感がある。
ウィンの言葉に慰められたのか、リーは上着を脱いで、上半身裸でヌンチャクを振り回し始める。
「どうやら、俺たちに追い風みたいだな。おい、リー! さっそくだが明日から任務だ。ただ飯食いを引き抜いたわけじゃねーからな」
「――ふぉあーっ!」
あっという間に使い方をマスターしたのか、背中や股下にヌンチャクを高速で通してから、最後に腋に挟むと、リーは決めポーズを取った。




