あなたを愛しています
翠緑苑での逢瀬は毎晩と続いた。
ファラは欲情のままに、その白い肉体でトウリを犯した。最初、抵抗を示したトウリも、やがて飼い慣らされるように、この快楽に身を委ねるようになっていった。
ファラの桃色の舌がトウリの褐色の肌に彫られた刺青をなぞって優しく這い、ファラの白く細い指がトウリの無垢な身体に新たな刺青を施すように妖しく絡まる。二人の肌は熱く融け合って重なり、肉のつながりが互いの快感を結び付け、そして混じり合って果てていった。
こうして二人は、欠けていく月とともに耽溺に沈んでいった。
「……ファラーレ様」
草むらの中で肌を寄せ合って快楽のまどろみに浸るファラに、そっと声がかかった。重たげに声の方へ頭を上げると、木陰に潜んで見張りをしていたルントゥが姿を現した。
「そろそろお戻りに……」
「そうね」
うなずいたファラは近づいてきたルントゥの頭を抱いて、その首元に唇をつけた。
「いつもありがとう、ルントゥ」
頬を紅潮させたルントゥは、畏まるように跪いて一礼をした。その様子を一瞥して、ファラは傍らに横たわるトウリを見る。
「名残惜しいけれど……」
目と口をぼんやりと開き、放心したように夜空を見上げるトウリ。その耳元にファラはそっと口を寄せた。
「また次の夜に――」
トウリの身体がびくりと震え、見開いた目がファラを見上げた。その瞳は何か抗えないものを見るように揺れていて、迷い惑う心を映すように濁りの色を浮かべていた。
そこにはファラがかつて見た、凪いだ風に波を絶やした青のしじまの湖面のような静穏の色は、わずかほども見つけることなどできなかった。
けれどファラは艶然とその瞳に微笑んで、彼の髪を撫でながら、母が怖がる幼子を子守の唄であやすように、優しい声で囁いた。
「あなたを愛しています」
その言葉にトウリは泣きそうな顔を浮かべ、縋るようにファラへと手を伸ばした。その手を迎えてトウリを抱き、ファラはその耳元で同じ言葉を繰り返した。
「愛しています、愛しています……」
そう繰り返しながら、ファラの脳裏に浮かぶのは今朝ルントゥより伝えられた話だった。
――昨日、先触れの使者が着き、王が数日の内にご帰還されると伝えたという。
トウリの背中を抱く手が、熱を帯びて肌に吸いつく。ファラはその手に力を込めて、この熱を守るように、何度も何度も繰り返した。
「あなたを愛しています――」
抱き合う二人を照らす月は、半分にまで欠けていた。




